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税理士の「特別試験」を廃止に追いやった国民の声  昭和55年4月1日 第91回国会 参議院・大蔵委員会 第10号

この記事は、1年半前に公開した下記の記事の続編です。


昭和55年4月1日 第91回国会 参議院・大蔵委員会 第10号。税理士法改正について討議された委員会で、これ超重要な内容ですよ。特別試験廃止の経緯、指定研修への懸念、税理士試験の問題点について議論されていることはもとより、この委員会で法1条(税理士の使命)についても修正が加えられています。
非常に長い引用となっていますが、太字で強調した部分だけでも是非読んで頂きたいと思います。

目次

昭和55年4月1日 第91回国会 参議院・大蔵委員会 第10号

 本日の会議に付した案件
○税理士法の一部を改正する法律案(第九十回国会内閣提出、第九十一回国会衆議院送付)


昭和五十五年四月一日(火曜日)
   午前十一時十三分開会


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以下、引用部は全て上記より。


法案提出の経緯

税理士法の改正は、前回昭和36年の改正以来であり、税理士制度の見直しを行うこととして日税連や自民党内での議論を経て要綱が固まっていました。政府提出の法案として今国会に登場します。大蔵官僚出身の若手、藤井裕久氏が質問に立ちます。

○委員長(世耕政隆君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。

 ( 中略 )

○委員長(世耕政隆君) 税理士法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○藤井裕久君 それでは、税理士法関係の質問をさせていただきますが、この問題は、実は昭和三十八年十二月に税理士法についての答申が出て以来の懸案というか、もう少し本当はさかのぼれるんだと思います。三十六年に法改正をやった後、附帯決議でもって税理士制度を見直せという決議が出ている、それ以来の私は懸案だと思っております。
 そういう中で、十数年経て、いろいろ日税連さんでも基本要綱ができる、あるいは役所でもいろいろな接触を図られる、同時に、私ども自由民主党でも税理士法改正問題の小委員会を設けて、十数回にわたって検討を続けてまいったわけです。その中で、基本的にいま出ておりますような原案の方向で税理士法改正をするという、各党いろいろございます。そういう各党とも十分連絡をとり意見を調整しながら、実はわが党の税理士法改正の要綱というのが五十四年にできたわけでございます。むしろ、それをもとにして政府に対して法案化をお願いして、法案として政府が提出してくださったと、こういう経緯になっております。私も、各党との調整とか、わが党内の取りまとめの下働きをやりましたので、むしろ、そういうわれわれがつくった要綱の基本的な考え方と政府の考えておられる考え方とそごはないかというような点を中心に、確認の意味の質問をさせていただきたいと思います。どうも与党に余り時間をくれませんから、簡単に確認だけということでいたしたいと思います。
 それで、政務次官にひとつ伺いますが、まず、いまのような事実認識でございますね。つまり、自由民主党及びこの法改正に基本的に賛成である各党の合意の上で基本要綱ができて、それを政府が引き取られて法案化されたんだというこの事実認識については、政府はどうお考えでございますか。

○政府委員(遠藤要君) ただいまの御質問の経過については、先生のおっしゃるとおりでございます。特に、今日の提案の問題については、税理士法の改正は政府としては各省及び関係各方面との調整に大分時間をかけました。一方、各党においても特別の委員会を設置されまして、検討が行われました。そして、各党間でもいま先生のおっしゃるように十分調整が図られてきたものと承知をいたしております。
 さらにまた、このような改正案は、税理士の方方のみならず納税者また税務当局、さらには国民一般から見ても現段階では最善の方法ではないかというようなことに努力を払ってきたということでございますので、その点、御理解を願っておきたいと思います。

税理士の地位

シャウプ勧告を受けて、日本に民主的な申告納税制度が導入されました。税理士は職業的専門家として、その申告納税制度を支える役割を期待されているということを確認しています。また、第二条が改正され、税理士の取り扱う税目が一部を除いた全税目に拡大されました。

○藤井裕久君 それで、まずこの法案の改正の背景にあります何と申しましょうか、税理士の理想像というか、基本像でございますね。これについてどう考えておられるか簡単に伺いたいのですが、われわれはこの間うちの議論で、納税者から見れば税は安ければ安いほどいいのだと、だから安ければ安くやってくれる税理士ほどもてるのだというようなニュアンスの話がありました。私は、必ずしもそうじゃないと思うんです。納税者の立場に立てば、安ければ安いほどは事実だと思います。しかしながら、同時に、だれからも後ろ指を指されないというか、税務当局から文句を言われないような申告をするということを、多くの納税者は期待しているわけです。安い中にもそうしてもらいたい。また、現実にそれに対していろいろ国税当局なり税務当局から非違の指摘があれば、専門的知識を持って堂々とその立場を主張してもらうようなこういう税理士を、多くの納税者の人は求めていると思います。
 そういう観点にわれわれは立って、一つは、税理士は税務の専門的知識の所有者だということが一つ。それからもう一つは、独立の立場に立って、税務署にはもちろん従属しない、また納税者の利益を代弁するだけでもない、こういう立場に立って職務を遂行されるのが税理士であるというふうにわれわれは考えて、この法案の骨子をつくったわけでございますが、政府においても同じようなお考えでしょうか。

○政府委員(高橋元君) お示しのとおり考えておりまして、税理士制度というのは二十六年に構成されました際に、シャウプ勧告等に基づきます申告納税制度というのを基本的な下敷きとしてつくってあるわけでございます。
 申告納税制度のもとで納税者が正しい課税標準の申告をなさり、それが体系上、また法規の適用上むずかしい点等につきまして、税理士さん方が職業的な専門人として納税者を援助なさるということを基本的な理念にいたしまして、そういう意味で、いまお話がありましたように、法令で規定された納税義務の適正な実現に資するというのが税理士制度の第一義的な意味でございますし、また、あるべき税理士制度の像というお尋ねでございますが、そういうものもまたそういうものであるべきであろうと思います。

 申告納税制度のもとで、繰り返すようでございますが、納税者の方々の側からは申告で御自分の納税額を適正に確定することが要請されるということを考えますと、申告について代理し、したがって、税務書類を作成したり、税務相談に応じたりという税理士さんのお仕事は大変役割りが大きいし、また、それに対する社会の期待というものも高い、また、税理士さんのお仕事のプレスティージも高い、さように考えるべきものだというふうに思います。

○藤井裕久君 そうしますと、こういう案ができてから一部の批判では、この法律は税理士を税務当局の下請化するという批判があるんです。われわれは全く心外で、これは当たっていない批判だと思っております。その答えとしてわれわれが考えたのは、独立したと。これはドイツ税理士法の考え方でございますが、その独立したというのをどういうふうに考えるかということですが、いま政府からお話のあったようなシャウプ勧告では、やっぱり申告納税制度を本当にうまく動かしていくためには税務に関する職業人が必要だ、その人が納税者の利益はもちろん守っていくけれども、同時に税務官吏に対して適正な職務をやらせる、それ以上のこと、不法なことをやらせないようにするのが税理士であると、こういうことがたしかシャウプ勧告に書いてあると思うんですが、この独立したというのは、そういうシャウプ勧告の考え方と同じであるというふうに考えていいかというのが一つです。
 それから、もう一つの批判で、税理士業界のエゴイズムの実現がこの法律だという、もう一つ全然別の批判があることも事実だと思うんです。私は、これもまた全く心外ではないかと思っております。いまのそのお話のあったような税理士の崇高な使命ということを一方にうたい上げるとともに、そういうことのうらはらとして国民に対する一つの大きな責任というものもこの規定はあるというふうに考えておりますから、この税理士のエゴイズムの実現というようなこともまた全然違うと思いますが、いまのこの二つの批判についての政府のお考えはどうですか。

○政府委員(福田幸弘君) 第一の点でありますが、独立というのを、ドイツにおける独立とそれからシャウプ勧告における意味合いとの関連での御質問であろうかと思いますが、シャウプ勧告におきましては申告納税というものを基本に考えております。
 そこで、適正な納税がされなければならないというのが一緒になっておりまして、申告納税というものは、適正な税額を申告するというコンプライアンスが根っこにあるわけでありまして、したがって、税法及び企業経理その他が複雑化してまいりました際に、専門的なやはり援助をするということが、その税額を申告の際に確定するというためには必要になってきますので、職業専門家グループの発達ということを勧告しておるわけでありますから、その職業専門家グループが、そういうふうな適正な申告納税を援助してその申告納税の実を上げるという意味で、職業専門家の独立的な役割りを期待しておるということは言えるわけでありまして、ドイツ法の場合はこれは申告納税ではございませんで賦課課税でございます。
 しかし、賦課課税のもとにおいて、その職業専門家としての独立公共性というものを強く打ち出しておるこの趣旨は、やはり適正な納税というものが民主主義の基本であるという考え方から来ておるものでありまして、申告納税であれ賦課課税であれ、適正な税額をいかなる形かで援助して実現するという趣旨は同じだろうと、こう思います。
 結論的には、職業専門家というものの役割りをシャウプは期待し、ドイツ法においては賦課課税でありますが同じく期待しておると、こう考えたいと思います。
 それから反面、エゴイズムというか、税理士の利権の拡大を図っておるという点につきましては、これはむしろ、各業界との調整の結果でき上がっていますいまの提出法案は、やはり合理的なものでなけりゃいけないということで、納税者から見ましても――これは依頼者でもあり一般国民でもあるわけでありますが、さらに税理士の方の立場、さらに税務当局、各方面から見てやはり納得のいく合理的な正しい制度でなきゃいかぬというのが基本的スタンスであります。
 したがいまして、税理士会だけのエゴイズム的なものが通るという趣旨のものではございませんで、全税目に拡大したということも、税の専門家としての役割りから来るものでありますし、第二条のところでその業務の内容を明確にしておるというようなことも、法律論としての処理でありまして、そういう意味で、これはある業界に偏したというものではなくて、法律として各方面との調整、さらに整合性を持つ、その法律自体の合理性を最も重点に置いてつくられたというふうに、御理解願いたいと思います。

税務職員の指定研修について

○藤井裕久君 次には、税理士の資格の取得の問題について伺いたいと思うんですが、一般的に税理士の資格に対して試験というものと経験をどう見るかという問題があるんだと思います。私は理論として財務諸表論、税法というものに理論のしっかりした論文の書ける方というのはこれはやっぱり大変な能力があるんであって、そういう方が経験を積まれればりっぱな税理士になられるというふうに思っておりますが、同時に、経験というものを通じても、場合によっては論文としてはそこまでりっぱに書けないかもしれないけれども、青色申告制度とは何ぞやとか、更正請求とは何ぞやとか、あるいは財務諸表のいろんな原則についても経験を通じて相当な知識を修得しておるんであって、特に税理士法が税法の専門家じゃなく税務の専門家という位置づけをしていることから言っても経験というものを無視してはいけないと、こういうふうに考えております。
 問題は、経験をどういう形で入れるかということだと思います。入れ方によっては、せっかく地位の向上を図っていこうとしている税理士そのものの何といいますか、全体のレベルが下がるようなことになってはこれはまた全然いけない、正反対なことになると思いますので、そこをどこに置くかという調整が一番むずかしいと思います。今度の法案でそこの調整をどこに置くかというのは、この会計学について研修だと、その研修は税理士審査会で認定を受けたというこの認定にかかっている、非常にそこが重要なことであると思います。
 執行の機関にひとつ伺いたいのは、いまいろいろ国税庁で研修をやっておられますね。その研修がすなわち認定をされるというふうにお考えでございますか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 税理士審査会が研修を指定するための具体的基準はただいまのところまだ決定しておりませんので、今後研修の実施期間とか、あるいは研修の種類、研修の内容、研修期間、こういうものをすべて勘案の上具体的基準が定められることになろうと、このように考えております。
 ただ、国税職員につきましては、その職務の性質上、会計学の知識というものはなかなか不可欠のものでございまして、そういう意味において、たとえば採用直後においてはほぼその全員について相当時間、これは現在百二十六時間になっておりますが、こういう研修を会計について行っております。もちろん、その他のものについても研修を行っておりますが、会計分だけで百二十六時間、こういう状態になっておりますけれども、その他別途、部内における通信研修等の制度も設けられておりますので、このような状況をすべて踏まえながら、制度発足までに具体的基準を決定するよう税理士審査会にお願いしてまいろうと、このように考えております。
 いずれにいたしましても、研修を通じて税理士の資質の向上が全体として図られるようわれわれとしては期待しておりますので、その方向ですべてものを動かしてまいりたいと、このように考えております。

○藤井裕久君 まさにそうしていただきたいと思います。税理士の資質の向上になるような研修にしていただきたいと思います。
 関連で衛藤先生がされますので、もう時間が来ておりますので、これからそういう研修の認定を定めるということでありますが、私は、いま言ったあくまでも税理士の資質の向上になるようなしっかりした研修でなければいけないということが一つです。
 それからもう一つ、特にお願いしておきたいことは、税務当局というのは税理士養成所じゃないということなんですね。ですから、この法律があるから税理士になれるような研修を別途つくって、それでもって税理士になるのをふやしていこうというようなことをやられては、これは全く本末転倒だと思います。税務の仕事をやるのに必要な研修をやる、その研修を通じて、また、実際の実務を通じて本当にその税務職員の資質が向上する、その人が場合によっては税理士になるというようなたてまえじゃなくちゃおかしいんであって、まるで税理士養成所みたいなことになっては、税金でもって税理士養成所を置くなんということはとんでもない話なので、それをまず厳重に守っていただきたいと思いますし、もう一つは、この審査会が非常に力を持つわけですが、審査会に税理士のいろいろな経験者でございますね、そういう方を入れていただくようなことは考える余地がないのかということが一つです。
 それからもう一つは、これはわりに表へ出てこないんですが、地方税職員の問題なんです。地方税職員の研修をどうするのか、その仕方によっては余りりっぱな研修ができないかもしれないという問題がある反面、そういうりっぱな研修ができないということになると、地方税の職員には研修の機会がなくなっちゃうかもしれないという問題もあるわけなんです。
 これはもう時間もありませんし、いままだ検討中というお答えしか来ないと思いますから、お答えは要りません。しかし、趣旨は、いま言ったような資質の高い税理士を出すための研修であるという前提でひとつお考えをいただきたいと思います。審査会の人選のことだけについて、お答えをいただきたいと思います。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 審査会の人選につきましては、審査会の人選三名ということになっておりますが、学識経験者の人選につきましては十分妥当な方にお願いをしてまいりたいと、このように考えております。

法1条(税理士の使命)

税理士でもある塚田十一郎氏が質問に立ちます。第一条に、「独立した公正な立場」という文言を入れることに対し、税理士業界からは反対の声もありました。その理由は、税理士は納税者の権利を擁護する立場であるのに、その納税者からも独立した立場にあると明記することはそぐわないのでは、という考えです。政府答弁は、この文言は、納税者を擁護するとい趣旨も含んでいる、ということでした。

○塚田十一郎君 大臣お見えいただきまして、非常にありがとう存じます。
 実は午前、大臣なしで若干質疑をさせていただきましたのですが、大臣が見えましたので、最初に私の立場を少し。
 私は、長年税理士を本業にしておる人間でありまして、残念ながらこの税理士法改正案には全面的に賛成できないのだということで、午前少しお尋ねをさせていただいたんです。同じような立場で午後も質疑を続けさしていただきたいと思うんですが、事柄が政策に関する部分が非常に多いので、願わくはひとつできるだけ大臣にお答えいただきたい。しかし、私の心配しておりますのは、私もこれが草案ができるまでの間余り勉強しないで、どんなことになっているか知らなかったのですが、大臣も恐らく御多忙な方ですからそういうことではないのかと思うのですが、できてみてなるほどそう言えば塚田君の言うとおりだが、おれのいまの立場ではちょっとそれも言われぬというような問題もおありではないかと実は想像しております。そういうような場合には、あえて御答弁をいただかなくとも結構です。政府委員でかわって答弁していただけるものであればそれはそれでもいいですし、仮に大臣から御答弁がいただけないでも、私の質疑の気持ちは、全国の三万四千人の税理士の中にかなりたくさん今度の改正案に反対の人たちがいるんだと、その反対の人たちがこういう気持ちでおるんですよということを、この機会に大臣にひとつお聞きになっておいていただきたいという趣旨でございます。

 早速本論に入りますが、まず第一条でございます。この一条は、「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図る」と、こうなっておるわけであります。この表現については、いろいろ議論があるんですが、これは解釈する人の立場だから、私はこの表現を直さなきゃならぬというほどは実は考えていないんです。
 ただしかし、もしこの一条が意味する意味が、いままで政府委員の側から答弁されておるように、税理士は国からも独立、これはいいが、依頼者からも独立と、何か非常に神様か仏様みたいな聖人君子みたいな中立な人間にならなければならないのだというようなことを考えておられるのではないか。あるいは私の誤解であるかもしれませんが、もしそうだとすると、ちょっと私は長年自分が税理士を本業としてきた立場上、これはえらいことになっちゃったなあ、えらいこっちゃなあという感じを実は持つわけです。
 徴税当局に全く誤りがないという前提に立つのでない限り、税理士は依頼者から報酬をもらって仕事をするのでございますから、私は依頼者の立場に立って国を相手といいますか、大蔵省、国税庁相手に争わなければならない場合も実はあると。また、そのような気持ちでやってきたんですから、こういう解釈は間違っておりますかね、どうでしょうか。これは主税局長で結構です。

○政府委員(高橋元君) 先ほど来お答えしておりますように、法に従った適正な納税義務の実現ということが税理士制度の根幹であろうと存じます。
 各法に基づきまして納税者の方々が持っておられます租税債務というものを、これはもう会計経理の計算から始まりまして税法の適用に及ぶわけでございます。一概に安易なものでなくて、かなり難解な部分も含んでおると思いますが、帰するところ、そこに実現される適正な納税債務、租税債務というものはただ一個だろうと私は思うわけであります。それ以上のものでもないし、それ以下のものでもない。それ以上であっていけないという立場を強調せられる方は、納税者の権利と申しますか、税務の折衝に関する納税者の援助ということを中心において御議論になりますし、それ以下であってはならないということでありますれば、これは私どもたびたび申し上げておりますように、税理士さんの社会的な責任ということに基づきます各般の今回御提案いたしております一種の義務規定というものがそれの担保ということになろうかと思うわけであります。
 シャウプさんも言っておられるように、納税者が自分で自分の所得計算を税務署に出す、それが申告納税の本旨である。しかし、一方でそういうことができない納税者の方々というものは他の納税者に迷惑をかけておる、犠牲でそういうことをなさるわけですから、それについてはやはり厳しい社会の目というものを実現するために税務当局というのが必要だと言っておられるのは、私はそのとおりだと思うわけでありますが、御提案申し上げております各種の規定について先ほど来お示しもありますように、いろいろ運用上工夫すべきものが多いという御指摘はそのとおりだと思います。
 その点は、今後国税庁とも相談をいたしまして運用について努力していきたいと思いますが、いまの第一条の「独立した」という言葉、専門的な税務の専門家であるということ、「公正」ということ、それらは従前の第一条の規定の意義を明確化したわけでございまして、従来「中正」ということであらわされておりましたが中立にして公正ということを「独立した公正」という新しい言葉に置きかえて、より一層税理士さんの使命を明確化したいと、こういう趣旨にほかならないことについて、御理解いただきたいと思います。

○塚田十一郎君 大臣は、徴税官吏、税務官吏、この人たちの課税において絶対に過ちはないという自信をお持ちでしょうか。

○政府委員(矢島錦一郎君) 私ども税務の運営に携わっております者といたしましては、常に適正かつ公平な課税ということを旨といたしまして法律に従って行動しているわけでございます。したがいまして、人間ではございますもので、間違いが全くないということはないとは思いますけれども、できるだけそういうことのないように、いつも適正に行うよう努めておるつもりでございます。

○塚田十一郎君 私もやや似た気持ちではありますが、少し違いますかな。私は、人間ですから、税務官吏も間違いがないということを要求するのはこれは無理だ、間違いはあると、やむを得ないそういう場合もあると。ただ、私が長年自分で経験をして、中にはわかっていて間違っていると思われる節があることもある。なぜそういうことが起きるだろうか。まあこれは当たっているかどうかわかりませんが、私の想像では、やっぱり税務官吏もよく徴税成績を上げると御出世になるというあれになっていないかと、こう思うんです。そうすると、やっぱり出世したいなという気持ちが意識的に、無意識的に働いて、少しいたずらをされると。ことに相手が無知な場合、こいつ何もわかっちゃいねえなと思うときにやっていられることもあるんじゃないかなと思うんです。しかし、それはごく例外のことですから。
 ただ私は、すらっとは、税務官吏も人間だからお間違えになることあるだろうな、まあやむを得ないことだと。したがって、だれかが間違ったときに、だれが国民の立場に立って弁護し是正をしてくれるのかということが、私は一つ大事なことだと思うんです。私は、自分では、税理士の本来の任務はそれなんだと実は思っておるんです。また、そのつもりで私は長年税理士業務に従事してきた。もちろん立場上非常に忙しいものですから、細かい税務事務は扱わないんです、たとえば確定申告を書くとか。
 私は、そう言っちゃ何ですけれども、税理士さんのやっていられる仕事の中に、むしろ税務書士と言った方が――書士というのは行政書士とか司法書士のあの書士ですが、そう言った方が適切な仕事の部分もあるんじゃないかと。しかし、本当の税理士の仕事は、やっぱり間違われた場合に国民の立場でそれを是正させてあげますよと、間違わないようににらんであげますよという人がいなければならないと思うし、それが私は税理士本来の任務だと思いますが、これは大臣どうでしょう。

○政府委員(矢島錦一郎君) 大臣の御答弁の前に一言申し上げておきたいと思いますが、先生も御専門でいらっしゃるので余りくどくど申し上げるのもなんだと思いますが、私どもあくまでも申告納税制度ということでございますので、近づきやすい税務署、いわば納税者の御理解と御協力を得ながら税務行政を進めていくというつもりでやっております……

○塚田十一郎君 そんなことを聞いているんじゃない。限られた時間がなくなってしまうから私はいやなんですよ。

○政府委員(矢島錦一郎君) 先ほどお話がありましたように、法律を執行するという方向で、方法といたしまして私どもは適切にやっているつもりでございますが、納税者サイドにおきましても、異議申し立てとか、あるいは審査請求、訴訟といったような救済の手続もございますし、私どもといたしましてもあくまでも納税者の立場に立って、近づきやすい税務署ということでやっておるつもりでございます。

○塚田十一郎君 何の答弁にもなっていないじゃないですか。

○国務大臣(竹下登君) 私も専門家ではもちろんございません。が、大体シャウプさんのときの物の考え方からきますと、いわゆるタックスペイヤーがセルフアセスメントをするというときに当たりまして、そのセルフアセスメントというものに、日本の納税者全体が必ずしも私は慣熟していないと思うのであります。その限りにおいて、このまさに「納税義務者の信頼にこたえ」て、「納税義務の適正な実現を図ることを使命とする」というこの条文というのは、それなりに私にも理解ができるような感じがいたします。
 ただ、恐らく徴税に当たりまして、大体このシャウプ勧告のときからいろいろ議論されたそうでございますけれども、徴税とかそういう言葉が、日本の場合は、タックスペイヤーとかセルフアセスメントというような言葉と非常に違った熟語が使われてきたというようなことから、行き過ぎとかいうようなものが私も絶対ないものであるとは思ってはおりません。

○塚田十一郎君 まあ苦しいようですので、これ以上はお尋ねしませんが、もちろん現行法三十六条に規定しておりますところの脱税相談、これをやっちゃいかぬとか、三十七条に規定している税理士は信用失墜行為をやっちゃいかぬとか、それからまた、四十五条二項に規定するような税理士業務を行うには相当な注意をしておかないといかぬよというような規定は、これはもちろんのことだと思うのです。しかし、私はいままでの税理士法のもとで三十数年間税理士業務をやらせてもらって、何のおとがめも受けることなく、それなりに依頼者に喜ばれて業務をやってまいったんですが、それではいかぬということになるのだと大変だと思います。
 つまり、納税者の立場に立ってはいかぬ、中正な立場に立て、私はとてもそんなことできないと思います。私は、ですからして、自分の気持ちからすれば、この一条は、これは条文を修正しなさいというほどの気持ちも持っていませんけれども、むしろ私の気持ちすっきりと言うならば、四十六年の十二月に、これこそ日税連がお決めになった「税理士法改正に関する基本要綱」の方がより適切だと自分では思っています。
 これには、第一条の使命の規定はこう書いてございますね。「税理士は、納税者の権利を擁護し、」とぱちんと書いてある。「法律に定められた納税義務の適正な実現をはかることを使命とする。」、この「納税者の権利を擁護し、」ということがひとつ私は大事じゃないかと自分じゃ思っています。二項には、「税理士は、前項の使命にもとづき、誠実にその職務を行ない、納税者の信頼にこたえるとともに、租税制度の改善に努力」しなさいと、こういうことなんです。
しかし、まあこれは私の意見ですから。
 しかし、大臣、このいまの税理士制度は、申すまでもなくシャウプ勧告が基礎になって出ておるんでして、あの当時の日本の税務行政の状態、ことにあの時分はまだ税務代理士と言っておったかと思うのですが、税務代理士というものをどのようにシャウプ使節団が認識したかというと、「納税者の代理としての税専門家というよりも、むしろ上手な取引者ができあがっている。ある場合においては、この「取引者」という語は「買収」収賄およびこれに類似するものを意味する婉曲な語句である。」と書いてある。非常に税務代理士というものはばかにされておる。これではいかぬということで、いまのような税理士法というものをつくって、いい税理士を、健全な税理士制度をつくれということになったと思うのです。
 私は、実は昭和二十一年から国会に出ておりまして、御記憶のあられる方もあるかと思いますが、昭和二十三年から二十四年のころに、短期間ではありますが、大蔵政務次官を務めさせていただいておる。その因縁をもってずうっと長く衆議院の大蔵委員会に籍を置いており、シャウプ使節団が来ましたころも私はそういう立場におって、あの当時、あれは自由党でしたかな、自由党の税制調査会長を私はいたしておりました。したがって、当時のいきさつはかなりはっきりしているのですが、私はその中で、いまの二十六年にできた税理士法制定のときに、あの当時の主税局長の平田敬一郎君が委員会で御答弁になっておるあれがあるのです。
 これが非常によく私の考える税理士制度を言いあらわしておられると思うので、参考にちょっと読んでみます。「将来におきましてはさらに一層発展しまして、税務代理士は軍に税務官庁の都合ばかり聞くというのではなくて、むしろ」、ここはぴしっと税務、官庁とは独立となっている。「むしろ納税者の正当な利益と権利を納税者にかわって擁護する、こういう機関といたしまして、どうしても将来大いに発展をはかる必要があるのではないかということを、強く考えておる次第でございます」と言っておられる。
 また、別のところでは「同時に私は税理士の各位がほんとうにみずから勉強し、力を養われまして、税務署に対しまして、むしろ堂々たる態度で、正しい納税者の利益、権利を擁護するという意味におきまして、大いに活躍願う。むしろそれによりまして、税務行政自体が改善されて行くというところまで、活躍が期待されるような方向に行くのが理想ではないか。」と思うのであります。これが現在の税理士法が二十六年にできたときの政府当局の物の考え方だと思うんです。いつの間にか変わっちゃったような感じがするんですが、どうですか。これ、主税局長。

○政府委員(高橋元君) 現在の税理士法がシャウプ勧告に基づいてできておりまして、シャウプ勧告自体で言っておりますことは、ちょっとお時間をいただいて恐縮でございますが、もう一度繰り返させていただきますと能率的な租税制度は、税務當局に對して納税者を代理する資格のある専門家の存在を必要とする。このような代理は、個人納税者に、その個個の事件において、税務行政上の誤謬に對し必要な保護を與えるものである。加えるに、この専門家は、行政制度について見識のある批判を加える能力があるから、このような制度は、行政事務全般にわたる牽制として役立つのである。その結果、行政能率を増進させ、決定を一層公正ならしめるために、絶えず必要な刺戟が與えられることになる。着々と納税者の代理者の数が増し、その素質が向上するということは、日本における税務行政の成功にとっては、極めて重要なことである。
これを受けまして、今回、御審議をいただいて若干改正を御提案いたしておりますが、現行の税理士法の第一条の条文というものができておるわけでございます。
 こういう税理士法の中で「中正な立場において、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務を適正に実現し、納税に関する道義を高めるように努力しなければならない。」、せんじ詰めて申しますと、税理士さんが税の専門家として申告制納税制度のもとの納税者を助けて適正な納税義務の実現を図ると、法律的な条文で申しますとそういうことになるわけでございます。それによって、先ほども申し上げましたように、本来あるべき納税義務よりも高いもの、多いものでなくて、また少ないものでもないという形で適正な税の運営が図られるということは最も望ましいわけでございまして、昭和二十六年に当時の政府委員がお答えしました気持ちは、私どももいまも変わらずに持っております。
 それは、納税者の権利を擁護するということは、いまも申し上げた適正な納税義務の実現の中に含まれるというふうに私は信じておりますし、今後ともそういう方向で税理士制度が発展していくことを期待しておる次第であります。

○塚田十一郎君 それでこの条項、結論ですが、もう一度繰り返しますけれども、私はまさに税理士の仕事も適正な納税行政を実現するというところにあると思うんです。したがって、ことに納税申告制度ですからして、まず税理士は第一段に税法どおりの申告を納税義務者がするようにお手伝いをしなければならない。
 と同時に、もしも、申告制度といっても、必ずしもみんな申告したものが正しくない場合があって、いろいろな形で徴税当局が是正をされますね。更正決定をされたり、あるいは査察でもって手入れをされたり、そういういろいろな徴税行政を実施された場合に、それが誤っている、行き過ぎているというときには、それを直させるという意味でも適正な納税行政を実現するという、私は両方の面があると思うんです。そして、国民の側から本当に税理士に望みたいのは、私はその後の部分。前の部分は、私はそう言っちゃ非常に失礼ですけれども、そんなものは税務書士というぐらいの人がおやりになってもいいという感じなのでございますが、もうこれは答弁は要りません、時間もありませんから。

特別試験について

昭和31年に当初3年間限定の予定で設けられた特別試験制度が、ずるずると延長され現在に至ります。今回の改正でこれを廃止することになりましたが、引き換えに、研修を受けた上での試験免除制度が導入されます。これは、公務員(税務職員)を優遇し一般人とは不平等に扱うものではないか、との追及です。前回の記事で紹介した昭和54年判決を受けてのものと思われます。

○塚田十一郎君

 ( 前略 )

 次に、税理士試験制度でございます。これは私が過去の経過を見て、けったいなもんやなあという感じを実は持っているんですがね。これは法の常識に関する問題ですから、大臣、この特別試験制度というものは、御承知のように、これは昭和三十一年にできたものなんです。このときは五年間の時限立法だった。これはまあ私は、こういう時限立法というものは国会の経験で、必ず時期が来ると延ばしてくださいという運動が起こる。そうすると、やっぱりあちこちから頼まれると、ついまあいいじゃないかというようなことで少し延ばす。これは本当はよくないことなんですけれども、どうしても国会議員もそうなりがちなんです。これがそのとおりになっているんですよね。三十六年に五年の時限が来たときに、延ばしてもらいたいという運動が起こった。
 このとき私は不覚だったと思うんですが、今度の改正案は数字できっちり切らずに「当分の間」とやっちゃった。これが一つの国会としてはミスでした。あるいは立案した人にしては、何か意図があってたくらんでいたのかもしれません。しかし、そんなことで国会が通るわけありませんから、「当分の間」というのは何年のことなんだと当然国会で問題になった。時の村山主税局長が、「当分の間」というのは三年を目途としますと、こう言われた。三年ぐらいなんですと。それで国会も一応まあ納得したのかだまされたのか、それで通したわけです。三十一年にできて三十六年で五年の期限が切れて、三十六年に改正して三年と言えば三十九年でこれは終わってなきゃならないんですよ。それが延々と今度まで続いてきているんです。私は、だから国会議員の立場で、これは完全になめられたな、はめられたなという感じを持つんです。
 それで大臣にひとつ、これは、時限立法というものはその期限が来たらばやめるというのが原則のものだという私は考え方ですが、大臣どうですか。

○国務大臣(竹下登君) あらかじめ時限を確定してこれを時限立法と言い、「当分の間」というものの裏づけというものは、やはり従来は国会の責任者の答弁とかいうようなことが背景になっておるものではないかというふうに私は考えております。

○塚田十一郎君 こうして時限立法ができて、時限が来ても一向に打ち切りにせずに、しかもいよいよ最後になったらばさらに一層、少なくともこの特別試験制度ができた。特別試験制度というものを考えた立場、気持ちからすると、今度の制度はあれはむしろ非常に甘くしちゃったという形でしょう。きつくしたと言うわけにはいかない、幾ら見ても。だから私は、その意味で今度の制度はまず納得がいかない。国会をなめているという感じ。その上に今度の制度は、まあ研修はされるというのですけれども、研修というのは何時間かは講習を受けて勉強するということですよね。あとは試験ないんでしょう。これは無試験制度というべきものなんですよね。
 だから、今度のこの税理士法改正に一番真剣に反対をしているのは、試験を受けて税理士になった連中ですよ。
これはもう当然の人情でしょう。大臣ね、どうも大変大臣、大臣と申し上げて恐縮ですが、まああなたは大蔵大臣としてそれはやっぱり税務官僚時分の部下だからかわいい。定年退職した後、職があれば非常に結構だという意味では、特別今度の改正の、試験なしで研修だけ受けて、あとみんな税理士を開業したければよろしいよという制度、いいと思うんです。しかし、あなたも一人の政治家として、一人の国務大臣として国民の間にこんな差別待遇していいと思いますか。余りうちの実子はかわいがる、まま子はかわいがらないという感じになりませんかね。そこはどうですか。

○政府委員(高橋元君) 税理士さんの主たるお仕事はさまざまだと思いますけれども、税務折衝に当たって納税者を援助なさるということも重要な部分かと思います。先ほど来、そういう点についてお示しがあったわけでございます。また、現実に会計帳簿の作成、それから税務法規の適用等につきましては、やはり現実の税務に関する実務経験というものも相当程度有益であろうかと思うわけであります。学者の方々に伺いましても、学術試験によって受験せられて合格せられた税理士さん、それから実務的な素養の深い、しかも適格な人から出てこられた税理士さん、いろいろな方が多様に相まざっておりまして、そこで初めて税理士に対する納税者の方々の御期待、税理士さんの円滑な活動というのができるのじゃないかという御意見もあるようであります。
 どこの国の税制でもと言うとまたおしかりいただくかもしれませんが、税務の実務経験というものを税理士または税務に関して納税者の代理をするような制度を持っております国におきましては、やはりそれはそういう資格を付与する場合に重要な要件として認められておるところだと思います。そういう税理士制度のあり方を前提といたします限り、実務経験によって税理士をつくっていくということも否定し去ることはできないのではないかというふうに考えます。
 三十六年の経緯からしますと、「当分の間」というのは三年をもって打ち切るべきであっただろうということであります。そこで、税制調査会で税理士試験制度についていろいろ長い間御検討を願って、当時、三十九年法として御提案申し上げたのは、特別税理士試験制度に当たるものはやめてしまいますが、会計学について口頭試験をやるという案が出てまいりました。その案が不幸にして廃案となりましてから今回に至るまで、情勢の進展に対応していろいろ勉強してまいったわけでございますが、今回改正案をお出しする機会を得ましたので、今回特別税理士試験制度を経過的措置を設けて廃止をいたしますとともに、管理的地位の在職年数を付加し、また経験年数を伸長した高度の研修修了という要件を課して、あえて税理士さんとして恥ずかしくない資格を持った人を税理士に登用する道も開くという改正案を出しておるわけでございます。
 決してこれによって現行法より甘くなっておるのではないかという御指摘のようなことにならないと思いますし、今後税理士審査会等でやります税理士の実質的な研修なり、そういうことについて、運用に遺漏なきを期してまいるということにいたしたいと思いますので、御理解をお願いをいたします。

○塚田十一郎君 質問より御答弁が長くて、質問しないことを述べ立てられて、それでも時間は刻刻と過ぎて、二時になると私は委員長から時間ですといって質疑を打ち切らされる。非常に困る。
 私がいまお尋ねしたのは、ああいうぐあいに一方に一般試験を受ける人がおり、一方に特別試験、それが今度全然無試験になるというような制度が政府の、国の、大蔵大臣の扱いとして人間を、国民を差別扱いにしていることにならぬかといってお尋ねをしているんです。その点どうですか。

○政府委員(高橋元君) 法のもとの平等ということはございますけれども、その取り扱いに差異があってもそれに合理的な理由があれば、法のもとの平等に違反するということではないと思います。
 先ほど長々と申し上げたわけでございますが、税務上の折衝を中心とする専門実務家としての業務ということから考えますと、実務経験を評価して税理士資格を付与するということは妥当な扱いであるという考え方を持っておりまして、それにつきまして、これは昨年でございますが、裁判になりました結果、裁判所の判決でもその点が認められておるというふうに承知いたしております。

○塚田十一郎君 やっぱり食い違っていてだめです。私は、いまの改正案のような形で出てこられる人たちが、税理士として能力ないと言っておるんではないのです。一方に、苦労して一生懸命にやった、しかも税理士試験というのはすごく合格率が少ないのですね。昨年なんか四万何人か受けて、合格した人が一・八%、百人に二人合格しないのです。一方、特別試験の方は、七八%も合格するのです。これは平等だとは私は言われないし、そもそも特別試験制度ができたとき、二十六年から一般試験制度ができておりました。しかし、なかなかそうたくさん一時にできないから、税理士の数が足りないから、そこで応急の措置として、能力があると認めてもいいだろうという形であの特別試験制度というものができた。
 したがって、これが時限立法であった経緯からしても、どこまでもこれは暫定的な措置ですよ。少なくとも国会の本来の考え方は、やがて一般試験を受けた人がどんどん出てきて、こういう人たちはやめにするというのが、あの時限立法の制度だと私は思っておったんです。ずるずるになっちゃった。
 まあしかし、それはそれでいいとしますが、ひとうついでに伺っておきますが、研修をしたということ、百何十時間もやられる、あと研修の結果をテストされるあれはあるのですか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 研修につきましては、先ほどこの席でお答えいたしましたように、税理士審査会が具体的基準をこれから決定することになっておりますので、その試験あるいは時間数等につきましては、ただいま決定しておりません。

○塚田十一郎君 これは大変なことだ。私は少なくとも研修制度をあれして、これで能力がついているかどうかを判断しようという以上は、研修をした結果は、少なくとも研修が効果を上げているかどうかを最後の段階でテストをしてあれをするというくらいのことは決まってかからなければ、これは全然話にならぬでしょう。そんなことはこれは前提ですよ。もしも後でテストしないのだといえば、時間だけ研修会に出て居眠りしていたって通るということになっちゃいますよ。こんなことこそ当然のことじゃないか。これから考えて決めますなんという事柄でないでしょうが。どういうのです、それは。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 学識経験のある方三人にお願いをいたしまして、税理士審査会というのが法律上設けてございます。ただいま委員の御発言も確かにそういうお考えもあると思いますが、いずれにせよ法律上の問題といたしまして税理士審査会の方々に、ただいま御発言の趣旨も含めまして、十分に御検討いただくというふうにわれわれ執行に携わる者としては考えております。
 それから、なおこの席でちょっと先ほど受験の合格の問題についてお伺いをいただきましたのですが、一・八%は、それは実は現在の税理士の一般試験につきましては科目別に合格が決まることになっておりますものですから、その数字は全体としてとりますと一一・六という数字を五十三年度で持っておりますので、念のために申し上げさしていただきたい、このように思っております。

○塚田十一郎君 一一・六と言ったって、その率に入る人がみんなすぐ資格をもらえるのじゃないでしょう。五科目全部合格して、あれするのはやっぱり一・八%でしょう。合格率は一・八なんですよ。
 それじゃそれはその辺にしまして、一体現在、あらゆる制度を含めて、試験あるいは特別試験、一般試験あるいは試験なしで資格をもらえる人でどれくらい税理士さんおりますか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 正確な数は追って申し上げますが、大体三万三千人と承知しております。

○塚田十一郎君 資格を持っておりながら登録もしていない、もちろんしたがって営業してないという人も相当あると聞いているが、そういう人を含めるとどれくらいになりますか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 資格を持っている者を含めますと、大体三万三千の倍をちょっと超す数字と私はただいま記憶しております。

○塚田十一郎君 そこでお尋ねしますけれども、政府が今度のような研修だけでどんどんどんどんと税理士になる資格を与えるという制度をお考えになったときに、将来日本の税理士の数はどれくらいになって、そこで需給バランスが、税理士に仕事を頼みたいという人と税理士の数がバランスがとれるという見通しを持っておられるのか、そこのところ。

○政府委員(伊豫田敏雄君) やはり税というものも、だんだんいろいろ経済の動き、税務の内容の動き、あるいは国民の権利義務の問題も動いておりますので、したがって、将来どういう状況のもとにおいてどういうバランスということについて、ただいま直ちににわかに御答弁申し上げることはちょっと困難かと思います。

○塚田十一郎君 私も、困難だと言われればそうだなと思いますが、その見通しがつかずに長年あるいは国税で二十三年、地方税で二十八年勤めておった者は研修でぼんぼんぼんぼん資格を与えるということにしたときに、私は一番心配しているのは、税理士業界が過当競争になっちゃうと、そんなこと決していいことでない。そうなったら、それはもう依頼者のきげんを取って、そうでなければ得意先見つかりませんよ。しかも、現在で三万四千人とあるんですが、しかし潜在者を含めると七万七千人とあるんですが、この上に毎年毎年ぼんぼんぼんぼんと出てきて、その見通しをつけないでこの制度をつくるということは無責任ではありませんか。
 私は、ことにこのことを公認会計士制度について考えるんです。あれはもうまさに大事な制度ですけれども、公認会計士制度ができて、いままで試験合格者ができて社会に公認会計士が誕生して、いま大部分の公認会計士は資格をもらったけれども職がないというんでしょう。職がないということが波及して、税理士の仕事でもやらしてもらおうかということになっているんです。だから、資格を与えるという制度を考えられるときには、将来のそういう仕事と職業人のバランスを考えないなんという制度は、これはおかしいですよ、むずかしいことであろうけれども。だから将来は、いまの現在すでに資格を持っておりながら職についていない人たちが職につくかもしれない。さらに新しく資格を持つ人が出てくる。それも一般試験の人も出てくる、特別試験の人も出てくる。これは非常にむずかしいでしょうけれども、やっぱりそういう制度を考えるときには、その見通しぐらいはつけておいてもらわぬと困っちゃう。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 確かに、ただいま国税庁は税理士の監督をつかさどっておりますと同時に、やはり税理士業界というものも考えていかなくてはならないということは、ただいま委員御発言のとおりだと思います。
 ただ、税理士の試験と申しますものの本質は資格試験と、したがって税務相談なり代理なり、そういうものに十分にそういう求めに応じ得るそれだけの能力を持っている者、これを選別するのがただいまの税理士法の決められております試験の精神あるいは気持ちかと思います。
 したがいまして、先生のおっしゃった、将来のことをどう考えておるかという、職にあぶれる税理士がふえるじゃないかということと直接には関係がない。
しかし、業界の問題として、それはそれなりにわれわれとしては今後十分考えていかなくてはならない問題だともこのように考えております。

○塚田十一郎君 先ほど申し上げたように、一般試験が非常に厳しい、特別試験はその割りにしては合格率が非常に甘いと私は申し上げたんですが、一・八%。公認会計士だってそんなに厳しいあれにはなってないようなんですよね。公認会計士の方は、第三次のところを見ても一割三分ぐらい合格者がある。税理士がどうしてこんなに合格がむずかしいのかと思うんですが、これは私の邪推かもしれませんが、大蔵省の頭に、一方、国税の役人上がりの人がどんどん出てくるから、余り一般試験の連中をふやすと税務行政上めんどうになるから、こっちはなるべくきつくしてしぼってやろうという気がありませんかな。

○政府委員(伊豫田敏雄君) それは全くございません。

○塚田十一郎君 予想したとおりの答弁で安心しました。税理士の諸君もその点安心してください。しかし、私は本当は若干疑ってはおるんですがね。
 それで、余りこの問題ばかりやっていると後の問題の時間がなくなりますから、最後に、これは私が自分で見つけてきたんではない、反対陳情の中に書いてあった、おもしろいものがあります。昭和三十九年、調べたけれども何日のあれかわからない。朝日新聞の「天声人語」、税務職員の認定制度の導入についてという記事がある。おもしろいからお聞かせしましょう。「税についての経験を活用し、税理士不足を補う妙案のように見えるが、この改正案は先が思いやられるというものだ」と書いてある。「先が思いやられる」、三十九年に先が思いやられると考えておった人がおるんですね。「もと税務職員である点を利用して、税務署に顔をきかし、税金の査定に手心を加えさせて、そのかわり、多額のリベートをとる税理士がふえる結果になりはせぬか」中略「やがて税理士を開業するのだからと、税務職員の中で、在職中からアミを張っておく傾向が盛んになる心配もある。税理士というのは、納税者の利益を擁護する立場に在るべきものだが」、ここもたまたま私と同じ考え方のようですが、「政府は税理士を徴税の補助機関と考えているのではあるまいか。」と書いてあるんです。
 今度のこの政府の改正案、これでは税理士は国税当局の出先機関になっちまうと言って心配している人はたくさんいるんです。私は、まさかそんな気を持って改正案をお出しになったとは思ってない。しかし、やり方によってはそういう心配が現実に起きる心配のある改正です、今度は。あっちもこっちも規制する法律ばかりこしらえて手足を縛って、そうして思うままに任せようという感じになっているから。ところが、そういうことを全然素人の人が三十九年にもう予測しておったんです。大臣、こういう心配ありますが、御所見をひとつ。

○国務大臣(竹下登君) 私は、自分の在職中に将来の、病院に勤めているお医者さんが、開業したときの患者を確保しておこうとか、そういうような性格のものにならないような心構えというのは、私は税務職員そのものには絶えず必要なことじゃないかと思います。
 したがって、先ほど先生のお話を聞いておりまして、いまの質問とはいささか離れますが、医師が全国平均何ぼ必要であるとか、税理士もそういう点においての考え方も運営の中においてはあるべきである。試験そのものはその問題とは別といたしましても、これはこれだけに、いわゆるタックスペイヤーの方で繁雑ないろいろな手続を要するようなことになれば、その需給関係というのは私は将来にわたっては余り心配することのないような問題ではなかろうか。これは私の個人的見解にすぎません。そして、いまおっしゃいましたような形で、移動もあることでございますし、そう開業する前に病院勤めをしながら患者層を集めていこうというような傾向には私はなかなかなりにくいのじゃないかなと、こういう感じがいたしております。まさに個人的見解でありますことは、御容赦をいただきたいと思います。

○塚田十一郎君 ぜひそうあってほしいと思いますが、私が知る限りの狭い知識の間でも、税務署をやめられて税理士になられた方々はわりに楽にお得意先を開発していられる。その意味におきましては、税理士試験、一般試験を受けた人は、試験に合格しても、食っていけるだけのお得意を集めるのになかなか大変なのです。たまたま私のせがれが、おやじと同じように税理士でございます。一般試験を受けた税理士でございます。これは三十七年ごろ合格をしているのですが、やっと近年、おやじ、税理士で食っていけるぐらいになったよということだと思うのです。
 それだけに私は、今度問題になってから、試験を受けて合格された税理士諸君、さらにいま試験を受けているがまだみんな通らない、税受連というグループだそうですが、が来られて、陳情をいろいろ聞いて、この人たちの将来は苦難の道、イバラの道だなあと私は本当に同情している。まず試験、その試験は一・八%ぐらいの厳しさ、それに通っても仕事を見つけるのは大変です。この辺は、私は税理士をどういうぐあいに養成するかという制度を国としておつくりになる、お決めになるときに、もうちょっと温かい配慮が全体に対して加えられておかなければならぬと思うのです。私の率直な気持ちを申しますならば、特別試験の制度つまり税務官吏上がりの人はある年限でもう打ち切るべきです。そうして、やがて一般試験の制度を、一般試験でできてこられる税理士を本当に税理士になる正常コースとして養成していくというのが正しいあり方だと私は思っています。ところが、残念ながら、この改正案の制度は私の気持ちからは少なくとも逆行しちゃっている。これは私の意見です。

法41条の3(助言義務)について

法41条の3に助言義務を設ける改正。助言義務とは、税理士が、顧客の脱税の事実を知ったときは直ちに是正をするよう助言しなければならない、というもので、罰則規定もあることから税理士業界でも懸念され、今回の改正の中で一番反対が多かったということで、長い議論が続きます。

○塚田十一郎君

 ( 前略 )

 問題は、助言義務であります。この助言義務は、さっき枝葉の点は少し午前に政府委員に聞きましたが、大臣、この四十一条三の助言義務、ひとつとっくり考えてください。これが一番反対の多い条項です。反対の多いということは、ある団体がアンケートをとってくれました。そうしましたところが、助言義務を削除してほしいというあれが二千七百四十八通のうち二千三百四十五通、つまり、八二・七%が助言義務をやめてほしいというあれをしているというアンケートでした。私も、このたびの改正案で一番いやなのはこの規定だと実は思っている。ちょっと読んでみますが、税理士は、税理士業務を行うに当たって、委嘱者が不正に税を免れている事実、不正に還付を受けている事実または課税標準等の計算並びに計算基礎となるべき事実を隠蔽または仮装している事実があることを知ったときは、直ちにその是正をするよう助言しなければならないということになっております。
 最初に政府委員に聞きますが、この規定はこういう事実がその相手方の故意でやっている場合を考えておられるのか、不正にと書いてあるから恐らくそうだと思うんですが、知らずにやっている場合も入るのか、どうなんですか。

○政府委員(高橋元君) 不正とは故意がある場合と解するというのが、私どもの考えであります。

○塚田十一郎君 この規定は、私は内容はきわめて社会人として当然のことでありますので、あえて反対はしないんですが、これが税理士がその業務を行う場合義務として法制化される、しかも、これに違反する場合には懲戒になるということでありますと、長年税理士業務を営んできた者といたしましては、全く今後どうしたらいいだろうかと言って当惑しちゃう。私どもが納税者から仕事の依頼を受けます場合は、それによって報酬をもらっておるんですから、私のように気の小さい者は、なかなか仕事の依頼を受けた先に行って、あなた、ここのところ脱税になっておりますよとは私はちょっと言いかねるという心境です。
 私の考え方が幼稚で余りよくないのかもしれません。そういう税理士もいるからこの法律が必要なんだと言われる方もまたあるかもしれませんが、私の率直な気持ちはそうです。もちろん依頼者が気づいていないのであれば問題はございませんけれども、いまおっしゃるように、わかってやっておるということになりますと、依頼者の本当の気持ちは――これはいいとか悪いとかは別ですよ。本当の気持ちは、税理士さんにも見つからない、国税庁の、税務署の係官にも見つからない、うまくこれでいけばいいがなと思っているんです。そこへ、あなたここ間違っているんですよと言ったらば、私は十のうち八つぐらいまではよけいなおせっかいですよと、そんなことはわかっているんですよと、そんなくらいならあなたにもう頼みません、やめてくださいと言われるんじゃないか、そうなると私、飯の食い上げですからねっ
 さらに今度、わかって注意をしても相手が聞かなかった。なに、そんなこと言ったって税務署はごまかせますよというようなことで聞かなかったとしたら、それを今度私が承知でやっていけば三十六条の違反になりますから、これは政府委員もそのとおり御答弁になっていますが、やめなけりゃならない。これも飯の食い上げになる。困るんです、これは。いままでこんな規定がなくて、別に悪いこともせずに全国三万四千の税理士が平穏無事にやってきているのに、どうしてこんな規定を新しくお置きにならなければならぬのか。
 午前に聞きました外国に例がある。なるほどアメリカに似た例あるけれども、私はどう読んでも日本の場合と大変違う。あれはむしろ気づいていない場合に注意してやりなさい、むしろ同じような助言義務はありますが、西独の税理士法では逆に税理士が力の限り、知恵の限りを尽くして自分の依頼者に注意しなさい、自分の力が足りなかったり、不注意でもってその依頼者に損害を与えたら損害賠償しなさいというのが西独の税理士法の助言義務でしょう、日本のと全然違うのですよ。
 そこで、私はそんなことになるかなあと、しかし福田審議官は御答弁でそうおっしゃっているから、ひとつこの点は審議官に、この制度を実施すると税理士の社会的地位が上がると、それから、この制度を実施すると脱税の九〇%ぐらいが直ると、こういうようにたびたびのところで御答弁になっているのですが、私は全然そういう感じはしませんね。これでもって税理士の社会的地位が上がるなんて全然思わないし、一〇%も直るかなあという私は感じですね。実際、社会というのはそんな甘ちょろいものではないんですね。この点はどうですか、審議官。

○政府委員(福田幸弘君) 受け取り方の相違というような問題でございますので、失礼になるかと思いますが、社会的にはやはり委嘱者と税理士の間ではきちっとした関係でやっておられるということは、やはり社会的地位の向上ということであろうと思います。
 それから九〇%と申し上げましたのは、注意をすればそこで良識のある納税者であればお直しになるというふうに、国民全体の良識を期待したいという意味でございます。

○塚田十一郎君 まあ、それは判断の、考え方の違いですから結構ですけれどもね。
 そこで、実際問題としてどういうぐあいにそれでは今後やったらいいんだろうかなと私は実は非常に心配しておるのです。たとえば、ある事件をある依頼者から受けた、行ったらたまたま脱税の事実が見つかった。私どもに事件を頼みにくる人には、私は大体そういうものがあると思うのです。そこでこっそりと、あなたここ脱税になっているんですよと言えばそれでいいのか。
 しかし、ただ言った、相対で言ったと。後になって本人が聞かなかった、税務署の手が入って脱税が見つかった。この点を塚田税理士に前に頼んだことがあるが、塚田税理士は注意しませんでしたか、恐らく聞かれた人は、注意されて直さなかったと言われれば困るから、いやそんな注意は受けませんでしたと言う心配が大分ありますね。証拠をこしらえておかなきゃならない、証拠をこしらえておかなければ私が助言義務違反をしてないという立証ができない。そこで、証拠をこしらえる方法としては、内容証明でもぶつけるかということですね。あるいは新しい制度によりますと、税理士が依頼を受けた事項は詳細に帳面につけておけという規定がありますね。あそこへやっぱり、そういう助言をしましたよというようなことを書く必要がありましょうか。その点、ちょっと。

○政府委員(高橋元君) 四十一条の三で御審議いただいていますように、仮装または隠蔽の事実があることを知ったときは、直ちに是正するように助言をなさるわけであります。これはいまお話しのように、相対で依頼者にお話しになっても結構だと思います。
 それをどうやって立証するかというお話でございますが、この立証は後日のことになる場合が多いと思います。この立証は税務当局側にあるというふうに私どもは考えております。
 第三に、今回の帳簿でございますが、「委嘱者別に、かつ、一件ごとに、税務代理、税務書類の作成又は税務相談の内容及びそのてん末」を記載せよという四十一条の改正案を示しておりますが、たとえば税務相談の段階であれば、税務相談の内容及びてんまつとして四十一条の三の助言義務をおやりになったということをお書きになる必要は必ずしもないと思いますが、その点は日税連の会則によって具体的に決まるというふうに考えます。

○塚田十一郎君 それでは少し安心しましたが、助言義務を履行したかしないかの立証は政府側にある、税務当局側にある。しかし、相手に聞いても、そんなもの助言を受けませんでしたと言ったらば、それがやっぱり立証になっちゃうでしょう。相手に言っただけでは、そんなもの取り上げませんか、私の方が、いや助言しましたんですと言っていけばそれでいいですか。

○政府委員(高橋元君) 前回もお答えしたことでございますが、四十一条の三という規定は、税理士の社会的責任を明らかにする倫理に発していわば倫理に終わる規定であろうと思います。税理士に対する処分自体を目的とするということではございませんので、懲戒事案の取り扱いについては税理士さん、依頼者双方の地位を不当に損なうことのないように慎重にやっていくべきであるという、これは衆議院の段階での御決議であり、私どももさような運用をしたいと思います。

○片岡勝治君 

 ( 前略 )

 そういたしますと、つまりなぜそういうことをくどく申し上げますかと言えば、そうすれば、税理士さんの仕事は何かということがここでもはっきりしてくるわけですね。税理士さんの仕事はどういう仕事かと言えば、つまり税そのものは大部分が納税申告方式だということはいま答弁があった。納税申告方式というのは何かと言えば、主権者である国民がみずから自分の税額を決定していく、これが基本なんです。
 みずから自分の納めるべき税金を確定していく、これが申告方式の納税者の具体的な一つの権能になっているわけでありますから、税理士さんの仕事というのは、この納税者のみずから決定していく、みずから確定する税額、そういうものに対して援助をしていく。計算がむずかしければお手伝いいたしましょう、申告書を書くのがむずかしければかわりに書いてあげましょう、そういうことを、つまり納税者の権利を行使していく、そういうものをお手伝いするのが税理士さんの仕事だということが論理的に出てきますね、論理的に。税務署のお手伝いをするということではない、こういうことになりますね。非常に初歩的な質問ですけれども、これでいいですか。

○政府委員(高橋元君) 独立した公正な立場において適正な納税義務の実現を図るということが、税理士の使命として今回の改正法案の条文に入ってあるわけであります。そういう意味で、納税義務の適正な実現を図るために納税者を援助なさるということが、この税理士制度の一番大きな目的であろうと思います。

○片岡勝治君 そういう理屈張ったことじゃなくて、実体論として納税申告方式というのはこういう方式ですから、いま申し上げましたような方式だから、納税者がやる作業をお手伝いするのが税理士さんの仕事じゃないんですか。これはそういうことになるんでしょう。すぐあなたは公正な立場において、独立して、そういう言葉を申されますけれども、いままでのあなた方の答弁を見ると、くだけた点はいいんですよ、税務署べったりじゃないんだと、納税者べったりじゃないんだと、公正中立なんだと。さっき塚田先生の質問にもありましたね。それじゃ税理士さんはまさに神様だ、公正でないのは税務署と納税者だと、こういうことになるんじゃないですか、あなたの論理からすれば。べったり、べったりというのはもう何度も答弁しているんですよ。公正中立というのは何か、いや、税務署べったりじゃないんだ、納税者べったりじゃないんだと繰り返し答弁をされておりますね。
 つまり、そういうことからすれば、いまのような言い方もできるんじゃないですか。税務署の方もどうも公正でない、税務署も納税者も公正でない、本当に神様のような税理士さん、こういうことになるんですよね。そうじゃなくて、やっぱり納税者のいろんな仕事を手伝う、特に申告納税方式なんだからね。申告納税方式というのは、繰り返し申し上げましたように、納税者がみずから計算をしてみずから記載して持っていくんですから、その仕事を税理士さんが助けるということは当然じゃないですか。そうでないというんならこれは大変ですよ、そうでないというんなら。

○政府委員(高橋元君) 申告納税が本旨でございますから、申告納税義務者が適正な申告納税ができるようにお助けをすると、援助をするというのが税理士制度の本来のあり方であり税理士の使命であることは、いま仰せのとおりであろうというふうに考えます。

○片岡勝治君 私は、独立公正という言葉を使っておりますけれども、これはお役所言葉で、もうちょっといい言葉はないのかなあという、そういう疑いを持つわけですけれども、まあその言葉はひとつおいて、つまり納税者の、私は新しい憲法ができて新しい税制ができて、主権者たる国民にみずからこの税額を確定するそういう権能を与えた、これはすばらしいことだと思うんですよ。まさに革命的な納税方法だと思うんですね。税金と言えば、ふんだくられるという意識があった。かつて戦争時代はそういうことでわれわれは莫大な金を取られ、その金で鉄砲や大砲をつくり戦争をして、多くの親兄弟を殺された、そういう苦い経験をわれわれは持っているわけであります。
 しかし、戦後の税制というのはそうではない。自分で税金を計算しなさい、自発的に納税したらいいではないか、まさに大変な変革だろうと思うんです。そういう私は、この民主的な国民主権、主権在民の税制、こういった思想をさらに高めていくことが、これは一層国民の納税に対する理解を深めると思うんですよ。そういう思想を広めることが、より納税に対する協力体制ができ上がる、こういうことになると思うんですから、私はそういう点は胸を張って大いに説明したらいいんですよ、憲法に基づく新しい方式なんだと、こういうことでね。
 そこで、さっきべったり論が出たんだけれども、その次元の低い説明じゃなくて、あなたの言うとおり、税理士は主権者たる国民、納税者のいわば基本的な権利だ。みずから税金を計算し申告し納める、そういう国民に与えられた権能を税理士さんが助ける誇りある仕事なんだと。しかし、もし税理士さんがそういう意識、つまり国民主権、納税者は主権者だ、その主権者が行使する権利、そういうものに対して適切な援助もできない、間違って申告をしたということになりますれば、これは申告納税方式がそこで消滅をするんですよ。そうでしょう。
 それが原則じゃなくて、変則といいますか、納税者のいわゆる申告というものがそこで消滅をして税務署が一方的に賦課をする、そういう制度になっているわけですよね。そういう、この税理士というのは大変誇りある仕事だ、名誉ある仕事だ。違法なことを教えて税務署から調査されて重加算税なんか取られる、こういうことでは納税者の権利、納税者に与えられた納税額をみずから決定する権利というものを、税理士さんが間違えばその権利が行使できないではないか、こういうことになるわけでしょう。こういう考え方はどうですか、非常にすばらしいんじゃないですかね。

○政府委員(高橋元君) お話しのありますように、すべての国の納税というものが、正しい申告納税に終わって申告納税で全部の納税義務が完結をする、適正に実現される、これがもうベストであろうと思います。お話しがありますように、せっかく申告納税を原則としておりますのに、また更正等の賦課課税に戻る。調査等の、更正等の事項がありますとそうなりますので、そういうことがあってはならないという意味で、税理士さんのお仕事の非常に高い社会的な役割りというのを私どもは考えておりますし、そういうことを実現していかれるように諸般の制度の整備をいたしたいと考えております。

○片岡勝治君 大変くどいようですけれども、そういう点をやっぱりしかと確認をしていただきたいと思うんですよ。申告納税方式というのは主権在民、国民主権、その主権者たる納税者に与えられた一つの権能なんだ。権利というのはあなた方きらいな言葉のようですから、権能あるいは権益という言葉にいたしましょう。そういう国民、納税者に与えられた権利を税理士さんが助ける、これが税理士さんの仕事である。
 その助け方が下手で、違法な、法律に合ってないような申告をすれば、納税者の権利――申告権というのは没収されるわけですよ。今度は、税務署が一方的に納税者に対して課税をする賦課課税方式。その納税者の権利をよく守り得なかった税理士がいたとすれば、納税者は大変な損をするわけでありますから、やっぱり私は基本的な考え方としてはそういうふうに理解すべきではないかと思うんですが、やや哲学的な質問ですから、これは大臣に答弁をしてもらいましょうかね。

○国務大臣(竹下登君) 私、専門家でございませんが、片岡委員の話は私もよく理解のできるところであります。わかりやすく聞かせていただきました。
 で、結局、私もいろいろなことを考えてみて、一概に民主主義だから申告制度になったというふうな割り切り方を学説の上でどうすべきかということについてはにわかに決断できませんけれども、あのシャウプ勧告のときからずっと考えてみますと、日本の税制の場合、確かに納税という言葉にも当時抵抗したことがあるのです、納めるという言葉、あるいはましてや徴税とか。それで、その点がアメリカの場合まさにタックスペイヤー、税金の支払い者でございますか、そういう言葉になっておるし、それからセルフアセスメント、自己申告ということでございましょうが、何か近ごろアセスメント法案というものもございますが、自分で評価するというような言葉、これが非常にいわゆる主権者たる国民ということの実体に立った場合、民主的に聞こえる言葉だなあという感じを私も持った一人であります。
 しかし、税法上の言葉となりますと、やっぱりかなり窮屈なものになってまいりますが、基本的な流れとしては私は片岡委員の説に賛成です。

○片岡勝治君 ややくどく申し上げましておわかりにくかったと思いますけれども、いまの大臣の総括的なお答えも私も了承いたしました。ぜひそういう理解に立って、これからの税制問題あるいは税理士問題のより円滑な遂行をお願いしたいと思います。そういうことが、私は国民の理解を深めていくんじゃないか。税金というと、何かふんだくられるというような意識がまだまだ底流としてあると思うんですけれども、そういうことでなくて、いま言ったような論理といいますか、考え方に立てば、私はこの税に対する偏見というものも変わってくるような気がするわけであります。ぜひこれはそういった考え方に立って行っていただきたいと、このように考えるわけであります。
 次に、これも大変問題になっております助言義務の問題でありますが、これはそれぞれ委員の皆さんが重要な問題として質問をしてきたところであります。それだけに、大変問題点のある条文であることは恐らく皆さんもお考えだろうと思うわけであります。で、いま「不正に」という文言についての答弁がありましたが、これは意図的に、あるいは計画的にというか、納税者がみずからの意思を持って徴税を免れる、あるいは不正に還付を受ける、こういうことになっておりますね。もしそういうことがあれば、これはやっぱりそういうことは改めてもらわなければならぬと思うわけであります、一般論として。ただ、この場合に税理士さんがどういうふうにかかわり合いがあることが適当なのか、適正なのかという問題があります。不正というのは故意のある場合、だからついうっかりやっちゃった、あるいは思い違いがあったと、作為的でない場合はこれは適用されないわけですね。これは当然だろうと思う。
 一体、それでは故意のある場合というのは、これはだれが認定するんですか。税理士さんが主観として、あっ、これは意識的にやったなと感じた、そういうことなんですか。それとも何か具体的な立証、これなんか懲罰にかかるんですから、助言しなかった場合には。何かその懲罰にかかったときに立証できるそういう物的証拠を見て、ああやっぱりこれだ、これは意識的にやったなと、こういうふうに感じたとき、つまり抽象的に脳細胞が感じたときと、具体的なこういう証拠物件があって感じたときといろいろあると思うんですよ。これはどっちなんでしょうかね、両方ですか。

○政府委員(福田幸弘君) 不正にというのは、故意にということでございます。ですから、重過失、過失は入らないというふうに限定して解すべきであろうと思います。
 故意にということの今度は判断の問題、事実認定の御質問であろうと思います。この四十一条の三の後段のところで、仮装、隠蔽の事実というのがございます。ですからこれは、仮装、隠蔽の事実というのはまだ税を免れたという既遂にはなっていませんが、その仮装、隠蔽の事実ということを知った場合にはというのが後段にありますように、客観的な構成要件、客観的にだれが見てもこれは故意があるというふうに判断される場合を後段に書いてあることから見ましても、前段の故意は、いわゆる不正の中の故意は、その種の主観的判断の入らない、万人が見て客観的にこれは悪質な脱税であるという際に判断が行われる、そういうふうに解しまして、主観的な面が入らないように規定されておるわけであります。

○片岡勝治君 それから、そうしますと、ごく常識的に帳簿類ですね、証憑書類というんですか、そういう書類、そのほかあると思いますけれども、そういうもの、そういういわば俗に言う物的証拠ですね、そういうものがない限り、これはそういうものの判断からだれが見ても不正と思われる、こういう場合のみという理解でよろしゅうございますね。

○政府委員(福田幸弘君) おっしゃるとおりでございます。

○片岡勝治君 次に、これが問題になったときに、つまりあの税理士は助言してないらしいということが仮にあって、その人が一つの懲戒の対象になって審査をする場合に、これはどういうかっこうになるのか私もいろいろ想像したんですが、これは納税者がやっぱりそういう証拠物件を出すんですかね。

   〔理事細川護煕君退席、委員長着席〕

もしあなたが言うようにだれが見ても客観的に不正だ、そういうものがあって初めて助言義務というものが必要になってくるという御説明ですから、やっぱりこれは納税者がそういうものを出すことによって、あれは助言しなかったと、こういうことになるんですか。それで初めて懲戒の審査ですか、そういうものが始まるんですかね。

○政府委員(福田幸弘君) これは具体的ケースで御説明した方がいいかと思いますが、いまのような客観的な悪質な構成要件の場合に助言をするということは、それによって相手が是正すればこれで終わりでございます。あと、それを知りつつ継続した場合には、脱税相談ないしは不真正な申告書の作成、そっちの方になってしまいます。ですから、その場合には助言義務違反というよりはそれの競合犯といいますか、それを吸収いたしますところの脱税相談もしくは不真正な申告書の作成そのものの問題になってしまいまして、助言義務違反の問題は消えてしまいます。
 ですから、非常に抽象的に申しますと、非常に悪質な場合の、帳簿に改ざんがあるということを知って注意をしないでやめてしまったという非常に希有な場合しかございません。そういう場合しかございませんで、したがってこれ自体が懲戒処分を目的にしていないということはそこからもおわかりになるとおりで、懲戒を常に探し回りましても、そこは本当にいまのように、注意をしないで、しかもその税理士業もそこで退いたという場合で、これはその責めを負うという状態にございませんので、したがって、これは懲戒を目的にしてない是正を求めるだけの趣旨にある。もしそれを続けてやった場合は、別の条項の先ほどの脱税相談ないし不真正申告書作成の問題に入るというふうに、御理解いただけるかと思います。

○片岡勝治君 いやいや、助言義務、この条文についていろいろケースを考えて、たとえばいやそういう人じゃおれはちょっとあんたの会計を見るわけにはいかない、手伝うわけにはいかぬと拒否すればそれはだめなんですよね。そういう、たとえばいまお話しのように、それは脱税相談に入る、これは申告書を間違ったものに入るということで、ずっとこの条文の適用除外例をみんな出しちゃってみて、一体あと何が残るかといったときに、だって何にも残らなかったらこれを置く必要ないんですから、苦心惨たんしてあなた方これを残したんだから、一体どういうケースが助言義務が発生するのかということを私なりに、素人なものですから、あらゆるケースを考えて、仮にあったと、これは意識的にやったな、帳簿を見ればわかる、しかしおれは黙ってきたといったときに、これは助言義務違反になるわけです。相談じゃないんですよ。
 いろいろ税理士の仕事をやりながらこう見た、あっ、三年前に一千万円これはごまかした、わかった、三年前がいいのかどうかわかりませんが、時効なんというのもあるんでしょうけれども、仮にじゃ去年一千万円ごまかしたというのが帳簿でわかった。本当はここで助言しなきゃいけないんだけれども黙ってきたというときに、納税者があの税理士はおれに助言すべきところを助言しなかった、とんでもないやつだと、こういうことはこれはあり得ない。また税理士が、いや当然あのときにおれは助言すべきだった、いま深く反省した、税理士会に飛んで行って、実は私はあのとき助言すべきであったけれども、ついしなかった。深く反省して自白をした、これもちょっと考えられない。どういうケースなんだろうかなあと思うんですよ。だれがこれを言いつけるんですか。税理士と納税者の関係ですからね。

○政府委員(福田幸弘君) これは刑法規定ではございませんで、業法の中の、その前の方に三十何条ですか、品位、信用を保持するという規定もございます。これは非常に一般的に書いているわけです。その種の一連の問題の中に、この規定の性格があろうかと思うのです。要するに注意してもらってそこで是正される、先ほどの申告納税の趣旨はやはり本人が申告する、これは正しい納税をする、アメリカの場合も適正公平というのを常に裏打ちしているわけであります。ですから、そういうこれに似た規定があるわけでございまして、そこで注意をするということ自体に意味があって、違反の場合を追っかけてそれが懲戒にというふうに持っていく性格のものでない。この法律自体が、モラルに基づく法規範というところでとどめていただければよろしいと思うわけであります。
 したがって、具体的な場合というのは、ほとんど注意をして直されるということにこの規定の意味がある。それが違反されて懲戒になるという、そういうものとしては考えておりませんので、法律の構成としてもその延長線上には助言義務違反があり、不真正な申告書作成というふうに流れがフローチャートとしてはそっちの方にいってしまいます。法律的に一々考えれば、助言をしなかった、そしてそこで業務もやめたというときにこの助言義務違反がそのものとして成り立ちますけれども、それは懲戒処分の問題としては常識的には問題にならない性格だと思います。やろうと思えばできるかもしれません。しかし、これは懲戒審査会というものが今回設けられますから、そういう非常識な問題が議論されようとは思いません。だから、この規定は、申告納税の本質というところで正しい申告がなされるということをやはり裏打ちする社会的な期待の規定であるというふうに、御理解いただけばありがたいと思います。

○片岡勝治君 こういう条文がなければ私理解するんですよ、まあさっき言った第一条の趣旨等からしても。そうするとあれですか、あなたも具体的な事例を申し上げてもはっきりお答えにならない、どういう事例か。そうすると、これはもう全くの倫理規定である、そういう認識でいいんですか、本当に。だったら、そういうふうに直したらどうですか。これはやっぱりみんな一番心配――全部の税理士さんとは言わぬけれども、しかし、やっぱり税理士さんみんな心配しているんですよ。
 そうやって質問すると、いやこれは倫理規定だと、しかし条文を見ると、ぼくらは素人なんだけれども、やっぱり表現が大変おっかない表現でしょう、これは。ところが、こうやって質疑をしていると、いやそれはもう倫理規定だと、もう九分九厘九毛あなたは断定しているんですよね、その倫理規定だということを。じゃ、われわれはここでこれは倫理規定である、参議院の大蔵委員会はそういう確認をしたと、これでいいですか。よろしいと、こうはっきり言ってみたらどうですか。

○政府委員(福田幸弘君) いえ、法律というのはなかなか性格はいろいろあると思うのですよ。これは法規範であるということは、間違いないと思うのですね。モラルに基づく法規範である。で、懲戒ということに非常に問題を大きく議論されますけれども、これは一般的に法令に違反した場合はというこの税理士法の最後のくくりのところにあるそこに形式的にかかっておるわけであります。
 ですから、法規範である以上は、形式的には一般懲戒の対象という法形式はとりますけれども、繰り返しますように、モラルに基づく法規範ということ自体にこの法律の意味がありますので、その存在理由というものは特に申告納税下においては重要な規定である、こういうふうにお考えいただきたいということであります。

○片岡勝治君 まあこの条文を適用することはまずないと、こういうことですよね、ずばり言えば。あなたのいろいろ説明を素直に余り先入観なしに聞いてみると、ああこういう条文があるけれどもまあまあこれはもうまさに倫理規定で適用することはほとんどないんだというふうに――あっ、そこで首振っているな。違うんですか。――いやいや、もういいです、それは。
 もう一つそれに関連して、守秘義務というのが税理士さんにありますね。今度の改正案じゃないですよ。税理士さんにありますね。何条でしたかな、税理士さんがその業務で知り得た秘密は漏らしてはいけないと、これは弁護士さんもお医者さんも、そういった仕事をしている方々は、税務職員もそうですね、これは当然だろうと思うんです。あの片岡のうちの申告をお手伝いしたらあそこには相当額借金があるんだとか、こういうのをどんどん話されたんじゃちょっと困るしね。いや隠し金が一千万円ぐらいあったとか、そういうことは税理士さんが仕事の上で知ってもこれはべらべら人に話しちゃいけませんよと、これは当然です。そういうことがなければ、われわれ納税者は自由に税理士さんに相談に行けない。あの税理士さんに相談するとみんなそこらへ行って吹聴されるというようなことがあれば、これは納税者は相談に行かない。やっぱり公正な税理士業務をやるにはそういう守秘義務、納税者の秘密というものを、知られたくないことをある程度規制をしていく、これは当然だろうと思うんです。この助言義務とこの守秘義務はどういう関係になりますかね。

○政府委員(福田幸弘君) 税理士がその業務を遂行するに当たりまして、委嘱者の脱税等の事実を知ってその是正を行うよう委嘱者に助言したにもかかわらず助言が受け入れられなかった場合には、税理士としては一つは当該委嘱者に関する税理士業務を行わないことにする、あるいは引き続き当該委嘱者に関する税理士業務を継続するかのいずれかの対応に迫られます。まあ直すこと自体が目的であるということは申し上げましたけれども。まず、その委嘱者に関する税理士業務をやめる場合には、やめておりますけれども助言はいたしていません。委嘱者の脱税の事実をこれは知っておるわけですね。その事実を税務官公署を含む第三者に漏らすときは、守秘義務違反になると考えられます。要するに、これは外にしゃべるわけですから、これはもう現在の規定自体が、外に対してしゃべってはいけない。
 その次は、今度は中の話になってきます。税理士は委嘱者の脱税等の事実を知ったにかかわらず、さきのように引き続いて当該委嘱者について税理士業務を継続する場合には、守秘義務の問題としてではなく、これは納税者と税務官公署の問題になってきますから、従来ともこれは脱税相談等の問題と同じ問題でございますが、したがいまして、これは守秘義務の問題としてよりも、むしろ脱税の共犯あるいは脱税相談等の問題として処理すべき従来からの問題であるということで、守秘義務を、内部での問題ではなくして対外的な問題として考えた場合には、先ほどのような御説明になろうかと思います。

○片岡勝治君 共犯で一緒に脱税を認めたというのは全く異例な措置で、税理士さんがそんなことをやったらこれは大変な問題で、そういうものを前提にして私たちはこういった法律案を審議することはどうかと思うんです。それは中にはあると思いますよ、中にはあったと思う、過去にも。だけれども、そういうことは全く異例のことで、そういうことがあり得るということを予見して法律をつくるということはどうかと思いますが、まあそれはそれとして、この助言義務とこの守秘義務との関係を考えたときに、さっきの懲戒ともかかわるわけですよ。
 ですから、仮に審査会に行っていろいろ尋問をされた、しかし、Aという納税者はこれこれこうだったというようなことが、これは言えないでしょう、守秘義務で、もちろん。それからもう一つ、助言すべき税理士業務をやっていながらそういうことが発見された。つまり、脱税とか不当に還付されたそういうものが発見された。しかし、そのときには助言しなきゃいけないんだけれども、それはそれとして、そういった税務相談をしながら、いろいろわかったことをこれは税務署に言ったって、これは守秘義務の違反になるわけでしょう。そうでしょう、そういう秘密を。ちょっとはっきり答弁しなさい。守秘義務に抵触しますよ、これは。

○政府委員(高橋元君) さっき福田審議官から御答弁しましたように、助言をした、しかし相手が聞いてくれなかった、もう税理士としての関与をやめてしまったという場合、いまお尋ねはその場合であろうかと思いますが、そういう場合には当然守秘義務に含まれるわけであります。

○片岡勝治君 そういう守秘義務と助言義務との関係を見ても、これが適用されるというようなことはほとんどないと思うんですよ、これは。やっぱりさっき冒頭申し上げましたように、税理士業務を正常にやっていくには、やっぱりそういう守秘義務というものを税理士さんの権利として与えることが、むしろ納税というものをよりスムーズにやっていける。だから、守秘義務というこれを与えていると思うんです、いわば一つの権利ですから。そうじゃなくて、税理士さんが来た、私の家のこの財政がみんなわかっちゃった、ついうっかり脱税があった、すぐ税務署に告げ口されたなんといったのじゃこれは大変ですから、だれも税理士に相談に行かない。こういう税理士さんに対する一つの義務、あるいは秘密を他に漏らしてはならない、そういう義務を与えているわけでありますけれども、そういう義務を税理士さんに与えておりますからね。
 この助言義務、こういうものを与えて、それは罰するのが目的ではないと、あなた繰り返し繰り返し言うけれども、しかし、罰則適用という条項がある以上、これはわれわれとして、つまりこの法律の適用を受ける主権者たる国民の側から考えれば、やっぱりこの点ははっきり究明しておく必要があるんですよ、これ。ところがどうですか、これはちょっと答弁ができないんじゃないですか、との守秘義務と助言問題について。知り得たということ、仮に知り得た、知った、しかし、それを他に言うことはできないんですよ、これは。どうやってこれを審査会で裁判にかけるんですか。裁判所じゃないんですから、審査会でしょう、税理士さんが自分で言うはずがない、また言うことは許されないんですよ、これは守秘義務で。

○政府委員(高橋元君) これも先ほどの御答弁の繰り返しにあるいはなろうかと思いますが、脱税等の事実を知った、それについて助言をいたしまして、言うことが聞いてもらえなかった、しかしながら引き続いて関与をしておられるという場合には、これは守秘義務があるなしということを離れまして、脱税相談にあずかったということに相なります。したがって、法律の条文で申しますれば、四十五条の重い懲戒の対象になるということでございまして、その場合にはその守秘義務という問題とはまた別のことになろうというふうに思います。

○片岡勝治君 そうですか、そういうことになりますか。これは大変問題ですよ。脱税相談になるんですか、相談じゃないんですよ、たまたまやってたら気がついた、脱税していいですかなんて相談に応ずればそれは脱税になりますよ。しかし、いま言ったように、ことしの確定申告をやってくれと頼まれた、いろいろ計算した、ちょっと去年の帳簿、おととしの帳簿を参考に見せてくれ、あっ、あった、気がついた。気がついたけれども、その仕事は継続したときに脱税相談になるんですか、これは。

○政府委員(福田幸弘君) いまの場合は脱税相談というのは適当でなかったかと思うのですが……

○片岡勝治君 そうでしょう、取り消しなさいよ。

○政府委員(福田幸弘君) 二通りでございますから、脱税相談で引き続きやる場合、脱税相談的になっていく場合と、承知して助長するように指導する場合と、もう一つは、知ったままで申告書をつくっちゃう、これは四十五条にあります故意に真正の事実に反して書類をつくったということになりますから、こっちの方の、四十五条自体の問題になってくるということを申し上げております。
 守秘義務の場合は、いまのようなケースになりますと、四十五条自体をどう扱うかという従来と同じ問題でございます。これは納税者とまたその代理人と税務官署の間にありますから、守秘義務という問題よりはそれ自体の問題、もしくは質問検査権の問題の方に移ります。ただ、外に対してしゃべっていけないということは、先ほどから繰り返し申しておるとおりでございます。

○片岡勝治君 そうでしょう。ですから脱税相談というのはちゃんと法文にも具体的に書いてありますから、その助言義務から脱税相談に移行するというようなことを安易に適用されたら、それは大変ですよ。これは、もしそういうふうに助言義務というのが脱税相談なんかに自動的に行くような、そういう法律解釈があるとすれば、これはもう大変だ。いままあ答弁にあったから、先ほどの答弁はこれはひとつ訂正をしていただきたいと思うんですよ。
 こういうふうに考えてまいりますと、なかなかこれは大変な問題だなということを私も痛切に感じるわけでありまして、さらにいま言ったような問題につきましては、ひとつ、これはもっともっと究明をする必要があると思いますが、一応次の問題に移りたいと思います。
 大蔵当局、税務当局では、協力団体という言葉で青色申告会あるいは各種の商工会、あるいは全建総連等、各樺団体が戦後いろいろ納税問題について納税者の相談にあずかり、税務当局も適切な指導をしながら持ちつ持たれつ、この納税義務の遂行に当たってきた、こういうことになっているわけです。そういう点については、これまでも衆議院の段階における質問でも答弁をしておるわけであります。まあこの人たち、青色申告会等の皆さんも大変心配するのは、今度のこの法律ができると一体どうなるんだろうか、率直に言ってわれわれも納税行政についてずいぶん協力をしてきたんだけれども、この法律によって何かこれまでの運動、活動が制約されるんじゃないか、こういうことを心配をいたしております。
 しかし、これらの質問に対して一貫した答弁は、ある意味ではすっきりしているわけですね。この法律が通ってもそうした協力団体の、この改正によって、特に実体的な影響がない、この法律が成立いたしましても、そういった団体のこれまでの活動に何ら影響を及ぼすものではない、こういう答弁を各所でやっておりますが、これはそういうふうにこの参議院の大蔵委員会においても確認してよろしゅうございますね。あんまり尾ひれをつけないで答弁をしていただきたいと思います。

○政府委員(高橋元君) 先ほどの御答弁の中で私が事由に、脱税相談に当たると申し上げましたけれども、正確に申しますれば四十五条の懲戒の事由に当たるということでございますから、さように速記等も御訂正方御了承いただきたいと思います。
 それから、今回の税理士法の改正案の二条一項各号に掲げます税理士の業務の定義でございますが、これは改正前と改正後と実質的には何ら変更されていないということは、いまお話のあったとおりであります。

○片岡勝治君 さらにそれにつけ加えて、何ら影響がない、したがって、こういう指導をしてまいりたい、このように考えておりますということでありますから、この指導のやり方にもいろいろあると思うんですけれども、仮にこの法律案が成立をした暁には、やっぱりそういう点、指導していきたいという答弁もあったんですから、これはひとつ法律の制定後、各出先の方にその旨ぜひ通達を出していただきたいと思うんです。通達というと何か大げさみたいだけれども、どういう文書の種類か私は定かにわかりませんが、いずれにいたしましても、そういう通知、通達等を出すことが、私は青色申告会にしても商工会にしても全建総連にしても、ああやっぱり税務当局は、大蔵省はわれわれのことも考えてくれた、よしこれからも一生懸命に協力しましょう、こういうことになると思いますね、一つの指導通達が。これは大臣どうですか、これまで一生懸命にやってきたそういった団体に、こういう答弁をしていますから、これはひとつ大臣の方で、すかっとした答弁をしていただきたいですね。

○国務大臣(竹下登君) 結論から申しまして、その趣旨を明らかにしたいと思います。ただ、通達になじむ問題かどうか、私も必ずしも専門家ではございませんので、だから結論から言って、いまの御指摘の趣旨を徹底さしたい、こういうことで御了解をいただきたいと思います。

○片岡勝治君 はっきりお答えをいただきましたので、あえて私は固執をいたしません。徹底させるための適切な措置を期待をしたいと思います。
 これで私の質問を終わりたいと思います。

○丸谷金保君 いまの片岡委員の質問に対しましても、助言義務の問題になりますと非常に明確でない。答弁としては明確なんでしょうけれども、ちっともよくわからない。
 一体どういうのが具体的に助言義務違反になるのかという具体例がわからないという問題、一体どうしてこういうことになったか、実は私なりに考えてみました。そうして行き当たりましたのが五十四年の十二月七日の衆議院で福田政府委員が「試験制度をめぐって反対の意見が強くなったということからきたわけでありまして、」という次に「やはりこの業法を通すことが業界の中でまとまった意見でなければむずかしいということがわれわれの過去の経験であります。」、こう言っておりますね、これは三十八年、三十九年のときの税理士法案が廃案になったことを言っておるんですか、簡単に答えてください。

○政府委員(福田幸弘君) やはりその経験を踏まえて申し上げたのであります。

○丸谷金保君 それで、この経験があるので、今度税理士法改正を主張した場合に非常に慎重に構えたのが、今回の改正案が出されてきた経緯でなかろうか、こう思うんです。
 先日も申し上げましたように税理士法の改正案、税理士会からの要望、それとは百八十度異なった大蔵の厚い壁、これにぶつかってはね返されてきた、大蔵の意向が非常に生かされているわけです。このように過去の記録、資料等から、先日も申し上げましたように判断ができるわけでございます。
 それで、これはどうしてこういうことになったのか、特に助言義務でいまいろいろと業界があなた方の御希望と違ってまとまらなくなってきている。税理士法を通す非常に客観的な条件の中で、特に助言義務の問題が大きくクローズアップされてきているということの理由、実はいろんな記録を調べてみますと、たとえば昭和五十一年度八月に第六回正副会長会議、それから九月に第七回の全国の正副会長会議、それから十月に常務理事会、十一月に正副会長会議、同じく十一月東京で理事会、すべてに税理士法の問題がもうこの当時議題に上がっているんです、五十一年当時。ここには助言義務は全然出てこないんです。
 それで、先日も申し上げましたが、この中で九州でやったのがありますね、十一月九日。これへは福田審議官は国税局長として出たけれど、その種の会合の中で税理士法の問題で話したことはないと言っておりますが、これは水かけ論になりますし、この問題を詰めるのがきょうの論点でありませんけれども、一応経過として言いますと、常識的に九州の正副会長会議でも議題として税理士法改正がのっているんです。論議もされているんです、ずいぶん。それが晩になったら全然出ないということの方が不可思議だと思うんですよ。しかし、あなたはそれは出なかった。出たという人もいるんです、その話の中に。しかし、そういうことでこういう会があったけれど、助言義務は全くこういう中でのってきておりません。
 それと同時に、山本会長が誕生したとき、当時の読売新聞に、目に余る大阪国税局の選挙介入というふうなことで糾弾された、こういうことを皆さん御存じですね、当時そういう記事が出て具体的な例も出ておりましたね。どうですか、どなたか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 当時の新聞等にその件が出ていることは事実でございます。

○丸谷金保君 そうしてその人が、その後東京へ戻って税理士法改正担当の審議官になったんですね。そうして私のつくった山本会長、こう言っているんです。いいですか、それから福岡会合があった。そして、そのときには、もう次は福田審議官。福田審議官と四元専務とは海軍経理学校時代からの、じっこんの間柄かどうかは知りませんが、よく知っていて、その後は肝胆相照らす仲というふうに業界の人たちは言っております。そうすると、ここで答弁していたことを、まさに日本税理士会というものはきちっとそういう形の中でできたわけですよ、あなたたちとのぴったりときわめて親密な、私がつくった会長だと言うふうな人が税理士法の問題と取り組んでいるんですから。それもいいです、そこらを解明するとその問題だけで一日かかってしまいますから。
 問題は、助言義務がいつ出てきたのか。いままでの答弁では、それは税理士会の方からそういう希望があったということなんですが、私の調べた限り、どう考えても税理士会の方から積極的に助言義務をどうしても入れてくれというふうな希望もあったはずがないし、全国的に積み上げてきた要綱の中にもないし、それを幹部の何人かがそのことを言ったとすれば越権はなはだしい。会議もずっと調べて、積極的に日税連が幹部だけでそういうことをやれるような仕組みになった会合をやってきておりません。一体助言義務というのはどこらから入ったんですか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 助言義務のときに、ちょっと横から申しわけございませんが、先ほど私が答弁いたしました、新聞に出ていたのは事実でございますと申し上げました趣旨は、そういう抗議があったという趣旨が新聞に出ていた、その新聞に出ていた記事はございましたと、こういう趣旨でございます。念のため。

○丸谷金保君 それで結構でございます。

○政府委員(福田幸弘君) 福岡の件はきょうはやめまして、何しろ職権のない局長でございますので、そういう話がありようがございません。これは水かけ論というか、お答えする必要がないというふうに思います。
 問題は、具体的にいつごろからあらわれたかという問題に対してお答えします。これは中で、国税庁とわれわれとの間で、日税連の正式の交渉メンバーと相当の回数交渉をやってきたということは申し上げました。いつごろからあらわれたか、きょうはそこまで持ってきていませんが、先般申し上げましたように、五十四年の十二月にまとめました――これは議事をやりますので、その都度まとめていったのを最終的に整理したものが残っていましたので、四十一項目相当詳細に議論を基本要綱によって御説明になるのに対して、われわれはわれわれとしての御意見を申し上げるということで、これは国税庁の会議室で弁当はこちらが出しながらやった会議でございます。
 そういう会の中に、先ほど幾つか申し上げましたように、税理士会の方から、これは私は出ておりません。ちょうどこれは五十三年の年末の予算折衝時だったと思うのですが、主税局が出れなくて、庁が折衝した議事録を見ましたら、先方の発言でやはり中で、外国の立法例、アメリカの立法例、ドイツの方も別途独立性の検討をやったようですが、そういう外国立法例等の検討をやったというようなことも踏まえて、税理士の公共性とそれから独立性というような議論が出まして、税理士の倫理の規定として置くのがかえっていいのじゃないかと。それから、刑事罰の対象とするのはしかし困るということで、今後の方向としては倫理的規定としてそういう姿勢を示すということで、お話をお互いにしたということはございます。
 で、今度は税理士会の中の話になりますので、これは税理士会の方でも記録をこれはお持ちかと思うのですが、五十三年の五月の十一日に、これは税理士会の会長の方から正式の税理士法改正対策委員会の方に対しまして、その基本要綱にはない問題点についての検討を依頼しておられるわけであります。その中にいろんな西ドイツの税理士法の問題もありますが、依頼人の申告脱漏等に対する助言義務、アメリカ内国歳入法の規則による十の二十一というものに対しての検討を、これは五十三年五月十一日に依頼しておるわけです。
 それに対して、これは税理士会の中の話でありますが、正式の法対委員会というもので検討を加えた結果、九月の十四日に、これは税理士会連合会の方に報告されておるわけです。これにつきましては、いまの三十六条の「脱税相談等の禁止」のところでありますが、「脱税相談の禁止等」と、こういうふうに改めて、第二項を設けて、「税理士が税理士業務を行うにあたって、依頼者において租税に関する法令に従っていない事実があることを知った場合は、その事実についてすみやかに依頼者にその是正を助言しなければならない。ただし、本項違反」――の罰則は法令用語としては罰金、それから懲役でありますが、懲戒処分ではございません。この「本項違反は罰則の対象としないものとする。」というのを、内部の検討として行われたというふうに聞いております。
 こういう議論を経た結果がわれわれとの交渉の過程であらわれてきたと、そして一方において自民党の方で御検討が進んでおりまして、その中の検討項目には助言義務の規定は入っておりました。これについては、やはり社会的にいろんな批判がございます。いまの税理士制度について、こういう厳しい社会的な倫理規定があってもいいという意見が強くて、そこは丸印ということで法案化されるということになって、それが要綱に書かれまして、そしてそれが各界各方面で検討された、当然税理士会の方にもそれが行ったと思います。
 そういう形で、自民党の案にあります助言義務の規定、これは脱税相談と同じ懲戒処分をするという厳しい規定になっておりましたが、それに対しまして四月五日の決定がございまして、四月五日の理事会の決議であります。理事会は九十九名ということで、賛成が八十五名ということになっておりますが、この理事の割り振りは先ほど答弁いたしましたように、十四の各単位連合会から一名、あとはそれによって意思が反映されたという意味で大事だと思うのですが、その際に、議決は要綱について賛成を表しておられます。ただ、違反した場合に懲戒の処分とする、脱税相談と同じ懲戒の処分とすることは削ってほしいというふうな意思決定を行われております。これが入ってきましたいきさつでございます。

○丸谷金保君 いまの説明を聞いていましても、結局どこがどういうふうにしてこれを持ち上げたかということが明確でないですね。あちこちで何となく出てきたと、立法者の意思として出てきたのではないわけですね。

○政府委員(福田幸弘君) われわれは政府提案として検討を同時にやっておりますから、立法者としてもその法律自体の合理性という意味からは当然に検討の対象であったわけであります。両方からこれは出てきたというふうに、御理解願いたいと思います。

○丸谷金保君 その両方の、日税連というのは会長さんが新聞報道によるとそういう形でしょう。専務はあなたときわめて親しい古い仲間だ、そして同時に出てきたと言っても、これは同時というふうになかなか世間の常識では通らないんです。権力のある側の意向を反映して同時に出てきたと、これがこの助言義務問題のもめる一番大きな原因じゃないか。その証拠に、日本税理士政治連盟、御存じですね、日税連の裏表のような政治団体ですね。
 これも、五十四年の八月でさえも、まだこういうことを言っているんですよ。「今回の改正案では誰も予想しなかった例の「助言義務」なるものが出て、これまたおかしい事態になり、そのおかげで資格取得制度を初め、本来の問題点が影が薄くなった。「助言義務」問題は牽制球どころか、かくし球というところか。」こういうコラムが出ているんです、日税連の政治連盟の機関紙で。
 これはどういうことかと言うと、その当時受けとめた幹部の人たちは、まあいろいろあるけれど、助言義務の問題については牽制球だと、試験制度もある、これもある、いよいよになったらもめてきたときに助言義務はすっと引っ込めるための牽制球として五十三年度受け取っておったわけです。それがどうも牽制球どころか隠し球だったというふうにびっくりしたのは五十四年の八月と、ここに書いてあるんです。そして、それと相前後して、私たちが大変気になることは、いやこれは大蔵もそこまでの気はなかったけれど、ここまで来てみたら、司法当局からこれを抜いちゃいかぬという強い示唆があったんだというようなうわさも流れているんです。まさかそんなことはございませんでしょうね。

○政府委員(福田幸弘君) どういう趣旨の御質問かわかりませんが、政府提案で出す際には関係各省との間で協議を行います。その際に、論点になったということだけ聞いております。あとは内部の折衝だけでありますので……。

○丸谷金保君 非常にですから助言義務というのは、最初から何かこうもやっとした感じで、日税連内部の会長会議でもって決めた組織の決定だ決定だと言うけれど、下に落としてなかった。それで、この問題についてごく一部の反対だというようなことを日税連でも言っております。しかし、もはや一部の反対ではないんです、業界内部では。そして、いろんなこの法律をめぐる問題が出てきて世間も知るようになりました。余り気がつかなかったんですけれど、これは大変だということで騒ぎが大きくなって、たとえば全建総連という三十万の組織、北海道の農民連盟という八十万の組織、これらの人も反対だと、助言義務はおかしいと、われわれのいままでやってきた税務署と交渉して申告の取りまとめ、申告指導、そういうものが非常にこれで苦しくなるのではないか、こういう心配をしているんですが、先ほどの片岡委員に対する説明でその点についてはやや安心しました。
 いまの全建総連あるいは北海道農民連盟のやっておる従来の税務の指導、相談等については従前どおりでいいというふうに、確認をもう一度ひとつお願いいたしたいと思います。

○政府委員(伊豫田敏雄君) ただいまおっしゃいました全建総連等の税務に関する事務の内容を完全に私承知しておるわけでございませんものですから、したがいまして、従来正常な税関係の活動である限りにおきましていささかも今後変わることはない、税理士法上の扱いにおいて何ら変わるところがないということは、全く先ほど主税局長の方から御答弁申し上げたとおりでございます。

○丸谷金保君 正常でなければ、昭和二十年代からいままでどうしてさせていたんですか。正常なんでしょう、少なくても北海道農民連盟に関する限り。私たちもやっていたんですから、臨時税務代理士の資格をもらってやっていたんです。それがいまずっと連綿と続いているんです。正常であればなんて、いまさらどうして言わなきゃならないんです。

○政府委員(高橋元君) 先ほど申し上げましたように、税理士法二条一項の各号に掲げる税理士業務の範囲についての新しい御提案は、従来から二条で行っております税理士業務の範囲と全く実質的には変更がないというふうに御承知いただいて結構であります。

○丸谷金保君 そのことがやっぱり非常に一つの大きな混乱を招いている状況でございますので、それらについては従前どおりといういまのお答えで一つ安心したんですが、いままでの衆議院の中でこれが余りこうぴたっと、等というふうなことで漠然としていたので、大変心配をしている向きもあります。北海道からも心配していまここに来ているんですが、いいおみやげができたと思って喜んでいるようです。
 それで、それはいいんですが、ところが現在の税理士法上の問題で、臨税の場合は、少なくても地方公共団体とか、あるいはそれに準ずるような公益法人、大体地方公共団体の税務の職員が臨時税理士として申告取りまとめをやっております。で、農民組織などはそこまでの計算事務をやるわけだけれど、これはまあだれでもできるわけで、取りまとめをやっておるんです。それが今度助言義務の問題で実は大変心配なんです。
 たとえば、私たちそれで臨税をやって農村のを取りまとめて、計算して持ってきたやつを全部判こを押して税務署へまとめて持っていくんです、市町村が窓口になりまして。そうすると、その期間、臨税をやっている間は、この税理士法の助言義務罰則規定は該当しますか。

○政府委員(福田幸弘君) 該当します。ただ、罰則ではございません。罰則ではなくて、懲戒処分が形式的にかかってくる。罰則は懲役及び罰金でございます。

○丸谷金保君 そうしますと、助言義務違反の罰則の適用にはなるということですね。

○政府委員(福田幸弘君) これは懲戒処分は形式的に全部かかるわけですね、法令違反というところで最後に締めくくってありますから。法令違反のところは懲戒処分が問題になると思います。で、罰則というのは脱税相談みたいなときに、重い懲戒処分と同時に懲役及び罰金という罰則が別に規定されているわけです。
 で、御質問は、懲戒処分はという御質問でございますが、一般の助言義務違反の場合と同じことが、臨税はこの期間適用されるわけであります。

○丸谷金保君 臨税ですから、懲戒処分になりましてもこれはいいわけですよ――いいわけでもないけれど、別に飯の種でないんですから。
 それで、自治省おいでになっていると思うんですが、こういう懲戒処分を国の機関から受けた場合に、地公法によるところの身分の関係についてはどうなりますか。

○説明員(吉住俊彦君) 私、税務局の課長でございまして、公務員部の問題について所掌しているわけでございませんので、責任あるお答えがいたしかねますので、お許し願いたいと思います。

○丸谷金保君 地方税をやっておりますと、地方公務員の税務職員の罰則は一般職員よりちょっと高いですね。それはどうなんですか。いけませんか。

○政府委員(福田幸弘君) ちょっと訂正します。
 委員、ちょっと申しわけございませんでした。臨税については、助言義務の規定は準用されておりません。主なところだけを準用しておりまして、この関係は入っておりません。訂正いたします。

税理士試験が非常に難しい問題、国税職員の天下り問題

一般の税理士試験に合格するのが非常に難しくなっている点について、税務職員の特別試験や免除制度と比べて差別的なのではないか、という追及が続きます。関連して、国税職員の天下り問題にも波及します。政府答弁はそれらを否定します。

○丸谷金保君 それから、あわせて試験制度の問題についても、もう一袋資料を持って、いろいろお聞きしたいと思っておったのですが、一つだけ特にこの中でお願いしておきたいのは、ことしの一月十一日、「税理士に挑戦十回、挫折の首つり自殺」埼玉県入間市宮寺の山林内で若い男が首をつって死んだ。狭山署で調べたところ、身分証明書から同市内の〇〇さん、遺体の近くに、ことしも税理士試験はむずかしいと書かれた遺書があった。
 この方は、大学の経済学部を卒業して十回試験を受けた。経済学部学業ですよ、大学の。ちょっと名の通った大学、これがやっぱり受からない程度にむずかしいのですよ、一般試験というのは。そして今度ますます、いまわれわれは、その地方自治体に資格を付与するというようなことは、一定の評価をしました。しかしその反面、こういう一般試験の人たちに対する手当てをしないと、これはやっぱり不公平になるのですよ。決して悲観して自殺したのは、この人だけでなくて、私のところにも、これでますます一般試験がむずかしくなると、生きる望みを失ったというような、税理士さんのところで働いている若い事務員さんから手紙が来たり電話が来たりしております。こういう人たちに対しては、これからどういう配慮をしますか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) ただいまの新聞記事のお話は伺いまして承知はしておりましたが、非常に残念なことだと思っております。
 ただ、税理士試験は御承知のとおり一つの資格試験でございまして、そういう意味におきまして、一般試験が今回の法律の改正によって特にむずかしくなるというふうなことはわれわれといたしましても毛頭考えておりませんで、もちろん従来と、試験委員が税理士審査会に変わるかもしれませんけれども、その点につきましては、特に今回の法律の改正に基づいて狭き門をさらに狭くするというふうなことは全くないものと考えております。

○丸谷金保君 特別にむずかしくするつもりはないと。いまむずかしいんですよ、これをどうしてくれるかというんです。とてもむずかしいんですよ。私は、この税理士試験に試験問題を出しているある人から聞いたことがあるんです。これを全部受けたら、おれは受からないだろうな、問題の出題者からそういう話を聞いたことがあるんです。そんなにむずかしい試験になぜしておくんです。ここいら辺をちゃんとしなければ、非常に片手落ちになって憲法の平等の精神にもとる、憲法違反という大問題になるんです、これ。どうですか、いまむずかしいんです。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 憲法問題につきましては、今回の試験制度の改正にそれなりの理由があればその問題は特別にないのではないかと思いますが、おっしゃっていらっしゃるように、非常に現在の一般税理士の試験がむずかしいと言われることは事実かとも思いますが、しかし、科目別に受けることを現在の制度でも認めております。
 したがって、ただいま先生がおっしゃいましたこれを一緒に受けたらとてもと言われた趣旨と、科目別に一年ずつじっくり取っていただくという方法も残されておりますので、そういう点を全部含めまして、現在の一般税理士試験の水準というものは、決して税務相談あるいは税務代理をりっぱにこなしていただく上において過当にむずかしくなっているというふうなことは私考えておりません。

○丸谷金保君 どんなにむずかしいか、たとえば直税をずっと歩いてきて二十三年たって税理士になる、所得税なら所得税畑、一般試験のその科目だけ受けさせてごらんなさい、そうすればいかにむずかしいかわかりますから。私は地方自治体の方でも固定資産税の問題をずっとやってきたんだ、だから一番の得意は固定資産税だと。一般試験のこの科目を受けさせる、そうしてみれば、いかにむずかしいかわかるんですよ。どうですか。
 私たちは、その二十三年なり長年やってきた人たちを若い人と同じテーブルで全部受けろとは言いませんよ。記憶力が薄れているんですから、それは無理なんです。しかし、それにかわる経験を持っております。社会的な経験を持っておりますね。しかし、それでも一般試験がむずかしくないとおっしゃるんなら、一科目ずつ取れるという程度のことで言われるんなら、いまの二十三年たった人たちにでも一番得意の一科目だけ一般試験受けさせてみて、それでやってみたらどうですか、現在の特例試験のように何年たったら何点加算だというようなことでなくて。そうすれば、あなたたちにもいかにこの試験がむずかしいかわかる。あなたたちのようなエリートはやさしい試験と思うかしらぬけれど、そうじゃないんですよ。それどうですか、やってみるあれないですか。

○政府委員(高橋元君) これは、国税庁からもお答えしておりますように、税理士審査会の中に試験委員が置かれて新しい運営になるわけでございますが、従前からただいまお尋ねのような批判がございました。税制調査会でも十何年か前になりますけれども、試験制度についていろいろ検討を行いました中に、一般試験が一つは科目別合格制度をとっていること、もう一つは受験者数がきわめて多いことだと、その二つが原因でいたずらに暗記力に頼る試験になりやすい、税理士さんは実務能力を強く要請されておるのにかかわらず、その資格を判定する試験方法として必ずしも適当でない面も多いというような反省をしておられます。
 そこで、三十九年法では、廃案になりましたけれども、予備試験と本試験に分けるとか、できるだけ科目別じゃなくて総合結果判定だというような提案もなされたわけでございますけれども、その後情勢の推移がいろいろございまして、今回御提案を申し上げておる中では、一般試験については、税理士会の御意見も伺いまして、現在のままにしておこうということでございます。

 ただし、そういうことで、本来社会の期待にこたえて税理士としての納税者に十分なサービスができると、そういう税理士さんの資格を判定するための試験でございますから、いまの御意見も今後法の成立ができました後で、いろいろ国税庁から、また税理士審査会の試験委員になられる方々にもお伝えをして新しい基準を考えてもらうようにしたい、かように考えます。

○丸谷金保君 これは非常に受験者も多い、そのとおりなんです。受験者の大半が税理士事務所で働いている人たちだということも御存じですね、身分を見ればわかるんですから。やがて税理士にと。そして、しかもそういう中で試験制度でなく上がってきた経験の中で、やっぱり申告書も自分で書けないという経験者もおります。おるんですよ。たとえば――たとえばはやめましょう、おるということにだけね。いないと言うなら私、挙げますけれど、そういうその人たちの経験の中では、とてもじゃないけれど、所得の申告書は書けないなと思うような人もたくさんいるんですよ。ベテランの若い人を使うんです。――首をひねっているなら後で教えましょう。

○多田省吾君 税理士法の一部を改正する法律案につきまして、質問をいたします。
   〔委員長退席、理事細川護照君着席〕

 前回は、私は助言義務の規定の新設等につきまして質問いたしましたが、今回はまず試験制度について質問をしたいと思います。
 今回の改正案では、助言義務規定の新設とともに、この試験制度の改正というものが大きな問題になっていると思いますが、大蔵省としまして、この試験制度の改正につきまして、またそれをめぐる問題についてどういう見解を持っておられるのか、まずお伺いしておきたいと思います。

○政府委員(高橋元君) 税理士のお仕事が、税務官公署との税務折衝ということが中心でございますから、したがって、専門実務家としての業務でございますので、十分な実務税務事務の経験というものについても評価をし、税理士資格を与えるということが運営上実情にかなっておるというふうに、これはもう制度創設以来思っているわけであります。
 そこで、三十一年から特別税理士試験制度を採用して、途中三十六年の経過がございましたけれども、今日まで特別税理士試験制度を行ってまいりました。しかし、午前中にも御質疑がございましたように、こういう附則で行っております特別税理士試験制度でございますから、暫定措置であるから廃止をして本来の一般試験に一本化すべきだという御意見もございますし、げた履きの試験でございますから、そんな試験をやめてしまって別の制度を設けるべきだという御意見もありました。
 今回、税理士制度全般を見直す機会を得ましたので、特別税理士試験制度について検討を行いまして、この制度を廃止して一般税理士試験制度に一本化するとともに、一定の要件を備える者について会計学試験免除制度を採用するということにいたしたわけであります。従前よりも税務の実務経験についてより重い、より高い経験を要求することとし、かつ税理士審査会が指定する研修、これはかなり高度の研修というものを修了した者に対して会計学の科目を免除するというのが御提案の内容であります。税理士法の本旨に沿って、納税者の方々、依頼者の方々に対して正しい申告納税制度というものについての援助ができるような内容を持った税理士さんを育成したいということが、試験制度についての私どもの考えであります。

○多田省吾君 従来の特別試験にも、いろいろ問題があったと思います。今回は特別試験を廃止いたしまして、一定の税務職員の方に対しましては無試験で資格を取得できるようにしたわけでございますが、一般の試験を受けられる受験者にとりましてはこれがはなはだ不公平であると、こういう意見が強いのでございます。参考のために私は税理士の資格取得者とそれから登録者のおのおのにつきまして、一般試験者、それから特別試験者、さらに認定者の数をそれぞれお伺いしておきたいと思うんです。

○政府委員(伊豫田敏雄君) お答えいたします。
 昭和五十四年三月末の数字でございますが、資格取得者について申し上げますと、資格取得者のうち一般試験合格者は二万一千七百三十三名、同じく資格取得者のうち特別試験合格者は二万八千六百八十名、同じく資格認定者は四千十六名、その他の者が二万四千百名おりまして、合計で七万八千五百二十九名でございます。
 他方、この資格取得者のうち登録者を申し上げますと、一般試験合格者は一万七千四名、特別試験合格者が一万六百五名、資格認定者が二千百八十七名、その他の者が七千二百九十二名おりまして、合計三万七千八十八名、このようになっております。

○多田省吾君 ただいまの数は、昭和五十四年三月の数と言われましたが、私は計算の都合で、ほぼ同じだと思いますが、昨年の六月五日の衆議院大蔵委員会で発表された昭和五十三年十一月三十日のものから見ましても、資格取得者のうちで一般試験で取得した方は約二〇%、特別試験や認定者が残りの八〇%、そして取得者のうち登録している人が一般試験の人で約八〇%、特別試験その他の方で登録者数が約四〇%、今回もほぼ同じだと思いますが、したがって、現在登録されている方の数の内訳を見ますと、一般試験者の方の登録は約三五%で、残りが特別試験、その他の方でございます。こういった状況を見ますと、今度のまた試験制度の改正によりまして、客観的に見まして、ますます一般受験者の資格取得がむずかしくなる、厳しくなると、このように常識的に思えるのでございますけれども、大蔵省の見解はどうでございますか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 御承知のとおり、税理士試験は税理士となるに必要な学識及びその応用能力、こういうものを持っているかどうかということを判定するための資格試験でございます。したがいまして、あらかじめ全体の合格者数というものを決めるわけではなく、その資格を持つと認定できる者を合格とするわけでございまして、したがいまして、御指摘のように、一般試験受験者の資格取得が今般の制度改正により今後さらにむずかしくなるというふうなことはあり得ないと、このように考えております。

○多田省吾君 念のために、外国における税理士の試験制度の実態について、どのようになっているか、お伺いしておきたいと思います。

○政府委員(高橋元君) なかなかよくわかりません部分が多くて恐縮でございますが、アメリカの制度を申し上げますと、これは弁護士と公認会計士、これは税務の代理ができるわけであります。そのほかに登録代理人とでも訳しますか、そういう方々がおられまして、これは試験合格か、または内国歳入庁の元職員で、過去の勤務もしくは経験に基づいて大体五年以上勤務して、その期間を通じて内国歳入法の適用、解釈の職務に従事したという場合がこれに当たるようでございますが、その内国歳入庁が資格を付与した方、こういう方が登録代理人になられるようであります。残念ながら、員数はわかりません。
 それから、ドイツでございますが、これは税理士という制度がございまして、税理士試験に受かった方と、税務官庁に課長以上として十年以上勤められた、または専門官――わが国の税務署でいいますと、係長さんぐらいになるかと思うのですが、専門官として十五年以上勤められたという方が税理士さんになられるようであります。第二に、税務代理士という制度もございまして、これは実務六年をやりました後、税理士会のゼミナール試験に合格した方であります。そのほかに、弁護士及び公認会計士が税務代理をおやりになることは当然であります。ドイツで税理士業務を行っている方は約三万人、ただし、その中の八割が税務代理士、いま申し上げた二つ目の項目でありますが、それになっておるというふうに承知しております。
 それから、英仏でございますが、これはいわゆる税理士制度というものはございませんで、自由業務ということになっておるようであります。ただし、事柄の性格上、そのほとんどが公認会計士によって行われておるということが実情のようであります。

○多田省吾君 いまアメリカ及び西ドイツの例等をお伺いしましたけれども、単純な比較は問題があると思いますが、西ドイツの場合は調査官は全税務職員の八%、その調査官も高級職部門統括官、いま課長以上と言われましたけれども、それになってから十年以上の経験者である、さらに離職後三年間の開業禁止の規定などがある、このように聞いております。
 こういったこと等をにらみ合わせまして、わが国でも三年間の開業禁止の規定とか、こういった問題は何らか学ぶ点があると思われますけれども、どうお考えですか。

○政府委員(高橋元君) 先ほどもお断り申し上げましたように、外国の制度でございますので、細目とか実際の運用状況、はたまたそれぞれの国の置かれております税務事務の実態というものについては必ずしもつまびらかにできないわけであります。それからまた、外国の制度はそれぞれお国柄と申しますか、社会的、歴史的な沿革によってできておるものでございますから、われわれ、わが国の税理士制度を立案するに当たりましても外国の制度を検討して合理的なものを参考といたすという態度は堅持しておるつもりでございますが、そこはまた、日本の特殊性というものも考慮する必要もあろうかというふうに思うわけであります。
 税務職員に対する資格付与という問題をお取り上げいただきましたが、日本は試験科目の免除という形で行うわけでございます。それから、退職税務職員につきましても、現行法の規定で離職後一年間は離職前一年間に占めていた職に属すべき事件、これは実際に扱った事件というよりももっと広いわけでございますが、属すべき事件について税理士業務を行ってはならないということになっておりまして、わが国もお示しのように、三年ではございませんけれども制限を行っております。

○多田省吾君 一般的に税務署員から税理士になられた方が開業された場合、いわゆる天下り顧問税理士というようなことでよく問題になったことがございます。もちろん、税務署出身の方だからといって審査が甘くなるというようなことはよもやあるとは思いませんが、そうした疑いを緩和するためにも、私は西ドイツのように離職後三年間というようなことをある程度やはり参考にすべきではないか、このように思われます。また、現行法でも離職後一年間の空白期間が設けられておるわけでございますが、現在でも何かトラブルが起きているように聞いております。具体的にいままで、最近どんなトラブルがどのくらい起きているのか、お示しいただきたいと思います。

○政府委員(高橋元君) どういうトラブルがどういうふうに起きておるかは国税庁からのお答えでございますが、現在、お話もございましたように、そういうことがよもやあってはならないということは十分戒心をいたしておるつもりでございますけれども、税務署出身の税理士が退職時の地位、縁故を利用して一般の税理士の方々よりもいわば有利な立場に立って業務の不当な拡張を行うという弊害の発生を未然に防止いたしますために、いまお示しの離職後一年間は離職前一年間に占めていた職の所掌に属すべき事件について関与してはならないという制限を設けておるわけであります。
 国税庁それから大蔵省、私どもの方といたしましても、この規定の遵守については十分に励行させておるところでございます。法律上さらに制限を強化してはどうかということをしばしば検討したわけでございますけれども、税理士業務は納税義務の適正な実現という観点から、公共性の高い業務であることは申すまでもないことでございますが、また観点を変えてみますと、これも一つの営業であるということでございますので、現行法以上に厳しい業務制限をすることは、他の制度等との並びから見ても適当でないという考え方をとっておりまして、この点につきましては税制調査会でもいろいろ御検討をいただいた結果、そういう考え方を私ども持っておる次第でございます。

○多田省吾君 国税庁はいかがでしょうか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 立法問題は、主税局の方でただいまお答えいただきましたことで尽きると私も考えております。現在の執行上の実情につきましては、そういうことのないよう常時われわれとしても努力を重ねているところでございまして、通達を改め、あるいは会議等の機会をとらえまして、できるだけ管下五百有余の全税務署に対する趣旨の徹底というものを図っております。それなりに現在そういうことが比較的なく最近は動いている、このように信じている次第でございます。

○多田省吾君 昨日、人事院から、昭和五十四年のいわゆる天下り白書が発表をされました。その結果、史上最高の天下り件数になっているわけです。大蔵省がトップの六十九人です。うち、三六%に当たる二十五人が金融関連企業、また、国税の高級官僚の方も多数見当たりますけれども、国税関係者はどのようなケースで就職したのか、お伺いしたいと思います。
 その中には、やはり顧問税理士となっているケースもあると思いますが、どうですか。また、大蔵大臣は今回の天下り白書に対してどのような感想をお持ちか、お伺いします。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 昭和五十四年度に退職し営利企業へ就職した者で人事院承認を得たものの数は、二十二名になっております。ただ、どういう経緯で就職したかということにつきましては、個別にわたる問題でございますので、この席での御答弁は差し控えさせていただけたらと、このようにお願いしている次第でございます。

○政府委員(松下康雄君) 在職中に職務に精励をいたしました公務員が、その専門的な知識あるいは経験を退職後におきまして社会のいろいろな分野で活用をいたすということは、本人にとりましても、あるいは社会にとりましてもそれなりに意義のあることであろうと考えております。
 ただ、この場合に、民間企業との間のいわゆる癒着が起こるとか、あるいは行政の公正さがゆがめられるというようなことが仮にも起こるといたしますと、これは非常な問題でございますので、そのようなことがあってはならないのは当然であると考えております。これらの観点から、国家公務員法の規定に基づきまして、国の機関と密接な関係のある営利企業への就職につきましては、人事院がそれぞれ法律上の要件に従いまして厳正な審査を行っておられるところでございます。
 他省庁に比べまして大蔵省からの再就職者、特に金融機関に対するそれが多いという御指摘でございますけれども、大蔵省の職員につきましては、それぞれの職務の性質上、金融でありますとか予算、経理といいますような、企業で一般的に行われております専門的な知識、経験を持つ者が比較的多数になっております。このために、退職後におきまして各方面の企業から、これらの知識、能力を持つ人材を要請をされるという場合もいろいろあるわけでございまして、これらがいまの数に反映をしているのではなかろうかと思います。
 大蔵省から再就職いたしました職員数は五十三年中は四十六人、五十四年は四十七人でございましたが、これらの再就職の件数が多いだけ、それだけ私どもも日常の行政に対する公正な姿勢の確保にいよいよ努力をいたしまして、世の御批判を招かないように、今後とも努力をしてまいりたいと考えております。

○国務大臣(竹下登君) 大要は、ただいま官房長から申しましたとおりでございます。確かに高度の知識と経験を退職後社会のいろいろな分野に活用するということは、それなりに意義のあることであろうと私も考えますが、特に企業との癒着とか行政の公正がゆがめられるというようなことがあってはなりません。人事院が厳しい査定を行っておるゆえんもそこにあると思います。
 他省庁に比べて大蔵省が数が多いのじゃないかということでございますが、金融、予算、経理、そういう専門的知識を修得する職場にあっておるということが、それなりの要請を受ける一つの理由ではないかというふうに考えておるところであります。この問題につきましては、いろいろな私は議論を広範に将来はやるべき課題だと思うのであります。
 たとえば、人の名前を出しますと、岸信介先生が商工次官になられたときは、たしか三十九歳か三十八歳であったそうでございます。そのころから見ますと、大体ここのところ四十年間で約十五、六歳、役所の総合的な年齢が上がっております。これは平均寿命が延びたということもございますし、そして、今後いずれ定年制等の法案を御審議いただくわけでございますが、役所の機構の中に活力を入れると同時にその定年制の志向される方向というものを考えて、逐次やはり私は社会情勢に適応していくためには、いわば在職期間が延びていくという傾向になるであろうと思います。そういうこともすべて総合した中で、私は問題点としてこれから掘り下げてみたいというふうに思っておるところであります。

○多田省吾君 私は、この問題はいろいろな問題を含んでいると思います。短い時間ではやれませんが、やはりその中におきましても、いわゆる民間企業への天下りが官民癒着として好ましくない結果、忌まわしい結果がかなり出ておりますので、やはり国民の間から強い批判が起こっているものだ、このように思っております。私が先ほど申しましたように、大蔵省が昭和五十四年度におきましてトップの四十七件、また国税庁が二十二件、合わせて大蔵省関係としては六十九件と、このように出ているわけでございます。先ほどお尋ねしましたが、その中に特に国税庁関係者の中にいわゆる顧問税理士となっているケースがあるかどうか、もしわかっていればお答えいただきたいと思います。
 それからもう一点、これは昭和五十二年に大阪の国税局管区内で問題となった、いわゆる職員退職後の顧問税理士予約事件というものが、その後どう決着したのか、お伺いしたいと思います。これは昭和五十三年の七月五日参議院決算委員会におきましても、わが党の田代議員等が質問しているわけでございます。また、その後国税庁はこのような不祥事に対してどう対処しているのか、あわせて伺っておきたいと思います。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 先ほど申し上げました二十二件の中には、顧問税理士になっている者はございません。
 それから、ただいまお尋ねの大阪国税局の顧問税理士事件の調査結果についてでございますが、税務の職場におきましては人事の刷新と行政能率を維持向上していかなくちゃならぬということから、どうしても一定年齢に達した職員には退職勧奨を行っておりまして、その際、退職職員の退職後の生活安定を図る必要がある場合には顧問先のあっせんは確かに行っております。この場合、法令に抵触することのないよう配意することはもちろん、税務の公正な執行に疑惑が生ずることのないよう、十分配意をしてまいったところでございます。
 このような事情のもとで、ただいま御質問にございました昭和五十三年の夏、新聞等においてごらんになりましたような大阪国税局管内の退職職員の税理士開業のあり方及び顧問先のあっせんの仕方、こういう問題が取り上げられたわけでございますが、調査いたしました結果、違法または不当と認められるような事実は把握されておりません。
 ただ、われわれといたしましては、その後の国税庁のこういう問題に対する対応でございますが、やはりそういうふうに新聞等に取り上げて世の中の批判、これは率直に受けとめて反省すべきものは反省し、改めるべきものは改めてまいらなくちゃならぬと考えた次第でございます。
 そういう意味で、昨年八月、長官通達を発しておりまして、改めて顧問先のあっせん等に当たっては納税者等から批判や疑惑を招くことがないように一層留意するということを局署に指示してございます。また、一昨年十月には全国国税局総務部長会議を開催し、そのため特に改善策を申し合わせたところでございまして、その申し合わせた内容につきましては、顧問先のあっせんは国税局において責任を持って一元的に行っていくとか、あるいはあっせん業務は人事担当者に限って行っていくとか、あっせん件数及び金額を妥当な範囲内にしぼっていくとか、過度の重複関与等を生じないように考えていくとか、こういうふうないろいろのことを申し合わせて、自来実行に移しているところでございます。
 なお、こういうふうに慎重の上にも慎重を期してまいりまして、今後とも納税者の疑惑を招くことのないよう十分注意してまいりたい。また、そういうことのないよう、確信している次第でございます。

○多田省吾君 私は、くどいようですけれども、こういった問題の明朗化を図るためにも、現在では税理士法四十二条に「離職後一年間は、その離職前一年内に占めていた職の所掌に属すべき事件について税理士業務を行ってはならない。」という規定がございますけれども、西ドイツの例もございますように、三年間程度の空白期間とか、あるいは離職以前三年間に取り扱った件を扱わせないようにするとかすれば、納税者と事実上六年の空白ができるわけでございまして、自分が関係した問題との利害関係は実際なくなると思うんです。
 私は、まじめに税理士に就業されている税務署員の名誉のためにも、そういった配慮が今後必要ではないか、このように思いますけれども、改めてひとつ御見解を伺っておきたいと思います。

○政府委員(高橋元君) 先ほどドイツの事例で、退職後三年間は離職前三年以内に現実に扱った事件について関与できないという制度であるというお話がございました。これはドイツの税法の二十五条にそう書いてあるわけでありますが、三年間は離職直前三年以内に実体的に取り扱っていたと、こういうふうになっておりまして、税金を実際に計算し査定して決定したということが実体的ということの意味でございますから、したがってわが国が離職前一年、離職後一年という制約を設けておりますのは、これは管轄に属すべき事件でございますから、それよりも制限としては内容はきつい。
 ただ一年、一年ということで、三年、三年という立法例を参照すべきでないかというお示しでございますけれども、これは先ほどの繰り返しで恐縮でございますけれども、税務職員出身の税理士が退職時の地位、縁故を利用して不当な業務拡張を行うといった弊害の発生を未然に防止するということでございますので、したがって、先ほどもお答えいたしましたように、現行の離職後の業務制限につきまして、さらに運用上厳格を期してまいるということで対処したいということで、御理解をいただきたいと思います。

○多田省吾君 次に、試験制度の改正に絡みまして試験科目の問題でお伺いしますけれども、昨今、国税不服審判所への審査請求などがかなり多くなり、また、法的な議論をする場合が非常に多くなってきております。
 そこで、学者の中でも、将来の課題として租税法通論などを試験科目に加える等のことをしたらよいではないかという意見もありますけれども、大蔵省はどう考えておりますか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 確かにただいま委員御指摘のとおり、租税法通論的なものを試験科目に取り入れたらどうかという学者等の意見があることは承知しておりまして、確かにそれなりに有意義なことと考えております。しかしながら、ただいまの状態において一挙に試験科目を拡大する、確かに方向としては私はそのとおりだと思いますけれども、拡大するということにはやはりいろいろと問題もございまして、なお今後将来の課題といたしまして、税理士業務の状況や業界の意見等も十分参考といたしながら、その問題について検討を続けてまいりたい、このように考えております。

○多田省吾君 それから、さらに試験制度におきまして問題となっておるのは、長期間税務の職にあった人はエキスパートでありベテランでございますから、税法や税務について豊富な知識や経験を持たれた人たちであると思いますけれども、ただ、客観的に見まして、改正法案の第八条第一項第十号の「研修」というものはもう少し改善するとか、あるいは会計学の方は一般試験でテストするというような改善策がないものかどうか、その辺どう考えておられますか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) なお会計学の試験等について改善の余地はないかというお尋ねでございますが、改正案の第八条第一項第十号に掲げる「研修」につきましては、税理士審査会が税理士試験の会計学の合格者と同程度の学識を修得することができるものと認めた場合に指定を行うというふうに、非常にこの「研修」については重点を置いておりまして、そういうことによって税理士の水準というものを維持するということが考えられているわけでございます。
 また、税務職員につきましては、その仕事の性質上、会計学についての知識はいわば必須のものとして最低二十三年の長年の間にわたり実務経験の中で学んでいるものでございまして、改正案の規定は、税理士としての業務を遂行する上で十分その要件を満たすことができるものではないかと考えております。

○多田省吾君 国税職員の方は二十三年で全科目免除になるわけでありますけれども、そこで長い間法人税、所得税関係のお仕事をやってきた人はともかくといたしまして、中には徴収あるいは管理部門に携わってこられた方も含めて一律二十三年間であるとするのは、その方たちが税理士となった場合、問題があるのではないかと考えられますけれども、この点はどう考えておりますか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 確かに法人とか所得税担当の直税部門を専門にやってまいりました職員に比べまして、徴収、管理部門などの事務を行っている者はその間の差というものはおっしゃるように若干あるかもしれません。しかしながら、徴収、管理部門などの事務に現在従事しているという者であっても、過去においてたとえば所得税、法人税などの直税事務に従事したこともある者も相当多いという状況でございまして、また総務や徴収、管理などの事務も、他の事務を全く知らないではこれは行うことができません。
 そういう意味で、いわば税務職員は過去二十三年の間にわたりまして間接的ではございますけれども、職員の日常の事務全体の中にそれを通じてやはり会計というものを勉強せざるを得ない実情にあるのではないか、このように考えておりまして、したがって、今回の改正で経験年数を延ばしたり、あるいは研修の修了等を要件に加えたことをいろいろ考えあわせますと、これらについてやはり全科目免除をすることは、特に妥当を欠くものとは考えておりません。

○中村利次君 同じ課題に対しまして、引き続いて質問を続けてまいりたいのはやまやまですけれども、いつものとおり私の質問時間は非常に短うございますから、問題点を一点でも多く詰めておきたいと思いますが、試験制度につきましても先ほど御答弁にございましたが、五十四年の三月現在において、一般三万一千七百三十三、それからそのうちの登録している方が一万七千四、こういうのを全部読んでいますと時間がもったいないですから、先ほどの御答弁によって、試験によって税理士の資格をお持ちの方、それから登録をなすっていらっしゃる方、かなりこれは数に開きがございますけれども、これはどういうことでしょうか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) 全体的に申し上げれば、資格は持っているけれどもいま税理士業を開業する必要のない方でございまして、その必要がない理由につきましては、御老齢という問題もありましょうし、その他いろいろございますと思いますので、それについての統計はただいま手元にございません。

○中村利次君 でしょうね。

 そこで、税理士の一般試験というのが非常にむずかしいということが、いろいろもう議論をされてまいりました。それからもう一つは、この特別試験制度、特に今度は、二十三年では一定の研修をすれば無条件で税理士の資格が与えられるということになれば、一般試験がはみ出すんではないかという心配が指摘をされました。これは私どもよくそういうことを聞いたんです。ところが、先刻からの御答弁によりますと、そういうことはありませんと、税理士試験というのは税理士として適格かどうかという、そういう知識をテストするものだから、定員で何名を合格さしてそれ以外を落とすという、そういう性格のものじゃないからそれはもう全然関係ありませんという御答弁でありました。私は当然、一般試験というのはそうでなきゃならぬと思いますよ。
 だから、これはそうでない場合には問題になるんであって、そうであるというぐあいにこれは私どもも信用して、また、信用できなければこれは指摘をしてけしからぬということになるわけですから聞くわけですけれども、その場合、やっぱり年々歳々一般試験が大変むずかしくても合格者があって、八百人の方たちが税理士の資格を取られるわけですね。そのほかに、いろんなそういうものを経ないで資格を取られる方たちがいらっしゃる。
 私は、やっぱりそうなってきますと、問題になるのは過当競争が心配になるんではないかと。確かに、税理士にしても公認会計士にしても、戦後の非常に少ないころにはこれはもう忙しくて大変によき御商売であったと思うんですけれども、だんだんふえてきますと過当競争の心配が出てくると思いますけれども、こういう点について国税当局は大体の見通し、見当、大体いままでの実績からして、年間にこれくらいの人たちが税理士資格を取って登録をする人がこれくらいあって、過当競争の心配はそうないとか、あるいはこの年度ぐらいになると過当競争の心配がかなり強く出てくるとか、そういう点のお見通しをお持ちですか。

○政府委員(伊豫田敏雄君) なかなか将来の問題にわたりまして予測することはむずかしいと思うのでございますが、手元にございます資料によりますと、昭和四十八年から昭和五十三年までをとりまして、その間において税理士の数は一〇四%、四%ほど伸びております。これに対しまして、やはり法人数も大体百四、それから個人の納税者数も――失礼いたしました。いま申しましたのは対前年の数字でございまして、四十八年からは税理士の数は約二五%伸びております。それに対しまして法人数は二三%伸びておりまして、個人の数は逆に課税最低限の問題等ございまして、九四・五%に下がっていると、こういう状態でございます。
 一体税理士さんの一番主要な業務は個人なのか法人なのか、あるいは今後は他の税目にわたるのか、そこら辺について全く予想がつきませんが、やはり資格のある方は資格を持っていただくことを認めていくというのが税理士試験の本来の形かと思いますので、われわれとしてはその形に従って税理士試験というものを進めてまいりたいと考えておりますが、なお国税庁の業界に対する関心といたしまして、将来過当競争問題がどのような状態になったら起きるだろうかと、あるいはすでに起きているかどうかという問題を含めまして、十分関心を持って今後検討を続けさしていただきたいと、このように思っております。

○中村利次君 それは、関心を持って検討を続けていってもらうべきだと思います。ただし、いま御答弁の中にもございましたように、過当競争になりそうだからといって、一般試験を物すごくどうもパスできないようなものにして、そういう試験制度でコントロールをするというのは、これはまた大いに容易でないことでありますから、これは試験制度というのは、いわゆる既得権者を温存するようなことではなくて、法のもとにやっぱり平等であるという、そういう憲法を生かしながら、なお慎重にそういう点についての検討を進めていかれることを要望したいと思います。

まとめ

議事録が話し言葉であり、前後の文脈を正確に把握できるように引用したため、記事が非常に長くなりました。項ごとに要約を記載しましたが、全体をまとめると、この昭和55年の改正では、税理士への締め付けが厳しくなるのではという懸念から反対が多くあったこと、もう一つは、特別試験廃止という大きな転換があったこと、でしょう。特に昭和31年以来延長が繰り返されてきた特別試験が、この年に廃止に至った大きな原因が、やはり、昭和54年判決の違憲国賠訴訟があり、看過できない不平等だと国民的注目を集めたことにあるでしょう。本文中でも昭和39年の試験制度改正案が流れたことに触れていますが、特に業界として一つのまとまった見解を陳情できるか否かは、国会での法成立に大きく影響するようです。今再び、試験制度改正に向けた議論を税理士業界から起こしていくべきだと考えます。