Markの資格Hack (税理士試験)

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開示請求により史上初公開!本物の税理士試験受験者・点数分布表

税理士試験については、主催する国税庁から公表されている情報が余りに少なすぎるということを私(Mark)は問題視してきました。司法試験や会計士試験と比較してもそれは明らかで、それが「適切に採点されているのか」と言った不信感や「官報調整」のような疑惑の原因となっています。模範解答や採点基準すら開示しない体制が、実際に「解答不能」と評される不適切問題の出題に繋がっており、外部の指摘に対してもノーコメントを貫くという不適切な状況を生んできました。


現在までに私が行っている14件の開示請求で、税理士試験についてこれまで判明していなかったいくつかの事実が判明してきました。今回は受験生の関心も高いと思われる、試験での受験者の出来を表す点数分布、予備校予想による推計ではない、開示請求により開示された「本物」の点数分布表をここに公開します。



目次

合格点は本当に60点なのか

その前に、なぜ私がこの開示請求を行うことになったのかという話をします。それは、税理士試験の合格点が公式に言われている60点ではない、ということが点数分布表から判明するのでは、と考えたからでした。大手受験予備校が公言するように、私も実際の税理士試験の合格点は60点ではない、と考えています。

特に、実際に私も受験したことのある酒税法では、満点勝負で争われ、答案全体にミスが一つか二つあるかどうかというレベルでないと合格できません。この酒税法の合格基準が60点にあるはずがないというのがその根拠の一つでした。

 


その疑惑は、私の行ってきた開示請求の過程でも強まりました。国税庁は、採点前の答案用紙はおろか、点数すら開示できないと言います。そこまでして点数の開示を秘匿するのは、開示すると実際の合格点が60点ではないことが明らかになってしまうから、即ち税理士法施行令6条に違反していることがわかってしまうからではないか、と考えてきました。


ですから、分布表を全部開示するという決定が出たのは意外だったのです。


開示された「平成29年度 税理士試験科目別・得点区分別・分析表」

開示決定通知書


「税理士試験科目別・得点別・分析表」


ご覧のように、開示されたのは、A4用紙1枚に印字された簡単な表です。正真正銘、国税庁から開示された本物の統計データです。この表を見て皆様はどのような感想を持たれるでしょうか?


意外にあっけなく開示されて拍子抜けしたところもあるのですが、ここにたどり着くまでに随分と時間がかかりました。今回同時に開示された「税理士試験システムの端末操作要領」を読むと、どうやらこの表は、国税庁人事課が使用している税理士試験システムから出力できる帳票の一つであることがわかりました。

分析表と科目別分布グラフ

開示された文書のままでは見にくいので、excelに打ち込んでグラフ化してみました。

税理士試験科目別・得点区分別・分析表

(OCRがうまく読み込んでくれなかったので手作業で打ち込みましたが、まだ作業途中です。10分足らずでできる作業だと思いますが、誰か手伝ってください。表の残りの部分を埋めて送ってくれる人はメールで連絡ください。)


これによると、いずれの科目も95点以上獲得した者は皆無、90点以上でも財表と酒税に数名いるのみです。印象と違い、相続や酒税でも高得点に集中しているということがなく、下位層にも満遍なく広がっています。この表が改竄されていないとすれば、60点が合格点という建前が守られていることを裏付ける資料とも言えそうです。*1


分布と科目ごとの傾向は、グラフ化すると、よりわかりやすくなります。

科目別分布グラフ 簿記論

科目別分布グラフ 財務諸表論

科目別分布グラフ 所得税法

科目別分布グラフ 法人税法

科目別分布グラフ 相続税法

科目別分布グラフ 消費税法

科目別分布グラフ 酒税法

科目別分布グラフ 国税徴収法

科目別分布グラフ 住民税

科目別分布グラフ 事業税

科目別分布グラフ 固定資産税


受験予備校はどう対応するのか

税理士試験についての公式の詳しい情報が公開されていないおかげで、配点予想や合格予想は、大手受験予備校の独壇場でした。「実際の合格点は60点ではない」「合格ラインは96点」というような見解がまことしやかに言われ、60点とは乖離した合格ボーダーが発表され、信じられてきました。予備校の行っていた予想とは違う形の「本物」が世に出た今、今後税理士試験の配点予想や合格予想をどう行っていくのでしょうか?予想は予想として変わらず続けるのでしょうか、あるいは、本物に合わせる形で無理やり60点を合格点に持っていくのでしょうか。

資格の大原 「得点分布表」

資格の大原 「得点分布表」

資格の大原「データに基づく最新合格ラインの読み」

資格の大原 税理士講座「データに基づく最新合格ラインの読み」「正答率・難易度」「得点分布表」より引用

平成28年分データは既に破棄

今回の開示請求では、平成29年度分と同時に平成28年度分の開示も求めていました。開示請求書を提出した後、国税庁から対象が2件分になるので「追加で300円の印紙を送るよう」言われ送ったのですが、あげく、返ってきたのは、平成28年度分は「税理士試験システムの年次処理により削除されており、保有していない」という結果でした。

不開示決定通知書


本当は私が見たかったのは、曰く付きの平成28年分の方だったのです。しかし、データは破棄されており既に存在しないということです。重要な試験のデータを一年で削除してしまうとは、信じられない情報管理を行っています。恐らく、事実です。年度始めの4月頃に年次更新処理を行うのではないでしょうか。データの保管に掛かるコストなど知れているでしょうから半永久的に保管しておくべきです。記録を残さない、検証させない、という姿勢が国税庁には徹底しているように思えます。


しかしながら、税理士試験システムの端末操作要領を読むと、他にもいくつか出力できる帳票があることがわかりました。まだ公開されていない興味深い統計がありそうです。引き続き新たな開示請求をして、このblogで公開していこうと思います。ご期待ください。

*1:ただしこの点数自体が調整されたものである可能性は高いです。それを疑わせる別の資料も見つけました。