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試験問題の審議はこんなもの 第5回国税審議会(平成16年)議事録から興味深い議事を

国税審議会とは

国税庁内に国税審議会というものがあります。委員は20名ほどおり、大学教授、ジャーナリスト、財界人などの有識者で構成されており、日税連の役員も2名入っています。国税審議会の中にはさらに、国税審査分科会、酒類分科会、税理士分科会があります。国税庁サイト内に議事録が公開されていますが、各分科会からの報告が大体年一度、春頃に開かれているようです。この国税審議会では、委員の他、国税庁から長官以下、次長、審議官、部長、課長、国税不服審判所所長が出席して報告を行います。

目次


ご存知のように税理士試験を実施するのはこの国税審議会で、税理士受験者には合格通知の発送元としてもお馴染みです。国税審議会の中の税理士分科会、こちらは通例年5回ほど開かれており、税理士試験試験問題の審議、結果報告、試験免除の認定、その他税理士の懲戒処分の審議も行っています。


第5回国税審議会(平成16年)議事録

議事録を見ておりましたらその中で、古いですが、平成16年に行われた第5回国税審議会議事録に税理士試験に関する興味深い記述を見つけましたのでメモとして残しておきます。

辻山委員
 辻山でございます。税理士分科会は昨年1年間で計4回会議を開催いたしました。お手もとの資料の2の、同じく税理士分科会というところを御覧いただきたいと思いますけれども、まず、昨年6月4日の分科会におきまして、分科会長の互選をさせていただき、引き続き私が分科会長をお引き受けさせていただくことになりました。また、分科会長代理には小川是委員、本日御出席でございますけれども、指名いたしました。
 次に、昨年の分科会における審議事項につきましてでございますが、第6回から第9回というところでございます。このうち、まず税理士試験関係でございますが、6月4日の分科会におきまして、8月初旬に実施いたしました平成15年度の税理士試験の試験問題の審議をいたしました。それから、試験の実施について検討をいたしました。
 12月12日の分科会におきましては、平成15年度の税理士試験の実施結果につきまして審議いたしました。そして平成14年度の指定研修の実施結果、平成16年度の税理士試験の実施に向けての試験委員の人選、日程、それから税理士試験の免除申請について審議をいたしました。なお、税理士試験の合格者は、合格発表日であります昨年12月16日に官報公告をしております。

第5回 国税審議会 議事録(2)|審議会・研究会等|国税庁

税理士試験の試験問題の審議はこんなもの

この平成15年6月4日に開催された第6回税理士分科会ですが、その内容がこちら。

14時~16時40分

1 分科会長の互選

2 平成15年度(第53回)税理士試験の試験問題の審議

3 税理士法第7条第2項又は第3項に規定する認定

各分科会の活動状況の報告|第5回 国税審議会 説明資料 目次|国税庁

2時間40分の中のその一部で、11科目の試験問題の審議と試験免除の認定もやっています。会長の選出があって、たぶん適当に挨拶などもあるんでしょう。3番目の「税理士法第7条第2項又は第3項に規定する認定」はいわゆる院免除のことです。これに出席しているのは税理士分科会の委員が5名と、国税庁人事課の職員です。この委員というのは試験委員でなく、国税審議会の委員ですから、問題の内容についておそらく詳細を理解できるとも思えません。内容に関する質疑応答が活発に行われているとは期待できません。パラパラめくって「ふーん、こんな感じなのね」といったところじゃないでしょうか。国税審議会で行われる試験問題の審議はこれが唯一です。

各年見ても毎年こんなものです。決まり切った「各議題について審議がなされ、原案どおり決定が行われた。」の文句で締められています。審議会に出された時には試験委員の手を離れていて、ここで承認されて、そのまま印刷に回されるのでしょう。私が署名の要望で言っている、「試験委員の作成した問題がノーチェックで試験に出題されている」ということの根拠はこれです。

これについては、また別の記事で掘り下げます。今日は別のポイントに注目。


試験の合格率について

平成15年の簿財の合格率が20%越えだったことについて突っ込んだ質問がありました。

森委員
 今、この時点で質問させていただくのが適当かどうか分かりませんけれども、実は税理士試験の結果ですけれど、あちこちで私はよく聞くのですけれども、聞かれるのですけれども、今年の15年度の税理士試験ですけれども、科目別の合格率の問題ですけれど、簿記と財表がものすごい高いのですね、従来にない。ほかの税法については、従来どおりの合格率なのですけれども、簿記、財表に対しては20%を超えているということですね。これは非常に今までかつてないことなのですね。私は覚えていますけれども、私が受けたときですけれども、確か財務諸表が、これは昭和33年ぐらいですけれど、25%ぐらいいったのですね。これは驚異的な数字だったのですけれども。恐らくそれまでずっとなかったのですけれど、今年が簿記、財表とも20%を超えたということは、ちょっと今まで例がないわけなのですけれども、この辺について何か背景があったのかどうかということなのです。この辺がよく聞かれますので、偶然かどうか知りませんけれども、何か意図があるのかないのか。ちょっとあればお伺いしたいと思います。


森委員からの質問です。この方は、日税連(税理士会)から任命された委員のようです。

辻山委員
 後で人事課長の方から御説明いただきたいと思いますけれども、私の承知しているところでは、一応60点という基準を満たすということが合格ラインになっておりまして、人数について、あるいは合格率について、特段の配慮をしたということはないというふうに承知しております。
 ただ、試験問題が、従来非常に分量が多い、あるいは内容が非常に高度だということがありましたので、少しそれを普通の勉強をしていれば受かりやすいような、そういう改良というか配慮をしてきたということはありますけれども、特に人数や合格率について特段の配慮があって、そういう結果になったというふうには理解しておりませんけれども。ちょっと補足して人事課長からお願いできませんか。

会長
 人事課長どうぞ。

人事課長
 今、辻山先生から御説明のあったとおりでございまして、試験でございますので、基本的には受ける人とか、問題の相性とかで、合格率は変わると思います。ただし傾向としては、簿記、財表は必ず受からなければいけない会計科目でございまして、税法の方は、数ある税法の中から3科目合格すればいいということで、本人のある意味で得意科目を選択できるという意味がございまして、簿記、財表について余りに難し過ぎると、税理士になりたい方が、なかなかなれないということもありますので、余りに問題数が多いのではないかと。それこそ専門学校に何年も通わないと受からないのではないかといったような意見が、受験生等から我々の方に上がってきたものですから、そこは十分に税理士の能力が判断できる適正な問題量にしようというようなことは、試験委員の先生方にお願いしてまいりました。そういうことの結果で、従来に比べると多少60点の基準を超える人が結果的に多かったかと思いますけれども、特にそれで、わざわざ適正な能力のない人をどんどん合格させようというようなことは、当然のことながらございません。

税理士試験の入り口となりやすい簿財に関しては、税法科目よりも敷居を下げようという方向で試験委員に発注したと認めています。逆に言うと、税法科目については「十分に税理士の能力が判断できる適正な問題量にしようと」はしていないということになりますね。

科目の見直しについて

森委員
 ありがとうございました。
 もう1点は要望なのですけれども、これは私が発言すると税理士会の要望かと言われるかも分かりませんが、私の個人的要望なのですけれど、税理士の試験科目というのを若干見直してもらったらどうかという気がするのですよ。ということは従来、簿記、財表、税法ですけれども、大体簿記というのは最近、余りやっていないというのが多いのですね。全部コンピューターでやってしまうという傾向があるわけですから。基本的なものは当然必要ですけれども、実務的には余りやっていないのではないかなという気がするのです。その辺も含めて、やはり簿記会計の簿記と財表については、やはりひっくるめて考えてもらうような方法。
 それから税法については、国税基幹法はいいのですけれども、地方税に至ってはたくさんあるわけですね、選択ですけれど。そこまで必要なのかどうかという問題を感じているわけですよ。それよりももう少しグローバル的なことになっているわけ、時代が。したがって、例えば民法を入れるとか、あるいは会社法制を入れるとか、もう少しグローバル化をして、実際に税理士が実務をできるような法律も入れるべきではないかなと。今、特に税法については、地方税の本当に細かい税法まで入っていますから、そんなの果たして必要なことかと非常に私は疑問を感じているわけですよ。
 したがって、ひとつ、これは時間がかかると思いますけれども、税理士の試験科目について検討をしていただく時期ではないかなというふうに考えますので、要望として申し上げておきます。
 以上でございます。

会長
 今の件、御発言ございませんか。

辻山委員
 御要望として承ったということで検討させていただきます。

次長
 これは士(さむらい)業と試験問題との関係でいろいろあるでしょうし、すぐにお答えをできる問題ではありませんので、また検討させていただきます。

国税OB税理士について

OB税理士が脱税を主導していた件について、立石委員がぶっこみます。

立石委員
 確定申告にかかわって二、三質問したいと思います。いわゆるOB税理士ですけれども、OB税理士の税務調査というのは、どういう方針で行われているのですか。

課税部長
 国税当局では、高額・悪質を重点にして、申告内容や資料情報を分析・検討し、課税上問題があると認められるものについては、的確に税務調査を行っていくことにしております。税理士についてもOB・非OBにかかわらず、問題がある者に対しては的確に調査を行うということでございます。

立石委員
 そこで具体的にお尋ねしたいのですけれども、元札幌国税局長の実刑判決文を読みますと、所得額の85%を申告していなかったというふうな指摘になっておりますけれども、これは4年間麻布税務署が気が付かなかったということは、これはどういうことなのでしょうか。

(以下略)
第5回 国税審議会 議事録(4)|審議会・研究会等|国税庁

立石委員
 続いて、査察部OBの国税税理士との関係についてお尋ねいたしますけれども、最近摘発されましたK-1脱税事件、「週刊現代」と「週刊サンデー」に、東京国税局査察部の元課長と、熊本国税局の元課長のOB税理士が事件に関与したというふうに報道されておりますけれども、私自身調べてみますと、多くの査察OB税理士が査察案件について直接関与されているというケースが多数ありますけれども、この点については、行政はどういう指導をされていらっしゃるのですか。

次長
 今、非常に具体的な御質問をされておられますが、退職者というのは、御案内だと思いますが、単なる民間人、税理士として営業されておられるわけで、既に退職されている民間人の方が営業努力として、どこか顧問先に入るということにつきまして、我々がそれを指導する権限は全くございません。
 恐らくそれを想像するに、査察案件に入っているという御指摘、これは一般論でお答えしたいと思いますが、恐らく一般の税理士の方は、一般というのは非OBという意味で申し上げてもいいのですが、恐らく査察ということについてのノウハウは余りお持ちでないのだと思います。
 たまたまですが、たまたまうちの職員、査察の経験者が、査察事務というのは言ってみれば非常に特定の分野でありますから、そういうことについてのノウハウがあるのだと思います。査察の受け方といっても、なかなか査察を受けた人もたくさんいませんし。そういうことで需要があって、たまたま関与されているのだと思いますから、全く民間人の方が、自由の営業活動の結果として顧問先に入られることについて、当局は一切何も権限はございませんし、指導することもできないと思います。

立石委員
 そうすると告発された事案について、査察部のOB税理士が案件に関与するということについては、一切行政はタッチできないと、そういうことですね。

次長
 OBとおっしゃいますが、その方は単に民間人でありまして、税理士として適法に活動されている以上問題はありませんが、例えば脱税共犯等々になれば、税理士法の処分というのはあると思います。

立石委員
 しかし、今の村上さんの答弁は少しおかしいですね。

(以下略)

立石委員、なおも食い下がります。

立石委員
 記録している方、どなたか、私は言いましたか。話をすりかえないようにしてください。
 私が心配しているのは、国税OBが脱税事案について、顧問税理士になることによって、一般国民が、国税庁国税当局と真ん中にOB税理士が入って、査察その他の税務調査について手心が行われているのではないかという疑問が出ているということなのです。それに対して何らタッチできないというのであれば、それと当然、国税OBが税理士法において、ほとんど無試験で税理士の資格を得ることについて疑問が出てくるのは当たり前のことであります。
 既に新聞の一部は社説で、国税OBのほとんど無試験によって税理士の資格をとることについては廃止しろという主張をしているわけですね。これは国税の現役の職員にとっては大いなる財産なわけですね。今のままでいくと当然この問題について、世論としては、もうやめろと、こういうことが出てくるのではないかと。そうすると、国税庁としても何らかの対策を立てる必要があるのではないかということを指摘して、私の質問を終わります。

会長
 今の御質問に直接お答えするわけではないですが、やはり最近ずっと時系列的に見れば、税理士に関する懲罰は非常に厳しくなりつつあって、その点はそのようなことを反映しているのではないかというふうには思いますがね。
 今の立石委員の御質問は、やはり個別案件の話、札幌国税局長のケースは、前にも確かこの国税審議会でも話題になりまして、その点については確かその時、ちょっと正確には覚えておりませんが、今後、その点については厳正に考えたいという話があったように思います。
 何か、その点で長官。

長官
 直接的なお答えになるかどうか、私は国際会議に出て、各国の長官と公式、非公式にいろいろな話をするのですけれども、

(中略)

 なぜ日本において、職員が長期間、退職まで勤めるのかということについて、私が説明した一つは、勧奨退職をしても、すぐに生活の苦労といいますか、心配することなく、ある程度そういう人については紹介をして、税理士として成り立つようにしているということが、我が国において、職員がきちっと一生プロとしてやれるということなのですよという話をすると、それは大変うらやましいという評価もあるということであります。ただ、そういうことについての問題が、先ほどおっしゃいましたように、ないわけではないと思います。
 この前の事件を契機として、紹介というのは、人事当局者が一元的に行うということで、現場の副署長等が顧問先との接触をすれば、それは国税の組織が何らかの権限ないし職員との関係を疑われる可能性があるので、それはもうやめましょうと。人事当局が一元的に会社のニーズを聞いて、必要があると、税理士のあっせんをしてほしいというような場合に、そこに紹介をするというやり方で来たということであります。
 ただ、立石先生のおっしゃっている中で、我がOB税理士を差別しているかということになりますと、私どもはしていないというふうに明確にお答えをできると思います。現に元札幌国税局長の件も、我々組織においてきちっと摘発をしている。

国税庁長官が、国税OBが無試験で税理士になれることは、一生プロとしてやれるということだと。言わば職員の生活保障として必要なことだ、と答弁しています。それは世界からうらやましいと、評価されていると、そういう認識なようです。


国税OBへの顧問先の斡旋は、以前は公式に制度としてありましたが、批判を受け今は無くなったんでしたでしょうか?今回の一連の「税理士試験適正化要望」の中で私は、国税OBが無試験で税理士になれることの是非までは、収拾がつかなくなるので広げるつもりはありません。ただ周辺事情として、こういう議論が国税審議会であったということは興味深いことでしたのでメモとして残しておきます。以上です。