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「税理士試験適正化要望」署名活動を終結します

税理士試験適正化要望キャンペーン「私たちは、税理士試験の適正化を要望します」と題して、change.orgで行ってきたネット署名活動をこの度、一旦終結する決断をしました。これまでの経緯、その理由等についてご説明します。

目次

回想(署名を始めた経緯)

税理士試験適正化要望キャンペーンは、2016年8月に始まりました。平成28年度の試験が終わり、私は2ちゃんねるで情報収集をしていました。いろいろなスレッドを見ていて、特に目立っていたのは、法人税法と消費税法を受験した受験生の不満の声の爆発でした。資料不備、解答不能の問題、こんな試験は間違っている。私が受験した相続税法でも、問題の不備とまでは言い切れないものの、どちらが正解とも断定することができない解答が割れている問があり、議論になっていました。


調べてみると、法人税法については、同じ試験委員が作問した平成26年の問題も酷かったと、まとめwikiが作られていました。

 


試験問題の不備はこれが初めてではなかったのです。まとめwikiが作られたくらいですから、当時は受験生の間でも多くの意見が集まり、話題になったのでしょう。しかし、国税庁から問題の訂正等が発表されることはなく、時は過ぎ去り、平成28年には既にこのようなことがあったことも風化しつつありました。模範解答が発表されない税理士試験では、何が正解なのか結局最後までわからないままです。予備校が解答不能と言い切る平成28年の問題不備も、このままではなかったことにされてしまうのでしょう。


受験生が熱意を込めて一年間死に物狂いで勉強して臨む、税理士試験とは、こんなにいい加減な試験だったのか。私は、本格的に勉強を始めた初年度(平成25年)に簿財の2科目に合格した後、相続税法、酒税法を受験し合格0が続く苦汁を味わい、税理士試験の現実についてわかってきていた頃でした。そこで税理士試験の制度について調べていくと、他の国家試験に比べても実に不透明で、問題不備の起こる下地があることもわかりました。私は、残念感と、怒り、複雑な感情を抱いていました。


二度とこのような問題不備を繰り返させないためには、どうしたらいいのだろうか。受験生の多くの声を集め、国税庁に問題不備を認めさせ、再発防止策をとってもらわねばならない。そう考えた私は、ネット署名活動を始めることにしました。当時のことは、下記の記事に残っています。そして、税理士試験の抱える問題について啓発していくために、このblogを立ち上げました。


「国税庁に抗議しよう」私は2ちゃんねるに書き込みました。しかし、「そんなの無駄だ」「ブラックリストに載るから止めておけ」。抗議する気持ちはあっても、行動をとることには否定的な声が大半でした。それは、「あきらめ」が半分と、試験で不利に扱われるかもしれないという「恐れ」が半分といったところでしょう。しかし、公式に不備を認めさせなければ、平成26年の二の舞です。そのためにも、まず署名。多くの受験生の声が集まれば国税庁も無視できないはず。賛同を集めることが至上命令、だったのです。

活動が残した一定の成果

集めた署名は、2018年2月2日、霞が関の国税庁で担当者に会い、手渡しました。


また、署名活動と並行して、法的実効力のある行動として現在までに16件の開示請求を行ってきました。受験生が税理士試験で提出した答案用紙や点数の開示を求め、開示請求、審査請求と行ってきました。


そして、最近になって試験にいくつかの変化が見られるようになってきました。平成29年の試験で問題文の訂正が事前に配布されました。開示請求により、平成29年度試験の受験者の得点分布が開示されました。平成30年の試験では、全ての不合格者に対し、得点が開示されることが発表されました。


これらの変化が、署名活動や開示請求の成果と必ずしも言えるかは断定できません。しかし、国税庁が不合格者の得点開示を自発的に行ってきたことは、受験生らの注目が集まっていることを意識した変化であると思われます。

署名募集を終結します 賛同いただいた皆様ありがとうございました

そんな中、署名活動を終結することを決めたのは、署名の増加が頭打ちになったからです。1年半以上にわたり続けてきて、194筆。正直、多い数とは言えません。このままダラダラと続けていても、関心が薄れていくだけだと思われ、ここで一旦キリをつけることにしました。別の記事で書きますが、新年度に入り、私自身の環境に変化があったこともあります。


これまで、署名に参加してくださった皆さま、周りに呼びかけてくださった皆さま、ありがとうございました。一部には誹謗中傷の声にも晒され、何度も挫けそうになりましがが、皆様の応援の声があって今日までやってこれました。この活動を通して多くの方と出会うことができたことにも、感謝申し上げます。


署名活動を始める前と今では、ネット上で観測する限り、受験生の試験に対する見方にも変化があったと感じています。「この試験、おかしいよね」という声を上げやすくなったのではないかと思っています。2年前、そんな発言をしても、ただの出来の悪い受験生の言い訳として叩かれる対象でした。おかしいことに、おかしいと言える空気が、健全な社会を作る。蛇足になりますが、税理士試験に限ったことではなく、そういう世界であって欲しいというのが私の信条です。

署名が多く集まらなかった誤算

残念ながら、この署名を終わらさざるを得ない状況になったのは、私に3つの誤算があったからです。

誤算1 受験生が活動に消極的だった

署名に参加しコメントを寄せててくださった受験生の皆様には本当に感謝しています。しかし、大半の受験生は行動を起こしてくれませんでした。やはり、「あきらめ」や「恐れ」があったのでしょうか。

誤算2 ネットで活動が広まると思っていた

今はネットの時代です。ネットがあったからこの活動を始めることができました。しかし、ネットで簡単に広まっていくはずだと思ったのは誤算でした。受験生のblogやtwitterで自然に広まっていくことを期待したのですが、思うようにいきませでんした。このようなことを訴えていると、自力で受かるだけの実力がないからだと、周りから見られることを気にしたのかもしれません。試験の適正化を訴えることと、受かるように勉強をすることは両立することなのですが。

誤算3 予備校が協力的でなかった

予備校は、受験生の見方をしてくれると思っていました。問題の不備について最も理解していて、受験生の気持ちもわかっているので、この署名活動を広めてくれるのではないかと期待していました。予備校や受験専門誌を出している出版社にメールで連絡しましたが、どこからも返事はありませんでした。個人として予備校講師、元講師の方からは5、6名から趣旨に賛同して連絡をもらっているのですが、組織として動くとなると、決断できないようでした。ここにも、国税庁への「恐れ」があったようです。


もし署名がもっと集まっていたら

税理士試験の受験者は年々減っているとはいえ、今でも3万人超の受験者がいます。もし、このうち1割の3千人でも署名が集まっていたらどうなっていたでしょうか?仮定の話をしてもしょうがないのですが、状況は変わっていたと思います。


国税庁に署名を提出に行った時に、メディアの取材を4件受けました。それまでも各メディアには折を見てプレスリリースを出していましたが反応はなく、署名を出すという時になって急に連絡が来たのです。署名にはそれだけ動かす力があったのです。そのうち「税理士新聞」は掲載に至りましたが、他のメディアは連絡が途絶えてしまいました。その中には、NHK社会部も含まれていて、私が国税庁に入っていくところが映像でも撮られているのです。それが放映までいかなかったのは、報じる価値がそこまで高くないとの判断に至ったのでしょう。税理士受験生何千人の関心が集まっていると示すことができていたら、その判断も変わっていたかもしれません。署名が集まっていなかったせいで、チャンスを見す見す逃したと言っても過言ではありません。


税理士試験の歴史を振り返れば、昭和50年代に試験問題の不備が国会で議論されたこともあるのです。(国会会議録を検索するとわかりますが、そのうち機会があれば記事にします。)多くの声と関心が集まっていれば国会議員だって動くのです。社労士試験や司法試験では訴訟まで起こした受験生がいたおかげで、制度が改善されたのです。


社会問題を訴えていくのに、当事者が動かなれけば何も始まりません。此の期に及んで、批判を受ける覚悟で言います。税理士受験生はもっともっと一丸となって騒ぐべきでした。別に国税庁の前に集まってデモをしようというのじゃありません。スマホ一つですぐにできるネット署名を用意したのです。実際Change.orgの署名が集まって解決されてきた社会問題は多数あります。今回、署名が集まらなかったことで、「大半の受験生は今の試験制度のままでいいと思っている」という誤ったメッセージを送ることになってしまったかもしれません。多くの受験生は様子見だったのだと思います。悪気はなかったと思います。しかし、知っていながら行動しなかったのは、現状維持に賛成しているのと同じことなのです。


私の至らなさをお詫びします

署名活動を主導した私の至らなさにも原因はあると思います。私のことが信用できない、気に入らない、という意見も見聞きしてきました。私の書く文章やコミュニケーションの手法が原因で、皆様の心に届いていないとしたら申し訳なく思います。

私には発達障害の一種、ADHD(注意欠陥/多動性障害)があり、投薬治療を受けています。症状を説明するのは難しいですが、コミュニケーションの手法が独特であったり、思い込みや独断で突っ走ったりすることがあります。逆にその特性のおかげで、周りの目を気にせず、このような活動のモチベーションを保ててきたこともあります。だからどう、というわけでもないのですが、この機会に話しておくことにしました。


開示請求や問題提起は続けます

今回、署名活動を終結することしましたが、「税理士試験適正化要望」キャンペーン(活動)自体は続きます。現在も開示請求・審査請求が継続していますし、訴訟の可能性も捨てていません。進展はこのblogで随時お知らせしていきます。ということは、今までとあまり変わらないかもしれません。どうか、税理士試験が正常化するまで、変わらず関心を持ち続けて欲しいと思います。税理士受験生がこの問題に関心を持たなくなったら、この活動は終わります。


他に誰もやる人がいないので私がやってきた、という面もあります。この活動に時間を投じているせいで、私が税理士になるための勉強時間が犠牲になっているということもあります。他に共同して活動をやってくれる人や、代わりにリーダーシップを取ってくれる人は随時募集しています。(できれば名古屋に来て打ち合わせのできることが条件です。)私が時間を取れなくなったら続けられないことですので、どうかご理解をお願いします。