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意見書part3 怒涛の反論

審査会に提出した意見書を何回かに分けて公開していきます。

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目次

以下、本文となリます。

3 国税庁の理由説明書について審査請求人の意見

3-1 本件不開示部分の不開示情報該当性について

3-1-1 前提に対する反論

 国税庁の理由説明書4で「試験の性格上、その正解が一義的に定まっているものではなく、その採点に関しては、試験委員が、自己の専門的知見に基づき、個々の答案について、単に結果のみでなく、解答を導き出す思考過程や計算過程なども十分に考慮するなど、柔軟な評価がなされる必要があり、」としているが、上記2-3、2-4を見てわかるように、税理士試験の問題は、正解がほとんど一義的に定まっているものであり、前提として間違っている。
 税理士試験の特性を考えてみると、税法という極めて厳密に取り扱いが定義された法令に従って、その理解力と事例への当てはめが適切に行えるかをみるものと考えられる。租税公平主義、租税法律主義の観点からも、多彩な解釈があるべきではない。税法について問う以上、正解が一義的に定まっているのは、いわば税理士試験の必然的宿命と考えられる。
 司法試験や公認会計士試験の記述問題では、学説により解釈が異なるものを挙げてその論理的判断力や柔軟な思考力、文章構成力等を問われることがあるかもしれないが、税理士試験・税法の問題ではそのようなことは基本的にない。計算過程も含め、その処理が税法、通達に従った取扱であるのかを機械的に判定すればいいのであって、実際の問題もそのような機械的に判定できる問題が出題されているのであるから、解答も当然機械的に判定できるはずである。国税庁の理由説明書の主張は、これを書いた担当者が、税理士試験の問題の内容について本当に理解しているのか見識を疑うものである。

3-1-2 解答例は開示すべきである

 平成19年5月28日答申 平成19年度(行情)答申第64号「平成17年公認会計士第2次試験の合否決定に関する文書の一部開示決定に関する件」では、「第1問及び第2問の解答例については、開示すべきである。」という結論が得られた。「当該部分には,簿記の計算や仕訳に関する問題に対する解答例が,計算式等を含まない数値のみによって記載されていることが認められる。(中略)このような問題においては,通常,問題の数値が変われば,解答となる数値も変わる性格のものであり,別解が存在している場合でも,これを暗記することによって,今後の類似の試験問題の参考とすることは,不可能であると考えられる。したがって,当該部分を公にしたとしても,受験者の思考の画一化を進め,答案のパターン化,画一化に拍車がかかるとは考え難い。」という理由により、開示が妥当と判断された。同様に考えれば、税理士試験の計算問題の模範解答についても開示されるべきであるし、本件開示請求に係る答案の計算問題の解答欄についても性質的に同じであると言える。
 計算問題は言うに及ばず、理論問題も、その表現・記載方法等は多様に考えられるものの、論点としてあげるべき点は限られている。税理士試験受験者の間では、予備校の作成した論点ごとに条文が整理された理論問題集の類で、作成すべき解答のパターンを暗記するような学習が常識的に行われている。現に複数の受験予備校が発表している模範解答も、多少の表現方法の違いはあれ、7割8割方が同じ解答となっている(1〜3号資料)。このことからも、試験問題において要求されている解答は、一義的に定まっている正解から一定の範囲を出ないものと考えられる。
 複数の予備校の模範解答で解答が分かれた箇所は、問題文の解釈や解答の全体の分量から範囲に含めるかどうかで分かれた論点であるので、合否の分かれ目となったとも考えられる箇所である。どの解答が正解となり、どの解答が不正解となったかは、試験委員のみが知るが、採点の妥当性を証明するためにも、試験実施機関である国税庁からむしろ積極的に正解を開示することが求められるものである。

3-1-3 機械的、断片的知識しか有しない者が高得点を獲得する可能性

 「機械的、断片的知識しか有しない者が高得点を獲得する可能性が高くなることから、税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定するという税理士試験の目的が達せられなくなるおそれがある。」としている点について検討する。
 これは、東京高判平成16年1月21日 平成15(行コ)217の判例を参考に書いた文章と思われるが、税理士試験をこれと同様に考え、安易に同じ理由で不開示が妥当であると結論づけることは、誤りである。この判例は、都保育士試験の解答用紙及び問題ごとの配点と得点を受験者本人に開示することが、東京都個人情報の保護に関する条例16条2号に非開示事由として規定する「開示することにより事務の適正な執行に支障を生じるおそれ」があるときに該当するとされた事例である。即ち、保育士試験の特性と税理士試験の特性が同質のものであるならば、結論も同じものが導けようが、これが異質なものであるならば結論もまた別のものが考え得る。
 保育士試験は、指定保育士養成施設において2年間修業した者とほぼ同等の内容の知識,技能を有することを判定するための試験として行われ、上記裁判で争点となった保健衛生学及び生理学の他全8科目について行われた。この裁判でも原告が開示を求めた部分の全てが非開示となったわけではなく、開示されたのは選択問題ないし語句問題の得点部分であり、非開示とされたのは記述問題の得点部分である。その理由について、「この両者を比較した場合,採点に当たって採点者の主観的判断を要するか否か,その程度の大小には,やはり大きな差異があると認めざるを得ない。」としている。選択式問題については,正解の根拠が明確であり、唯一の答えが導かれる問題であることから開示しても差し支えないとしたのである。
 翻って、税理士試験では、上記3-1-1で見た通り、正解は一義的に定まっているものであり、一部の理論問題を除き、採点者の主観的な判断を介在させる余地などないのであるから、保育士試験の判例による基準によっても開示することが妥当であると考えられる。
 また、「機械的、断片的知識しか有しない者」のうち、「機械的」の部分について言えば、機械的にでも必要な要件が記述できれば高得点を獲得できるような試験になっているのであるから、本件開示を行っても何の問題も影響もない。この点を抜本的に対策しようとするならば、採点や模範解答を秘匿することによって評点の不確定要素を作るのではなく、設問に工夫を凝らして受験者の応用能力を問うことができる良質な問題を作成するように改善を行うべきである。
 さらに、「断片的知識」について検討してみると、4−2で後述するように現状の税理士試験は熾烈な競争試験となっている。網羅性・正確性を持って税法を暗記し、条文を一言一句レベルで正確な記述を行わないと、他の受験者に対しアドバンテージを得ることができないと考えられる。よって、断片的な知識、あやふやな理解では、結局のところ高得点を得ることができず試験に合格することはできない。やはり、本件開示を行ったとしても影響はないと考えられる。
 以上のことから、開示を行うことにより、「機械的、断片的知識しか有しない者が高得点を獲得する可能性」があるとは言えず、税理士試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれはない。従って、法第14条第7号柱書きの不開示情報に該当するという主張は妥当でない。


3-2 評点欄を不開示とすることについて

 上記3-1で、「機械的、断片的知識しか有しない者が高得点を獲得する可能性が高くなること」は否定された。
2-4で述べたように、審査請求人は答案用紙の大問毎の評点欄以上に詳細に区分した評点を開示することが妥当であると考えているのだから、評点欄の開示を求めることは言うまでもない。評点欄(点数)が開示されたとして、現在既に受験予備校等で行われている以上の高得点を獲得するための特殊な解答方法が生み出されるとは考えられない。
従って、評点欄を開示しても税理士試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれはない。法第14条第7号柱書きの不開示情報に該当するという主張は妥当でない。


3-3 質問や照会等が増加することについて(開示をした場合の影響)

3-3-1 質問や照会が多い原因

 審査請求書でも述べたが、「質問や照会が増加すること」というのは、本件開示をしないことの理由として明らかに不適切であるというべきである。理由説明書5(2)で「事務局には、日常的に受験者等から税理士試験に関する質問や照会等が電話等で多数寄せられており、」としているが、その件数は具体的に如何程か明らかにして頂きたい。そのような問合せが多数あるのは、試験実施機関として当然期待される情報開示を国税庁が行っていないからだと考えられる。4-3で後述するように、正解すらはっきりしない不適切な問題が出題されていること、採点基準が不明瞭であることが、質問や照会が多いことの原因であることは、国税庁の理由説明書からも窺える。「予備校の模範解答等を根拠に、採点の過誤や不当性を主張する者や、受験雑誌における批評を根拠に問題に対する苦情を言う者もいる。」という記述がそれに当たる。
 本件不開示部分を開示することと、国税庁のいう「質問や照会等が増加する蓋然性」との間には関係性が認められない。よって、主張は前提を欠いている。

3-3-2 試験実施機関の受忍義務

3-3-2-1 望まれる姿
 本件開示を実施することとなれば「事務局職員の質問や照会等に対応する時間が増大し、その有する通常業務に支障が生じることは明らかであり」としているが、仮にこれが正しいとして、これは試験実施機関である国税庁が行うべき通常業務の範囲内である。
 平成19年5月28日答申(平成19年度(行情)答申第64号)「平成17年公認会計士第2次試験の合否決定に関する文書の一部開示決定に関する件」では、「そもそも試験委員の職責にかんがみると,試験問題の適否に関する批判や受験生等からの問い合わせが公認会計士・監査審査会事務局を通して多少あったとしても,その程度の負担は,受忍限度の範囲内であると言うべきであり,試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとまでは言えない。」としている。
 これら受験者の要望に応えることは、試験の公正性を証明することになり、将来にわたって適正な試験を実施するためには必要なことだと考えられるので、担当部署の人員を増強してでも行うべきである。
もしくは、受験者の照会に対して個別の対応をしなくても済むよう、試験実施後に正解(模範解答)を公表したり、受験者の答案を自動的に開示したりするような仕組みを作ることも、事務局の業務負担増加への対策の一つである。


3-3-2-2 法は行政裁量を認めていない
 福岡地判平成22年1月18日(保有個人情報不開示決定取消等請求事件)によれば、「法14条は,開示しないことに合理的な理由がある情報を不開示情報として具体的に列挙し,不開示情報が含まれない限り,開示請求に係る保有個人情報を開示しなければならない旨定めている。このような法の趣旨に照らせば,法14条7号柱書に定める「支障」の程度は,名目的なものでは足りず,実質的なものが要求され,「おそれ」の程度も,単なる抽象的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性が必要とされるものと解すべきである。」としている。
 また、「保有個人情報の開示請求自体は法が認めた権利の行使であるから,単にその対応及び保有個人情報の管理が煩雑であることをもって,旧司法試験の事務の適正な遂行の支障とはいい難いし,(中略) よって,開示請求が増える可能性はあるものの,旧司法試験の事務の適正な遂行に支障が生じる蓋然性までは認め難い。」「法14条は,開示請求に係る保有個人情報に不開示情報のいずれかが含まれている場合を除き,開示請求者に対し,当該保有個人情報を開示しなければならないとしており,当該保有個人情報に不開示情報が記録されていない場合に,あえてこれを公開しない処分ができるような行政裁量を認めていない。」としている。
 国税庁「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づく処分に係る審査基準」においても、「法第14条第7号の規定は、行政機関の長の恣意的判断を許容する趣旨ではなく、各規定の要件の該当性は客観的に判断される必要があり、また、事務又は事業の根拠となる規定・趣旨に照らし、個人の権利利益を保護する観点からの開示の必要性等の種々の利益を衡量した上で「適正な遂行」といえるものであるかどうかを判断する。」としている。
 以上のことから、「質問や照会等が増加する」程度のことでは、試験実施機関の受忍義務を超えるとは言えず、「税理士試験の目的が達せられなくなるおそれがある」という主張は過当である。従って、法第14条第7号柱書きの不開示情報に該当するという主張は妥当でない。これにより、国税庁は、不開示情報に該当しない本件保有個人情報を開示しなければならない。

3-3-3 現状に対する国税庁の認識

「事後の非難、嫌がらせ等へのおそれから、試験委員が適正な評価を与えることが困難になり、(中略)、形式的な採点が可能な問題作成に陥り、(中略)適切な良問の作成をも困難にするおそれがある。」としているが、4-3で後述するように既に不適切な問題を作成した試験委員はインターネット上を中心に非難されており、現行の試験が既に大半が形式的な採点が可能な問題であり、現行の試験で適切な良問と言い難い問題が既に多数出題されている。つまり、国税庁の懸念するような問題は開示を行うか否かに関係なく発生する。このように、国税庁の理由説明書で述べられていることは、現状認識及び前提について、明確に誤りであるというべきである。
 むしろ、審査請求人は、現状不適切な試験問題が出題されていることへの対策として、開示を行った方が内部牽制が働き、良質な問題作成につながると考え開示を求めているのである。