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税理士試験不適切問題集 平成28年度(第66回) 法人税法

去年の試験から大変時間が開いてしまいましたが、法人税法の「税理士試験不適切問題集」をアップします。

改めて見てみても酷いですね。杜撰な問題作成にふつふつと怒りの感情すら沸き起こってきます。

受験生の皆様は今年の試験の勉強で忙しく、去年のことはもう記憶から薄れつつあるかもしれません。しかし、こうして風化していくのを許してしまえば、不適切問題は公式にはなかったことにされてしまいます。税理士試験の不適切性を指摘する根幹となる部分だと認識しておりますので、この件に国税庁が何らかのコメントを出すまでしつこく追及していく必要があると考えます。悲劇を再び繰り返さないためにも。


私自身は法人税法を受験していないため、理解の足りない部分もあるかと思います。補足する点などお気づきのことがありましたら、どなたでもコメント、メールでお寄せください。


元の原稿を送っていただいてから私がアップするのに4か月も開くこととなってしまい、大変申し訳ございませんでした。12月10日にメールをお送りしているのですが、これを見ていらっしゃったらお返事頂けないでしょうか?


この記事は、Tsugu さんの投稿を基にMarkが編集しました。

目次

平成28年度(第66回) 法人税法 試験問題

全体の特徴・総評

計算問題にあまりに不備が多く、税理士試験史上に残る悪問。その原因は、解釈が分かれる微妙な論点を出題した等によるものではなく、作問者が一度見直しをしていれば気づくような問題作成上の単純なミスを直さなかったことによると思われる。予備校作成の模範解答においても、別解多数、「解答不能」とのコメントあり。仮に全ての論点について間違いであると採点をされれば、満点をとれた受験者でも不合格レベルになり、合否が大幅に入れ替わっている可能性が高い。

第一問(理論)

問1

不適切カテゴリ:(解答欄不適切)

<不適切な点>
想定される解答に対し解答欄が狭すぎる。他の問題の分量を考慮しても今回の解答用紙は余白部分が非常に多く、あえて解答欄を狭くする必要性はない。

第二問(計算)

1.租税公課

不適切カテゴリ:(矛盾資料あり)


<不適切な点>
下記2点の資料不備がある。
A:市区町村民税の計に記載されるべき2,300,000 円が事業税の欄に記載されている。
B:前期末事業税の記載すべき欄が②欄でなく①欄になっている。


A・B 共に解答上影響はないが、通常与えられる資料と状況が異なることから、特にBについて前期の処理が違うことによる通常の処理以外の処理を検討した受験生がいた可能性は否定できない。

(D4 ページ 1.甲社の別表五(二)抜粋)
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2.減価償却

不適切カテゴリ:(矛盾資料あり)

<問題指示>

(D5 ページ 【資料4】2.A社との取引(1)中古機械装置の取得)
甲社は、(中略)残額の3,000,000 円部分について耐用年数を5 年として、定率法による減価償却を行った。

(D8 ページ 6(2)中古機械の取得)
甲社では、上記【資料4】2.(1)に係るA社から購入した機械装置をA社への支払額5,000,000 円を取得価額として、耐用年数を4 年と適正に見積もり減価償却費の計算を行っている。(以下略)

<不適切な点>
会計上の減価償却費を推定させる問題で、異なる取得価額と耐用年数がそれぞれ2つずつ与えられている。そのため会社が計上した減価償却費が算定できないため、解答要求事項の減価償却超過額につき一意の解答を導き出すことが出来ない。


<大手予備校の模範解答>
大原:各2つずつ与えられている取得価額と耐用年数から計算できる全4パターンの別解を掲載。解答解説の動画では「解答不能に近い」と解説している。
TAC:与えられている金額、処理方法が問題文の前後で違うことから「解答不能」としている。


3.K社株式の帳簿価額

不適切カテゴリ:(資料不足)(矛盾資料あり)

<問題指示>

(D7 ページ 4(1)配当(注2))
K社株式は、甲社が以前より所有している非支配目的株式等であり、K社株式の異動はなかった。なお、K社株式の期末帳簿価額は、32,000,000 円であり、期末時価は、29,000,000 円である。

(D7 ページ 4(2)②前期末・当期末の会社計算上の総資産の帳簿価額等)
(抜粋)K社株式の前期末帳簿価額32,000,000 円、当期末帳簿価額29,000,000 円

<不適切な点>
上記の資料からは①K社株式の期末帳簿価額が2つ与えられている。②K社株式が売買目的有価証券か売買目的外有価証券かが与えられていない。
K社株式が売買目的有価証券で会社が評価損を計上していない場合と、K社株式が売買目的外有価証券で会社が評価損を計上している場合には調整が必要になるが、問題文からそれを読み取ることができないためK社に関する調整については一意の解答を導き出すことができない。


<大手予備校の模範解答>
大原:当期末帳簿価額を29,000,000 円と推定して「K社株式評価損損金不算入額3,000,000 円」としている。
TAC:当期末帳簿価額を32,000,000 円と推定して「処理なし」としている。


4.受取配当等の益金不算入額

不適切カテゴリ:(資料不足)

<問題指示>

(D7 ページ 4(2)②前期末・当期末の会社計算上の総資産の帳簿価額等)

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<不適切な点>
受取配当等の益金不算入の金額の計算上、総資産簿価を算出する際に貸倒引当金が貸方表示の際は調整をせず、借方表示の場合は総資産簿価に貸倒引当金の金額を加算するが、上記問題資料からは貸倒引当金の表示方法が借方表示か貸方表示か注記かを特定できないため、解答要求事項の受取配当等の益金不算入額について一意の解答を導き出すことができない。


<大手予備校の模範解答>
大原・TAC:貸倒引当金の表示方法は不明確であり、借方表示、貸方表示双方のパターンを解答として掲載。

5.貸倒引当金

不適切カテゴリ:(資料不足)

<問題指示>

(D7 ページ 5.貸倒引当金)
甲社の決算手続き中に取引先S社から破産手続開始の申立てを行った旨の通知が届き、甲社でS社に係る債権を調べたところ売掛金残高が10,000,000 円であった。甲社では、当該売掛金について個別評価により貸倒引当金を計上することとした。前期以前に個別評価の対象となるものはなかった。

<不適切な点>
上記問題指示からは、個別貸倒引当金の計上要件である破産手続開始の申立てが当事業年度中に行われたのかが読み取ることができないため、個別貸倒引当金及び一括貸倒引当金に関して一意の解答を導き出すことができない。


<大手予備校の模範解答>
大原・TAC:「破産手続開始の申立がいつ行われたのか不明であるため」とし、当期中に行われた場合と翌期に行われた場合の2パターンの解答を個別貸倒引当金・一括貸倒引当金それぞれで掲載。

6.デリバティブ取引

不適切カテゴリ:(資料不足)


<問題指示>

(D9 ページ 8デリバティブ取引)
(前略)当該デリバティブ取引は、当期から開始し、甲社が所有する売買目的外有価証券の価額の変動により生じる可能性のある損失の額を減少させるために取得したてものである。当期末までに売買目的外有価証券の譲渡はなく、かつ、当該デリバティブ取引がヘッジとして有効であると認められる状態にある。
当期末における売買目的外有価証券の時価と帳簿価額との差額について、3,000,000 円の損失があり、デリバティブ取引による利益額は、3,200,000 円であった。

<不適切な点>
上記の資料からは当該デリバティブ取引が時価ヘッジか繰延ヘッジかの指示がないため、ヘッジ対象及びヘッジ手段の損益を認識すべきかどうかが判断できない。そのため当該デリバティブ関係に関しては一意の解答を導き出すことができない。


<大手予備校の模範解答>
大原:時価ヘッジと考え、「先物利益計上もれ3,200,000 円」と「時価ヘッジに伴う損金算入額3,000,000円」を解答として掲載。ただし「繰延ヘッジの処理も考えられる」とも記載している。
TAC:繰延ヘッジと考え「調整なし」としつつも「時価ヘッジか繰延ヘッジかを読み取ることができない」としている。


7.寄附金の損金不算入額

不適切カテゴリ:(解答欄不適切)

<不適切な点>
寄附金の損金不算入額の計算過程欄は正確に記載すると6行程度のスペースが必要になるが、解答用紙には3行分ほどのスペースしかなく、計算過程を書くことがほとんど不可能である。

8.C社所有土地の帳簿価額

不適切カテゴリ:(別解あり)


<問題指示>

(D3 ページ 冒頭問題文)
(問2)C社が当期末において所有している土地の帳簿価額を求めなさい。

<不適切な点>
法人税法の試験問題であることも踏まえるとC社の「税務上の簿価」を解答要求事項としていると思われるが、問題指示は「帳簿価額」となっており、決算書(会計上)の帳簿価額と読むことができる。そのため解答要求事項である土地の帳簿価額につき一意の解答を導き出すことができない


参考

問題に対する議論

0025 一般に公正妥当と認められた名無しさん 2016/08/28 00:32:58
これだよ
税理士 永橋利志先生の作った平成28年の問題のミス

・受配の控除負債利子の貸引の取り扱い → 借方?貸方? 不明で答えが2つ考えられるため永橋にシンクロするか運に任せるしかない。

・個別一括貸引の金銭債権区分 → 事実が生じたのはいつ? 不明で2つ考えられるため永橋にシンクロするか運に任せるしかない。

・別表5(二)の前期確定事業税は本来?欄なのに?欄に記入されている。 → 予備校で最初に習う事だが試験委員がミス

・別表5(二)の市町村民税?欄の合計額が一段下にズレている。

・中古機械装置の取得価額と耐用年数の資料が別の数字で2つずつある。→ TACが解答不能と解答

・寄付金の計算欄が狭すぎ。そのくせ無駄な解答欄が多量に印字されていてスペースも寄付金より広いという始末
  →大原が限度額の計算をカットする事態発生

・問題を事前にチェックしていない事が判明 → 1回でもチェックしてれば間違いにすぐ気付くレベル


id:eScM/8d40(1/11)
0026 一般に公正妥当と認められた名無しさん 2016/08/28 00:41:39
機械装置の取得は28年8月10日じゃなくて27年8月10日だった説好き

0233 一般に公正妥当と認められた名無しさん 2016/09/13 01:06:51
近畿税理士会 永橋利志先生の作った平成28年の税理士試験の作問ミスのまとめ
(改訂版)

・受配の控除負債利子の貸引の取り扱い → 借方?貸方? 不明で解けない。
・個別一括貸引の金銭債権区分 → 事実が生じたのはいつ? 不明で解けない。
・別表5(二)の前期確定事業税は本来?欄なのに?欄に記入されている。
・別表5(二)の市町村民税?欄の合計額が一段下にズレている。
・中古機械装置の取得価額と耐用年数の資料が別の数字で2つずつある。
・その他有価証券の評価損:全部純資産直入法か部分純資産直入法かが不明。
・受配:「負債利子は当年度実績」と指示があったが、それは事業年度が
    H27.4.1〜H28.3.31の原則法なら当てはまる指示だが、
    H28.4.1〜H29.3.31は当年度と前年度の実績を使わなければいけ
    ないので、意味不明な指示。指示通り当年度だけで計算したヴェテ
    はどうなるのか?
・寄附金:寄附金が出題されているのに資本金等の額の資料がない。
・デリバティブ:繰延ヘッジと時価ヘッジが両方可能な資料であるにも係らず
    いずれかの指示がないため解けない→有利な方法だと繰延ヘッジ?
・その他:解答欄が狭すぎたり大きすぎたりする←おそらく想定している解答が
     間違っている。
id:BRK+9v1T0


永橋先生ファンクラブ

0841 一般に公正妥当と認められた名無しさん 2016/09/17 22:08:52
>>826
永橋が機械取得年度一年間違えてる説が有力。
そうすると最初と最後の矛盾した問題文も説明がつく。
寄付金は去年だからその他寄付金はないので狭い欄でもOK。
逆に認容が出てくるので広い欄じゃないと書ききれない。
こんなにスッキリ全ての疑問に説明つくから俺はこの説信じてる。

国税庁「出題のポイント」

国税庁が発表した計算問題に関する「出題のポイント」はわずか3文で、自己採点の参考にしようにも何の役にも立たない。問題の不備により別解が生じる点ばかりがポイントとして挙がっているにもかかわらず、作問者がどのような処理を求めたのかはわからない。作問者が「法人税実務において頻出する基本的な処理」を正確に理解できているのか疑わざるを得ない。

〔第二問〕

 本問は、近時の改正項目を含めた法人税実務において頻出する基本的な処理を問うものである。
 諸税の納付状況の別表からの読み取り、中古資産に係る修繕費の取扱い、貸倒引当金の個別評価と一括評価のそれぞれの損金算入限度額の計算、受取配当金の益金不算入処理等正確な計算処理が求められる。
 また、完全親子会社間の取引についても基本的な処理を求めるものである。


国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁

試験委員

新井 智男(新任)国税庁課税部法人課税課長
永橋 利志(3年目)日本税理士会連合会理事広報部副部長・近畿税理士会常務理事広報部長・税理士