「税理士試験採点前答案」不開示決定に対する審査請求を行いました
下記の記事で行った開示請求に対し、2月に国税庁から決定通知書が届いていました。私が現在までに3件行っている開示請求の2件目です。これに対する審査請求書を提出しましたので公開します。審査請求を行った後で、審査会では他2件の審議と併合されるものと想定しています。
目次
決定通知書
注目すべきは、不開示としたその理由ですが、「保有個人情報を保有していない」というものでした。とんちみたいな言い回しですが(笑)、「保有個人情報」というのは条文上の用語です。「採点前解答用紙」は既に存在しないので開示できない、ということのようです。
国税庁の決定に対する対応
「「採点前解答用紙」は「保有していない」」という国税庁の返答に対するこちらの対応としては、一つには、簡単です。「保有していない」というならば、確実に「保有している」時期に行えばいい。
というわけで、「今年(平成29年)の本試験を受けたその日に新たな開示請求をします。」そうすれば、「採点前解答用紙」が確実に存在しますので今度は「保有していない」という理由は使えないでしょう。
と、考えてこの件は放置でいいかな、と思っていたのですが、、、審査会の裁決事例等を調べているうちに、私、気づいてしまいました。他にもやり方があると。どういうことか、ご説明しましょう。それは審査請求書の「理由」に書きましたので、見て頂ければわかります。それでは、ご覧ください。
審査請求書
審査請求書1枚目は省略。
請求の理由
本件審査請求は、審査請求人が「平成28年度第66回税理士試験(相続税法)における本人の採点前解答用紙」の開示を求めたのに対し、処分庁が「開示請求に係る保有個人情報を保有していないため、不開示とした。」という処分を下したものに対するものである。
決定通知書に記載された理由では、これ以上の詳しい説明がなされていないため、保有していないこととなった理由及び経緯が不明である。しかし、審査請求人が別途行った「採点済み解答用紙」の開示請求においては、当該行政文書が部分開示されたことから、「当該行政文書(採点前解答用紙)を処分庁が破棄したことにより保有していない」のではなく、「当該行政文書(採点前解答用紙)に試験委員が採点等の書き込みを行ったことにより当該行政文書(採点前解答用紙)が物理的に存在しなくなったことから保有していない」としたものである、と理解する。
この前提によれば、既に存在しないものは開示できないという理屈は納得せざるを得ないものである。しかし、審査請求人は、本件保有個人情報が依然として存在しているのではないかと考えている。
ここで、平成29年3月24日答申(平成28年度(行個)答申第211号及び同第212号)を参照する。当該事件は、司法試験を受験した当該審査請求人が本人の答案用紙の開示を求めたものであるが、この審議において、答案用紙とは別に、答案の画像データが存在したことが確認されている。この画像データは、「法務省が業者に委託作成させ、その成果物として、当該試験の実施記録として同省において保存していた」ものであり、「受験した司法試験の答案用紙に本人が記載した解答であって、当該解答に対する配点・減点などの採点情報や、採点を行った考査委員によるコメントなどの書き込み等は記録されていないことが認められる。」とある。この画像データが、開示請求の対象となる保有個人情報である旨も認定されている。
税理士試験においても、司法試験と同様に、答案の画像データが、記録又はバックアップの目的として作成されているのではないかと、審査請求人は思料する。答案用紙は全国の試験会場から回収された後、採点を委託された外部の試験委員に渡される。答案は代替の効かない唯一のものであり、紛失は絶対にあってはならないが、万が一のために処分庁が回収した時点で予めコピーを取っていることが考えられる。また、採点は、全受験者の答案の統一的な配点水準を保つ必要性から、一部は複数回行っていることが想定され、答案の原本以外にそのものが存在しないと考えるのは不自然である。
よって、審査請求人は、上記の前提を基に、原処分を取り消し、保有個人情報の全部開示をするよう求める。
ここで処分庁が、上記前提が事実と異なるというのであれば、「保有個人情報を保有していない」とした理由及び経緯について詳細に説明するよう求める。単に保有していない、というだけではなく、保有していなくても答案の採点等の試験実施事務を適正に行うことができる合理的な理由があることを根拠とともに示されたい。
以上です。