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税理士試験問題の不備が国会で指摘されていた 昭和54年6月5日 第87回国会 衆議院・大蔵委員会 第26号

前回に引き続き、国会で税理士試験が話題になった場面を掘り下げて行きます。国会議事録を昭和26年から平成30年まで検索すると、「税理士試験」というワードが87会議で発言されています。それを一件一件つぶさに見ていっているわけですが、なんと、税理士試験に解答不能の問題が出題されて、国に問いただしているという場面がありました。

目次

昭和54年6月5日 第87回国会 衆議院・大蔵委員会 第26号

以下、引用部は全て上記より。



税理士法改正の審議の中で、話は税理士試験試験問題の不備に移りました。質問に立ったのは、村山喜一氏。日本社会党の議員です。回答する政府委員は、国税庁次長の米山武政氏です。

○村山(喜)委員 

   ( 前略 )
 そこで、今度十三条のなにで、試験の「細目については、大蔵省令で定める。」こういうことになっておりまして、いままでは税理士の試験委員があり臨時試験委員がおって試験をやっておった。そこで、その細目に関連をいたしましてお尋ねをいたしますが、五月二十一日の日付ですが、二十四日に大蔵大臣あてに紙子久雄という税理士の方が、外百十三名でございますが、請願書を出されたわけでございますが、それは受け取られて中身を検討されましたでしょうか。

○米山政府委員 いまお話にありました請願書は私ども受け取りまして、その内容を十分検討しております。

○村山(喜)委員 そこで私は、その中身に若干立ち入りまして質問をいたしたいと思いますが、どうも一方的に相手の名前を申し上げて、そして論議をするという時間のゆとりもまた相手の反論もお聞きをしない中では、その該当者の名前はこの席では申し上げません。しかしどうも、五十三年度の財務諸表論は解答不能の欠陥問題ではないか、しかもそれは盗作ではないか、こういうような指摘がされているわけでございます。
 私も全体の総括の中で、損益勘定の貸借の不突合の問題やらあるいは貸借対照表の不突合の問題を見てみましたが、この会計学の試験というのは、これはやはり税理士の試験委員を選ぶ試験ではないわけでございますから、税理士の試験を受ける人たちの試験だとするならば、答えが一つ正確なものが出てこなければならないはずだ。ところが、仕分けがどうもうまくなされておりませんのでそういうような結果が出てきている。とするならば、一体この方は、出題者は、そういうような意味では出題の前に検討をされたのであろうか。損益計算書作成をするときには、必ず貸借対照表を作成をしてみる、精算表でこれを確認してみる、それは問題を作成される常識ではなかろうか。こういうようなことから見まして、どうも問題を検討する機構というものがなかったのではないだろうか。
 さらに問題になりますのは、模範解答というものを臨時試験委員に出させて、これはすぐに出せというわけじゃございませんが、そういうような意味から会計学の識者の討論に付するという考え方はないのか、また、試験委員及び臨時試験委員の選任に問題があるのではないだろうか、そういうようなことが気がつきます。そこで、これについては検討をされているという話でございますので、全然問題はないというふうな結論を得ていらっしゃるのかどうか、これが第一点です。

 第二点は、五十一年度の簿記論は常軌を逸したものだ。それは大学生の試験に小学生の問題を出したような、そういう内容のものではないかという指摘があります。その場合には試験の機能を果たしているのであろうか。その成績の分布図というものを実際に出してみられて、その結果、曲線分布がどうなっているかということについては検討されたかどうか。
 五十二年度の簿記論では正しい答えが六十四も出る、こういう奇妙な問題だという指摘がされておるわけでございます。しかもそれは企業会計原則に反する処理を指示している問題である、こういうことが指摘をされておりまして、いま受験生の中に盗作ではないかといううわさも非常に飛んでおります。そのような中身の試験問題で、果たしていまの会計学がそういうような試験にこたえられる内容のものとして示されているのであろうかということについて、疑義があるという意見が出されておりますが、これについては答えられる程度においてお答えを願いたい。以上です。

○米山政府委員 まず第一の点でございます。五十三年度の税理士試験の財務諸表論第二問がいま当面の問題になっているわけでございます。この問題の問題点、委員御指摘の点は、まずこの問題が解答不能の問題である、それから、それはしかも他のものから抜いてきた剽窃の疑いがある、こういう点が第一。それから、こうしたものについてチェックの機能はどうなっているのか、こういうことでございます。
 まず、試験の問題作成をどうしているか、それをどんなふうにチェックしているかという点について申し上げますと、税理士試験の実施は、税理士試験委員は三名で構成されているわけでございますが、その問題の作成は、この試験委員の推薦によりまして大蔵大臣に任命されました臨時委員が作成しているわけでございます。これにつきまして、特に会計学につきましては、試験委員は会計学の専門家の沼田先生でございまして、先生は現在の会計学の最高権威の一人でございますので、臨時委員が作成した会計学の問題につきましては、事前に沼田先生のチェックを受けていただいているわけでございます。
 この問題につきましては、私どももいろいろ中身を見てみましたが、この問題は解答不能であるというものではないと私どもは聞いております。先生が、これは多少時間がかかるかな、こうおっしゃっつておられましたが、解答不能の問題でなく、現に市販の受験雑誌等におきましては、これに対して模範解答が示される、こういうふうなものでございまして、決して解答不能な問題ではないと考えております。

 それから剽窃かどうかということは、これはなかなかむずかしい問題でございますが、こうした一般的な会計学の問題というのは、常にどの問題も非常に独創的なものであるというわけにはなかなかいかないものでございまして、間々類似的なものもあり得るわけでございます。テーマが似ているからといって一概に剽窃であると決めつけるわけにいかない、こういうふうな感じがいたしております。しかしいずれにいたしましても、そういう問題が提起されたということにつきましては、われわれといたしまして今後、問題の作成につきましては、二度とこういう問題が提起されることのないようにひとつ注意していきたい、こういうふうに考えていきたいと思っています。
 それから、五十一年度の簿記論の問題でございますが、これはいまの紙子さんの題に対するこの中には入っていない問題でございます。したがいまして、この点につきまして私は現在、その資料を持ち合わせておりません。

○村山(喜)委員 その模範解答をだれがしたのか、そこら辺がわかりませんが、臨時試験委員に選ばれるような人が模範解答をお示しになって、自分としてはこういうことだという自信を持って会計学の前進のためにお役に立つことが私は望ましいと思うのです。そういうような意味では、ほかの人が模範解答を示してみたって、批判をすることはできません。やはり批判にたえられるような内容の試験をしてもらいたい。そしてまた、それをチェックしていく機能というものが十分なものにならなければ――それは沼田先生と言えば斯界の権威者でございますけれども、しかし、それがいつまでもオーソリティーとしてずっと続いていくわけではないと私は思うのです。そういうような意味から、今後試験委員が決まり、そして臨時試験委員が選任をされていく過程の中で、指摘をされたような学界の中の声は十分に尊重してもらいたいということを要請申し上げておきたいと思います。

雑感

驚きました。昭和51年の簿記、52年の簿記、53年の財表に不備があった、と。紙子久雄税理士他113名の署名を揃えて請願を行った、ということです。問題が解答不能、盗作である、チェック体制はどうなっているのか、模範解答を出させるべきではないか、試験委員の選任に問題があるのではないか、と。ここで出されている質問は、平成28年の問題不備を受けて私が行なった署名活動や国税庁に提出した要望とほぼ重なります。同じ問題意識ということです。つてさえあれば、国会に持ち込まれておかしくない話なのです。


しかし、落胆でもあります。国税庁の回答としては「解答不能とは考えていない」ということで、「二度と起こらないようにする」と答えてはいますが、その後も税理士試験では問題不備が繰り返し出題されているのはご承知の通り。何ら対策らしい対策などしなかったというわけでしょう。この頃から進歩の見られない税理士試験。そして平成28年の法人・消費の不備へと至るわけです。一体どうすれば、国税庁の試験に対する態度は変わるのでしょうか。