廣升健生税理士の対談動画「修了生に聴いてみた大学院免除の話」がおすすめ
税理士の廣升健生先生がYouTubeで公開している動画、「税理士試験対談第2弾「修了生に聴いてみた大学院免除の話」」を拝見し、これは税理士受験生は見るべきと思いましたのでご紹介します。動画では、廣升先生と4名の大学院を修了した方が、税理士試験免除の大学院と税理士試験について経験談を語っています。今、税理士試験を受けていて大学院を検討している方、大学院に行く気はないけどどんなものか知っておきたいという方もご覧になるといいと思います。
動画の見どころ
この動画、全編を見ると1時間26分と長いので、本試験直前期の1分1秒が惜しい今、見るべきではないかもしれません。そう思われた方は「後で見る」リストにでも入れておかれるといいと思います。しかし、せっかくこの記事をご覧になったのでしたら、私がこの動画の中で、特に傾聴すべきと思ったポイントを2点紹介しますので、ここの数分だけでも是非ご覧になって頂きたいと思います。
まず一つ目のポイントがこちらです。
13. 五科目合格にこだわる必要がない理由 (1:06:20)
(下の動画を再生すると該当箇所から始まります。)
廣升先生はここで次のようなことを仰っています。
「税理士試験の合格基準は時代錯誤。うん十年前の電卓のないような時代に正確な計算能力を問うという頃から基本的に問題の傾向が変わっていない。税法の解釈をするというような能力は問われていない。」
「合格率10%という試験を突破する方は確かに優秀な人なんだけど、その優秀な人が下積みとして10年費やすのは機会損失。」
「苦行でしかない試験は受けるべきではなく、その時間で大学院で違う勉強をした方がいいと思う。」
「税理士業界が時代に遅れている根底には、税理士試験制度があるのではないか。5年10年と苦行の試験を受けるうちに思考停止してしまう。」
「試験に費やしてきた自分を肯定したいから、物事を変えたくない、新しいものを取り入れることに抵抗がある人になってしまうのでは。」
この部分に私は甚く共感を覚えました。
廣升先生は、5科目試験合格で税理士になられているので、このようなラディカルな意見をお持ちとは意外で驚きました。予備校講師の経験もおありで試験問題を研究されているので本質を捉えた見解だと思います。
私が、大学院の入学を決めた時に書いた以下の記事の最後のパラグラフで「税理士試験の勉強は無駄が多い」としているのですが、同じ考えをお持ちだと思いました。
2つ目のポイントは以下です。
7. 大学院の情報が出てこない理由 (27:14)
これも、試験のせいで税理士業界の新陳代謝が滞っているから古い考えがいつまでも支配的なことが影響しているのではないか、と思いました。
大学院に対する意識
動画では4名の方がそれぞれ自分の大学院について語っておられましたが、大学院の特徴もそれぞれですし、大学院に対するスタンスも異なっていると感じました。
大学院は抜け道かというような話もありました。院に行くことをどこか後ろめたいように思っていらっしゃる方がいるようなのですが、本人の捉え方次第だと思います。試験も院もどちらも正規のルートですから、何も問題ありません。
よく税理士試験を、マラソンのようだと例えていう話がありますが、最近私は、「院がマラソン、試験は障害物競走」ではないかと思います。その心は、院は一歩一歩進めていけば確実にゴールが近づいてきます。ペース配分もできます。試験は何があるか、ゴールがどこにあるかもわからないし、距離が伸びる(予期せずもう1年という)ことだってあるんですから。
私は大学院はとても有意義だと思って過ごしています。もちろん大変で行くのがしんどいとも思うときもあるのですが、大学院で学ぶこと自体が楽しいです。私の大学院についての話は、また時期が来たらお話させて頂こうと思います。それでは。
P.S.
blogにコメント多数頂いておりますが承認までしばしお待ちください。
税理士試験の合格まで何年かかるのか?(開示請求により入手した統計を初公開)
税理士試験は公式に公開されている情報が少なく、不透明な点が多い試験です。私、Markは、そのことを問題視し、国税庁に対し開示請求を行い、閉ざされた闇にメスを入れる試みを行ってきました。今年(第68回)の試験から、受験者に点数が公表されるようになったのも、この成果だと思っています。
税理士試験は合格までとかく年数のかかる試験ですので、実際のところどれくらいかかるのか、多くの受験生が知りたいところだと思います。これまで税理士会の行ったアンケート調査による数字を私も主張の中で使用してきましたが、国税庁はより正確なデータを持っているはずだと睨んできました。国税庁が税理士試験の運営や成績管理のために使用している「税理士試験システム」には、公表されていないデータが保存されていることが開示請求により判明し、最近になって私の下に大量のデータが届いたところです。これらは順次、このblogで分析・公開していく予定です。
今回は、史上初めて開示された合格年数の統計を分析しわかったことを、プレゼンテーション形式でお見せします。どこの予備校も持っていない正確な情報をここで独占公開します。
- 開示請求により史上初公開!本物の税理士試験受験者・点数分布表 - Markの資格Hack (税理士試験)
- 今年の税理士試験は得点を開示すると発表 - Markの資格Hack (税理士試験)
- 税理士試験・過去問題のPDFダウンロードサービス - Markの資格Hack (税理士試験)
続きを読む目次
- 税理士試験の合格まで何年かかるのか?
- 税理士試験はこのままではいけない
判例評釈 最大判S60.3.27(大嶋訴訟、サラリーマン税金訴訟)「租税とは何か」
租税訴訟の中でも最も有名な部類に入る大嶋訴訟(大島と表記するものもあり)。ゼミで判例評釈を書きましたので、blogにも載せておきます。『租税判例百選』でも、一番最初に4ページとって金子宏教授が評釈を書いておられます。元はと言えば昭和39年分の所得税について争っていたものですが、最高裁で判決が出るまでに20年もかかっています。ゼミの教授に聞いたところによれば、当時はマスコミでとてもセンセーショナルに扱われ、ワイドショー的な番組で「サラリーマンの税金は不公平だ」と連日騒がれたそうです(その中には、自営業者は私的な出費を経費で使い放題という的外れな論調もあったようですが)。判決の中で「税金とは何ぞや」という根本が論じられておりますので、必見です。
続きを読む目次
- 判例評釈
- 1 事実
- 1-1 事件番号・裁判の経緯
- 1-2 概要
- 1-3 原告の主張
- 1-4 争点
- 1-5 参照条文
- 2 裁判所の判断
- 2-1 判決及び法廷意見
- 2-2 伊藤正巳裁判官の補足意見
- 2-3 谷口正孝裁判官の補足意見
- 2-4 島谷六郎裁判官の補足意見
- 2-5 法廷意見の傍論的部分(租税の機能について)
- 3 評釈
- 3-1 概要
- 3-2 先例としての評価・影響
- 4 参考文献
- 教授の解説
税理士試験免除の大学院を特定支出控除の対象外とする国税庁解釈はおかしい
「給与所得者の特定支出控除」(所法57の2)という制度があります。改正で平成25年分から、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も含まれることになりました。この制度について国税庁が質疑応答を公表していますが、そこで示されている「税理士試験一部科目免除のための大学院の費用が特定支出に含まれない」とする法令解釈について疑問があります。
給与所得者の特定支出控除(所法57の2)の対象として、税理士試験免除の大学院の費用は含まれない旨の国税庁解釈。
— Mark / まあく (@mark_temper) June 24, 2018
これおかしいねー。法律にそんな要件は書いてない。 pic.twitter.com/JXhLwWgQJ0
続きを読む目次
- 「 給与所得者の特定支出控除」制度の概要
- 国税庁解釈「税理士試験免除のための大学院は特定支出とならない」
- 法令にはそんな要件は書いていない
- 研修費としてなら特定支出に該当するか
- 速やかな解釈見直しを要望します
『税務弘報』7月号 増田英敏教授 税理士試験の問題点と大学院についての意見
『税務弘報』2018年7月号の増田英敏教授の連載で、税理士試験の問題点と大学院について取り上げられておりますので、ご紹介します。税理士試験の問題の傾向については、私も当blogで批判を展開してきており、このコラムにも強く首肯するものです。こうした有識者の見解が積み上がっていって試験改革に結びついて欲しいものです。
増田英敏教授が『税務弘報』2018年7月号に、税理士試験と大学院について書いてるんですが、この意見は私が主張してきたことと軌を一にしており、全面的に賛同します。
— Mark / まあく (@mark_temper) 2018年6月14日
全部載せると著作権的にあれなんで一部抜粋しておきます。 pic.twitter.com/jM3ZvLRqJH
(前略)
条文や計算方法を暗記しなければ合格できないという現行の税理士試験のあり方には大きな疑問を感じている。専門学校に通い税法の条文と通達を丸暗記しなければ合格できないという試験問題の内容は、税理士に実務上求められる能力と大きな乖離があるといえよう。(中略)
税理士には税法の解釈・適用能力が求められているにもかかわらず、法的な判断能力(リーガルマインド)を錬成する教育を受ける機会がきわめて限られているという問題に直面している。この問題を解決する1つの方法が、大学院進学であるといえよう。
(中略)
大学院進学の目的を税理士試験の科目免除のための便法と捉えるのではなく、むしろプロフェッションとしての能力の涵養にあると再確認すべきである。
『税務弘報』2018年7月号 p.80
増田教授は、国税庁で税理士試験免除の論文審査担当に任命された経験もお持ちです。大学院を単なる試験の短絡ルートでなく、そこで学ぶことに意義があるというお考えにも、私は賛同します。
全文を読まれたい方は、本紙を購入してご覧ください。
中央経済社グループパブリッシング ( 2018-06-05 )
私の大学院生活も、課題が増えてきて忙しく過ごしています。
大学院で読むべき本がどんどん増えてくし、課題も間に合ってなくてとにかく時間が足りない。ADHD的先送り癖のせいも多分にあるんだけど、持ち歩いてるPCでレポートを書いて、ゼミが始まる1分前に印刷して持ってくようなギリギリの感じ。
— Mark / まあく (@mark_temper) June 14, 2018
というわけでblogとか更新する暇がない。 pic.twitter.com/2jXSTHshIo
判例の勉強してると、税法規定を逐条的にやっていきたいし、憲法や民法からちゃんと勉強したい気持ちが強くなってくる。このペースで行ったら税法をマスターするのは何年先になるんだって気がしないでもなくて、税理士実務を身につける必要性を考えると悩ましい。
— Mark / まあく (@mark_temper) June 14, 2018