Markの資格Hack (税理士試験)

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意見書part4 国税庁はこの疑惑に答えられるか

審査会に提出した意見書を何回かに分けて公開していきます。

shikaku-hack.hatenablog.com


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目次

以下、本文となリます。



4 国税庁が本件開示に対し否定的である真の理由

4-1 概要

 この章で述べることは、現在の税理士試験に存在する不適切な問題点である。いずれも疑惑と称しているが、税理士試験について数少ない公表された情報から推認するに、事実である可能性の極めて高い内容であると考えられる。そしてこれが事実であれば、試験の信頼性を揺るがす大変な問題である。国税庁が本件審査請求に係る保有個人情報の開示に対し否定的である真の理由は、試験の秘匿性を守り、これらの疑惑(試験の不適切性)を露見させないようにしたいというところにあると、審査請求人は考えている。
 しかし、これら疑惑の追及をかわす目的で本件開示を行わないことが正当化できるはずもない。これらの疑惑を、本件審査請求の判断(法第14条第7号柱書きの不開示情報に該当するか否か)に直接関係ないものであるとして、国税庁が沈黙を守るのも自由である。しかし、ここで審査請求人が指摘する疑惑は、既に税理士試験関係者の間で相当程度広まっているものであり、税理士試験の信頼は失墜していく途上にある。近年、税理士試験の受験者が急減している背景にも、これが多少なり影響していると審査請求人は考える。理不尽で合格までに年数のかかり過ぎる試験(5科目合格までの平均年数は8.6年。東京税理士会2009年5月「税理士試験制度改革の必要性について」より)を避け、試験免除や、公認会計士試験を経由しての、税理士登録を目指す者が増えている。もはや失われた信頼を回復するためには、国税庁がこれらの疑惑に正面から回答するほかない。ここで回答しなければ、いずれ別の情報公開請求や訴訟で争うこととなるので承知されたい。係る疑惑が正しくないと主張するのであれば、根拠とともにそれを示されるよう求める。

4-2 公称の合格基準60%が守られていない疑惑

4-2-1 誰も信じていない合格基準

 税理士試験の合格基準が満点の60パーセントとされている(税理士法施行令第6条)ことは、国税庁の説明の通りであるが、これをそのまま信じている者は、税理士試験の勉強を続けている者の間では皆無である。
 予備校でも「税理士試験は競争(相対)試験です。上位10%に入らなければ受かりません。」と繰り返し指導されており、税理士受験業界では上位10%(ないし15%)が定説化している。予備校の一部には試験委員経験者から情報を得ているところもあり、全く根拠がない話とは考え難い。
 元受験専門学校講師で税理士の尾藤武英氏のブログで明かされているところによると「「配点箇所は受験生の実際の解答状況をいくつか見た上で決めている」と公言されていた元試験委員の先生もいらっしゃったぐらいで、その実情は完全な相対試験です。」*1 とされている。
 上位10%が合格、かつ、合格点が60点になる問題を作成することは不可能ではないが、現状の試験ではまず成立していない。

4-2-2 酒税法の合格点は90点以上

 予備校の一つ、学校法人大原学園(資格の大原)が発表している税理士試験各科目の合格点予想(ボーダー及び合格確実点)は、次の通りとなっており、ボーダーは科目により43~92点とされている。

税理士試験 合格ボーダー予想 第66回

データの出典:税理士 税理士試験 本試験採点・分析サービス <資格の大原>


 ここで学校法人大原学園が発表する酒税法の得点分布表を示す(4号資料)。これは、大原の採点サービスに結果を報告した者のみの集計であり、配点も予備校予想、受験者の報告も自己採点に基づいているので、実際の試験結果とは異なる点には注意を要するが、80点以上に回答者の93.8%が位置している。
 これは酒税法の科目の特性によるもので、酒税法は、税理士試験の中では例外的に問題量が少なく試験時間内に全ての問題を解くことができる。暗記する税法の範囲も他の科目に比べ少ないので、そうすると税理士試験の大半の受験者のレベルからすると満点勝負で争われることとなる。酒税法の合格者は、計算問題では減点する箇所が一つもない満点となり、理論問題も問われる根拠法令はほぼ全部挙げられていて、条文の表現に多少の過不足があったり、事例に応じた要件の指摘に不足があったりして部分的に減点されるくらいであると考えられる。
 しかしながら合格できるのは他の科目と同様、約10%(国税庁発表による第66回の実際の合格率は12.6%、84人。)であり、このことからボーダーは90点を超えているのではないかと推認される(大原予想では92点。)。
 この酒税法で本当に合格点が60点であるとするならば、「計算の最終値の納付税額に20点」「全体的に字が汚いので20点減点」といった評価をして強引に調整していると考えられる。そのようにして無理矢理60点に合わせたところで、その評価に正当性がないことは誰の目にも明らかである。
 この通り、現在の税理士試験では合格ラインが60点にはなっていないことが強く推認される。開示を行うと実際の合格点が60点ではないことが発覚し、それはつまり、施行令に違反した状態であることを示す。このことが、本来開示しても何の支障もないと考えられる評点欄すら国税庁が開示しない真の理由ではないかと、審査請求人は考えている。

4-2-3 「官報調整」について

 受験者の間で俗に「官報調整」と呼ばれている現象がある。一般に「官報合格」と呼ばれる5科目めの合格率を恣意的に操作しているのではないかと思われる現象のことである。過去15年の税理士試験の合格率の推移を見ると2.0%から0.3ポイント以上乖離した年はない。税理士試験の合格(官報合格)は、各科目独立して行われる試験結果の積み上げによって合格科目が5科目に達したときに決まるので、合格率がこのような狭い範囲に収斂するのは極めて不自然である。合格率に2%という目標が設定され、国税庁人事課において逆算的に何らかの調整を行っているのではないかと考えられる。
 しかしこの問題はこれ以上の根拠を示すことができないので追及しない。

4-3 正解が導けない不適切な問題作成が行われている疑惑

 平成28年度の法人税法、消費税法の試験において、作問ミスにより、正解が一意に定まらない問題や解答不能の問題を多数含む問題が出題された。模範解答を発表する予備校や、受験雑誌も指摘(5号資料)*2しているものである。残念ながら審査請求人は当該の科目を受験していないため、今回の開示請求の対象とできないが、参考として不備のある問題を指摘した資料を提出する。
 法人税法では、計算問題に8題の不適切問題が確認されている(6号資料)*3。一つの数値を求めるのに矛盾する複数の資料が与えられている、問題資料の申告書欄に入っている数値が本来の場所とずれているといった、いずれも作問者以外の者が問題を解くという確認作業を行っていればすぐに気づくような単純なミスである。どれだけ好意的に解釈しても合理的な説明ができないため、試験委員の意図しない作問ミスであることは間違いない。
 しかし国税庁は、「試験問題、解答及び得点に関する照会には応じられない」としており、外部からの指摘も多数あったと思われるが、現在まで設問の誤りを公式に認めていない。通常の試験であれば、問題の訂正や、採点対象から除外する等の措置が発表されていて然るべきものであるが、この試験では採点に当たってどのように措置が取られたのかもわからない。
 このような不適切な出題は過去の年度においても見られたが、何らの対策もされることなく放置されてきた結果、看過できない段階に達した。一つの科目にこれだけ多数の致命的なミスが含まれていると合否判定に与える影響も甚大で、もはや試験が成立しているかすら怪しいものである。

4-4 試験問題の妥当性について検証されていない疑惑

4-4-1 試験委員の問題作成体制

 税理士試験の試験委員は、毎年1月初旬の官報で官庁の人事異動として発表されている。*4 官報からは、全員を試験委員として任命していることがわかるのみであるが、実際には21名の試験委員を11の科目に担当を割り振っていると考えられている。予備校では試験委員の担当科目の予想を発表しており(7,8号資料)、試験委員の専門分野に応じた出題予想の対策講義も行われている。予備校が何の根拠もなく試験委員の担当発表を継続しているとは考え難く、過去の試験委員経験者から聞き取った情報も参考にしているのでその予想には一定の信憑性がある。国税庁(国税)と総務省(地方税)の課室長がそのまま各税法科目の担当者となり、実務家・教授の担当科目は前年からの継続性や、著書等の公開情報から推測しているものと思われる。
インターネット上のある税理士のブログにこのような記述があった。「ある偉い先生に聞いた話ですが、税理士試験の税法4科目の計算問題の試験委員は科目ごとに東京・名古屋・近畿税理士会が担当しているらしいです。」「所得税・・・東京税理士会、法人税、消費税・・・近畿税理士会、相続税・・・名古屋税理士会 これはよっぽどのことがないと変わらないそうです。」*5
 任命された試験委員は、どのように問題を作成するのか。元受験専門学校講師で税理士の尾藤武英氏のブログで明かされているところによると、次のように聞いたという。「税理士試験の税法科目の試験問題は、理論は国税庁の担当課の課長、計算は実務家(税理士)が作成します。講師をしていた頃に目にした情報によると、計算問題の試験委員を担当すると決まった場合、国税審議会からその先生の事務所に向けて「問題はこれを参考に作って下さい」という感じで過去のその科目の本試験問題がどっさりと送られてくるんだそうです。そして、試験委員の先生はそれらの問題を見て本試験の問題を作成されるとか。」「ちなみに、先日過去試験委員をされていた某先生からお酒の席で(笑)ちらっと伺ったところによると、その先生が担当されていた頃は本試験の問題は3月頃に理論の作問者(相続税法なら資産課税課の課長)の部下さんと問題のすり合わせをしていたそうです。」*6

4-4-2 税法科目の試験委員は実質1名

 上記の情報によれば、税法科目の試験委員は実質一人で問題の作成を行っていると言える。税法科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法)は、国税庁課長級職員が理論問題、実務家(税理士・公認会計士)が計算問題を担当している。税法科目(酒税法・国税徴収法・住民税・事業税・固定資産税)は、課税庁の職員のみである。
 問題作成者以外の者による問題の妥当性チェックが行われていれば問題を作成する試験委員が1名であったとしても問題ないが、上記4-3の事実から推認すれば、チェックは行われていない。または、行われていたとしてもその機能を果たしていない。これは国家試験にあるまじき重大な問題であると考える。
 受験者の側としては、試験問題に不備や矛盾があることを前提に対策を行う(心構えを持っておく)ことが既に常識化している。試験実施機関が問題の妥当性を検証しないという怠慢により受験者が過剰な負担を強いられているのである。果たしてこれが正常な状態であると言えるだろうか。

4-5 法的根拠に基づかない恣意的な採点が行われている疑惑

4-5-1 永遠にわからない正解

 予備校の模範解答で正解が分かれた個所(4−3で指摘した不適切問題)は、考えられる解答のうち、試験委員の恣意的な判断でいずれかのみが正解となっている可能性がある。しかし国税庁から正解や評点が発表されていないため、その試験委員の考える正解が妥当であるかの検証ができない。税法の試験の正解は、その金額や判断が法的根拠に基づき明快に説明される必要があるが、一部の不適切問題ではそれができていない。何が正解とされたのか永遠にわからないままである。

4-5-2 模範解答は存在せず感覚的に採点している

 作問者とは別の試験委員によって採点が行われている、または、複数の試験委員による合議制により模範解答が作成され、それによって採点が行われているのであれば、一定の合理性のある採点に落ち着いていると考えられる。しかし、他の国家試験(例えば司法試験)では当たり前に行われていることが税理士試験では行われていない。
 平成15年7月24日答申(平成15年度(行情)答申第208号)「第51回税理士試験財務諸表論の模範解答及び採点基準の分かる文書の不開示決定(不存在)に関する件」における国税庁の説明によれば、「各試験委員は、試験問題を作成するとともに採点まで行うことから、模範解答や採点基準といったものを作成した上で行っているわけではない。」としている。この審査会の審議においては、「採点は,答案を模範解答や採点基準の定めに形式的に照合して行うようなものではなく,その高度な知見に基づき試験委員が解答を導き出す思考過程を分析し,判断する知的作業であると考えられる」「各問に付与された配点のほかに模範解答や採点基準を定めた文書が常に必要であるとは認められない。」「模範解答及び採点基準を定めた文書がないとしても,これを不自然と言うことはできない。」と、税理士試験の実情を知っていればおよそ信じ難い事実認定がされている。
 審査請求人の考えでは、この答申は事実認定に誤りがあるとしたいところであるが、一応、試験委員の卓越した能力と審査会における審議を尊重して、事実であると考えるならば、次のようなことが見えてくる。答案の採点を行う試験委員は、理論問題の難解で何十行にも渡る税法の条文が一言一句頭に入っており、計算問題もときに10ページほど(平成28年度相続税法の答案用紙は、A3版で理論6ページ、計算13ページであった。)に及ぶ答案用紙の膨大な解答欄のどこに何の数字が入っているべきか瞬時に判断することができ、正確で間違いのない採点を行っているということである。もちろん受験者は自分の答案作成においてそれをしているのであるから、試験委員においてそれを不可能であると決めつけることはできない。
 これを試験委員は一人で何千人分(平成28年度消費税法の受験者数は、8,508人であった。)と、「約2ヶ月かけて」「本業の傍ら」(国税庁の理由説明書より)行っているということである。何しろ模範解答が存在しないのであるから、逐一数字を突合するようなことはせず、答案用紙の全体から受ける印象等から「その高度な知見に基づき」感覚的に判断しているとしてもおかしくない。
 そして恐ろしいことに、これは一部の受験者の合格発表後の心証と一致する。審査請求人が合格発表直後にインターネット上の掲示板で収集したところによると、「採点に一貫性なんてない。(予備校発表の)ボーダー未満でも受かってるし、確実超えでも稀に落ちてる。本当にいい加減だよ、馬鹿にしてんのか」「すごく嬉しいけど、なんかモヤモヤする。実力で合格したと言うよりも運が良かったとしか言いようがない。」といった声があった。試験に関する解答や配点といった情報があまりに不透明であるために、不合格であった者だけでなく、一部には合格した者にまで「納得がいかない」という感想を抱かせている。*7
 以上のことから総合的に判断すれば、税法という法律に関する分野の国家試験で、法的根拠に基づかない試験委員の恣意的な判断による採点が行われている可能性が高い。

*1:税理士試験の合格に必要なのはAランクを合わせる力 | Shimogamo Zeirishi Life https://bito-tax.com/blog/2016/01/14/a-rank/

*2:『会計人コース』 10 月号でも税理士試験問題の不適切性が明らかに - Markの資格Hack (税理士試験)http://shikaku-hack.hatenablog.com/entry/kaikeijin_course

*3:税理士試験不適切問題集 平成28年度(第66回) 法人税法 - Markの資格Hack (税理士試験)http://shikaku-hack.hatenablog.com/entry/inappropriate_Z66_houjin

*4:官報 平成28年1月12日 第6991号 6頁

*5:試験委員,税理士試験 http://zeirishimonta.com/post-77/

*6:<税理士試験>これからの時期一番大切にすべき問題は過去問です | Shimogamo Zeirishi Life  https://bito-tax.com/blog/2016/06/22/kakomon-important/

*7:税理士試験の問題・採点に疑問と抗議の声!開示請求を決意する人が続々 - Markの資格Hack (税理士試験) http://shikaku-hack.hatenablog.com/entry/passing_report_2ch_2016