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「試験免除大学院は特定支出とならない」という国税庁解釈は税務署内で無視されている

以前の当blogの記事で、「給与所得者の特定支出控除」(所法57の2)を紹介し、国税庁は「税理士試験免除のための大学院は特定支出とならない」と明文で否定した解釈情報を出しており、そしてその解釈はおかしいという私の考えを書きました。どうやら、その国税庁解釈は税務署内で無視されているようだ、ということがわかってきました。

目次

国税庁の解釈情報

詳しくは前回の記事をご覧頂きたいですが、問題の解釈は、「国税庁 個人課税課情報 第10号(平成28年9月26日)平成28年分以後の所得税に適用される給与所得者の特定支出の控除の特例の概要等について(情報)」というものです。現在も国税庁サイト内に掲載されています。


この別冊3【第2質疑応答編】において、「税法や会計学に関する研究により修士の学位を取得するための支出についても、これにより税理士試験の一部科目を免除されますが、同様に資格取得費としては特定支出とはなりません。」と明文で記載されています。


特定支出控除を適用して還付を受けたという報告が複数

税理士のやまそう様がblogで、実際にご自身が大学院の費用を特定支出控除として申告したとお書きになっておられました。

では、税理士資格を取得するための大学院に通うために支出した金額のうち具体的にどんなものがみとめられるのでしょうか?私が実際に特定支出控除として申告した金額は以下のとおりです。

入学金
学費
教科書代
交通費(電車代など)


やまそうさんにお話を聞いたところ、やまそうさん以外にも周辺で5人以上が特定支出控除の適用を受けており、しかも、やまそうさん自身は更正の請求で特定支出控除の適用を受けたということでした。

更正の請求は、一般に、通常の確定申告よりも厳格な審査が行われると聞いております。ですので、他の申告に紛れてスルーされたというわけでもなさそうです。

国税通則法 23条4項
税務署長は、更正の請求があつた場合には、その請求に係る課税標準等又は税額等について調査し、更正をし、又は更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知する。


e-Gov法令検索

解釈情報の法的な位置付けは

そもそも通達に法源性はない、と言われております。法律(所得税法など)が国会での審議を経て制定されたものであるのに対し、通達(所得税法基本通達など)は、上級官庁(国税庁長官)から下級官庁(国税局、税務署)に対して発せられた命令であり、法令についての国税庁としての解釈を示したに過ぎません。

通達(つうたつ)とは、行政機関において作成・発出される文書形態の一であり、判例では「上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するもの」と定義されている。


通達 - Wikipedia


そして件の、特定支出控除に係る「解釈情報」は、解釈通達(基本通達、個別通達)ですらもなく、「解釈情報」として発せられています。解釈情報の法的な位置付けがいまいちわかりませんが、解釈通達よりも一段劣るものと考えて良さそうです。そして税理士試験免除に関する大学院の部分に関しては、税務署内部でも無視されている(若しくは、知られていない。)ようであります。



というわけで、税理士試験免除の大学院費用を特定支出控除として申告しても通るようだ、という情報でした。ご参考にどうぞ。


※この記事は法解釈の一事例を示したものであり、閲覧時点での有効性を保証するものではありません。
※ご自身の申告にあたっては、資格と十分な能力を有した税理士にご相談ください。