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大原は国税徴収法の「滞納処分」の定義を見直しテキストを訂正すべきだ

前回の更新では、税理士試験「出題のポイント」の公開について予告しましたが、今回は、実際に公開された「出題のポイント」を見て、わかることを論評していきたいと思います。「出題のポイントって何?」という人は前の記事からご覧ください。


当初この記事は、各科目の「出題のポイント」を比較するつもりで書いていたのですが、国税徴収法について疑問点を調べているうちに、思わぬ方向に話が膨らんでしまいました。

それから、大原さん、ごめんなさい。私は、ずっと大原のテキストが使いやすいと思い大原派でやってきましたし、基本的に信用しているのですが、今回、止むを得ず名指しで批判します。一時は、「試験委員は「滞納処分」の意義を間違えているのではないか?」というタイトルにしようと思ったのですが、資料を調べていくうち、私の中でどうも間違っているのは大原の方だという結論に達しました。私の指摘が正しければ、大原は解答速報だけでなく、理論テキストの内容から訂正が必要なこととなるはずです。

大原水道橋校のS先生にも電話でお話しさせて頂きましたが、訂正の必要性を全くお認めになりませんでしたので、残念ながらこのような形で発表することになりました。

目次

国税徴収法

まず、私が受験した国税徴収法です。科目によっては、解答を推測する上で何のヒントにもなっていない「出題のポイント」もある中、国税徴収法に関してはほぼ“答え”と言っていいものが出ました。具体的な日付、金額、要件の記述を除いて、解答要求事項と思われる項目が網羅されており、根拠条文番号まで添えてあります。これで少なくとも、試験委員の想定する模範解答が判明することとなりました。


「出題のポイント」

(以下引用部の強調表示は全て筆者による。)

〔第一問〕

問1

納期限が未到来の国税について、災害により財産に相当な損失を受けた場合は、納期限から最長1年間にわたり納税の猶予(通法46①)が適用される。
 上記の猶予期間を経過した後も、災害を受けたことにより、その国税の納付が困難であるときは、最長1年間の納税の猶予(通法46②一)が適用され、更に1年間の猶予期間の延長(通法46⑦)により、合わせて最長で3年間、納税が猶予される
 本問は、これらの災害に関する納税の猶予の関係を正しく理解しているかを問うものである。

問2

 滞納処分による差押えは、督促から一定期間を経過したときに可能となるが(徴法471一)、それよりも早い時期に差押えが可能となる例外があり、これを時系列で示すと次のとおりとなる。

(1) 納税者が不正の行為により国税を免れようとした場合など、繰上請求事由に該当する場合において、納税義務の成立後に行う繰上保全差押え(通法38③、徴法47①二)
(2) 法定申告期限後に国税犯則取締法による犯則調査を受けた場合に行う保全差押え(徴法47①二、159①)
(3) 繰上請求事由に該当する場合において、税額の確定後に行う繰上請求による差押え(通法38①、徴法47①二)
(4) 繰上請求事由に該当する場合において、督促後、直ちに行う繰上差押え(徴法47②)
(5) 督促後、一定期間を経過した後に行う差押え(徴法47①一)

 本問は、これらの制度の関係を時系列で正しく理解しているかがポイントとなる。

〔第二問〕

問1

 差し押さえた自動車を換価する場合は、事前に徴収職員がその自動車を占有する必要があり(徴法91)、この場合に滞納者の自動車を占有する第三者が留置権に基づき引渡しを拒否するときは、その第三者に自動車の引渡しを命じることができる(徴法58、71③、④)。
 一方、その第三者は、留置権の被担保債権につき、換価代金から優先的に配当を受けることにより、国税の徴収との調整が図られることになる(徴法21)。
 本問は、滞納者の財産を占有する留置権者の権利と国税の徴収との調整に関する制度の理解度を問うものである。

問2

 滞納者が自身を判定の基礎として同族会社に該当する会社の株式を取得したことなど、一定の要件に該当するときは、その同族会社は、その株主である滞納者の国税について第二次納税義務を負うことになる(徴法35)。
 本問は、設例の事実関係に即して、自動車からの徴収だけでなく、第二次納税義務を負う同族会社からの徴収も可能であることを、徴収不足との関係を含め、適切に説明することができるかがポイントとなる。



国税徴収法|平成29年度(第67回)税理士試験出題のポイント|国税庁


今回の問題は、問題文に曖昧なところがあり、予備校間で解答が割れることとなりましたが、この模範解答に従えば、大原が発表した解答速報は、繰上保全差押と、R国の土地について外したことになります。一方、「繰上保全差押と保全差押は滞納処分ではないから、試験委員の模範解答が間違っている」という見方もでき、大原の解答の方が正しいという考えもあると思います。大原は、この点、正式に国税庁に問い合わせをするべきであると思います。さもなければ、間違った解答を発表した予備校、という評価が定着するでしょう。


この点、私は国税審議会に事前に、疑義論点があるとして、詳しく説明を求める書面を送付していましたが、この効果で他の科目に比べて詳しい「出題のポイント」が出た、ということではなさそうです。国税徴収法は、過去の年を見ても割と詳しく書かれているようです。問題も、法律の試験問題として比較的まともな科目ですので、それが私がこの科目をお勧めする理由でもあります。

第一問問2について

問題はこうでした。

A株式会社は、平成27年3月決算(事業年度:平成26年4月1日から平成27年3月31日まで)に係る法人税の確定申告分(法定申告期限:平成27年5月31日)について脱税行為を行っていたため、平成28年2月1日に国税犯則取締法に基づく強制調査を受け、さらに、税務調査により平成28年10月31日付で更正処分を受けている(同日の午前10時に更正通知書の送達、納期限:平成28年11月30日)。
X税務署長がA株式会社から上記更正処分に係る法人税を徴収するため、理論上、滞納処分による差押えをすることができることとなり得た時期(差押えの始期)を早い順に、それぞれの差押えの要件と、その日付が始期となる理由を付して、答案用紙の指定欄に記載しなさい。
なお、解答に当たり、土日、休日等を考慮する必要はない。

そして、答案用紙には(1)から(5)の解答欄が用意されていました。試験委員の模範解答は上記の通り、繰上保全差押え、保全差押え、繰上請求による差押え、繰上差押え、原則の差押え、の5つを挙げています。


大原の解答

大原の解答速報では、保全差押、繰上請求による差押、繰上差押、原則的な差押の4つを挙げていました。


大原で学んだ考え方は、こうです。ーーー国税徴収法の差押には、「滞納処分による差押」と、そうではない単純な「差押」がある。滞納状態が生じてから行う差押が「滞納処分による差押」で、繰上保全差押と保全差押は税額が確定する前に仮の金額で行う差押であるので、「滞納処分による差押」と言われたときには含まれない。ーーーこれは応用理論テキストにもページをとって解説してあり、私はしっかりと線を引いて頭に入れていました。

大原 応用理論テキスト

大原 応用理論テキスト

大原 応用理論テキスト

資格の大原 国税徴収法 2017年受験対策 応用理論テキスト


問題文は微妙な言い回しですが、「滞納処分による差押え」を答えるように求めていますので、用語の意味を正確に捉えると、滞納処分ではない繰上保全差押と保全差押は解答から除かれるべき。本番の試験でも、私はこう考えました。

しかし、問題の設定はどう見ても保全差押について解答に書かせたいように見える。しかも解答欄が(5)まで用意され、その幅にも意味があるように見える。時間が足りない中悩みに悩んだ挙句、これは、試験委員が「滞納処分による」の意味を深く考えていない若しくは間違えている可能性もあるな、書かない方がリスクが大きい、と判断し、5つ全て埋めるべきと判断しました。(普通は問題が間違っているとは思わないですが、税理士試験ならあり得るという考えも働きました。そこは結果オーライです。)


結局、時間切れでパニクって原則差押を更正処分でなく当初申告について書いてしまったのが痛いミスですが、私が本番で書いてきた再現答案はこちらです。

滞納処分の意義

さて結局、「滞納処分による」という言葉があることによって繰上保全差押と保全差押を除くべきなのか。言い換えれば、繰上保全差押と保全差押は滞納処分に含まれるのか。

国税徴収法、国税通則法には、「滞納処分」という用語を定義した条文はありません。しかし、日本語をそのまま解せば、滞納状態が生じた後に行う処分を滞納処分と呼ぶのであって、滞納状態が生じる前に例外的に行う徴収は、滞納処分には含まれないと考えるべきかもしれません。それなら大原説が正しいことになります。


金子宏『租税法』第22版には、このようにあります。

納税者が納期限までに租税を完納しないことを、租税の滞納といい、租税を滞納した納税者を滞納者という。 〜 このように納税義務の任意の履行がない場合に、納税者の財産から租税債権の強制的実現を図る手続を、滞納処分または強制徴収という。


金子宏『租税法』第22版 p.947

滞納があってから行う手続きを「滞納処分」と呼び、それ以外の納期限前に行う徴収手続きを「強制徴収」と呼び、区別しているとも読めます。

滞納処分は、狭義の滞納処分と交付要求とに分かれる。前者は、国または地方団体が自ら納税者の財産を差し押えて、そこから租税債権の満足を図る手続であって、財産の差押、差押財産の換価、換価代金の充当の一連の行政処分からなる。これに対し、交付要求は、現に進行中の強制換価手続の執行機関に換価代金の交付を求め、それによって租税債権の満足を図る手続である。単に滞納処分というときは、狭義の滞納処分を意味する場合と、交付要求をも含める意味でいう場合とがある。


金子宏『租税法』第22版 p.947

広義の滞納処分と狭義の滞納処分があって、狭義の滞納処分も差押だけでなく、換価、配当といった割と広い概念を持つ言葉であることがわかります。しかし、繰上保全差押などの保全措置をも含むのかどうか、断定はできません。


税大講本では、こう説明されています。

⑴ 滞納処分の意義
滞納処分とは、納税者が税を任意に完納しない場合に租税債権の強制的実現を図る手続であり、差押え、交付要求(参加差押えを含む。)、換価、配当等を総称していう(徴収法第5章)。


税大講本「国税徴収法(平成29年度版)」 (p.6)

保全処分の種類

税大講本の保全処分に関するページを引用します。

滞納処分による差押えは、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに、その督促に係る国税が完納されないときに行うこととされている(第3章第1節3参照)。
しかし、これを待っていては納税者が財産を散逸させる等により国税を徴収できなくなるおそれが生じる場合がある。このように緊急を要する場合に、国税の徴収を確保するために行う処分が「保全処分」といわれるものである。保全処分の種類には、次のものがある(次ページ「国税の保全措置一覧表」参照)。

1保全担保(徴158、酒31①など)
2繰上保全差押え(通38③)
3保全差押え(徴159)
4繰上請求(通38①、②)
5繰上差押え(徴47②)


税大講本「国税徴収法(平成29年度版)」第8章 保全処分 (p.84)

5つの保全処分のうち、滞納状態(納期限)を待って行う措置は、4の繰上請求による差押と5の繰上差押のみです。繰上保全差押と保全差押が滞納処分なのかは、ここでもわかりません。


条文に戻る

今までに何度も見ている条文に再び戻ります。国税徴収法の構成に注目すると、原則の差押(47条1項)、繰上差押(47条2項)は、ともに「第五章 滞納処分」の中にあることがわかります。これは繰上差押が滞納処分に含まれることの根拠と言えそうです。

(差押の要件)
第四十七条 次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき。
二 納税者が国税通則法第三十七条第一項各号(督促)に掲げる国税をその納期限(繰上請求がされた国税については、当該請求に係る期限)までに完納しないとき。
2 国税の納期限後前項第一号に規定する十日を経過した日までに、督促を受けた滞納者につき国税通則法第三十八条第一項各号(繰上請求)の一に該当する事実が生じたときは、徴収職員は、直ちにその財産を差し押えることができる。


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保全差押は、159条にありますが、「第六章 滞納処分に関する猶予及び停止等」の中にあることがわかります。ということは、「滞納処分に関する〜等」とありますから、保全差押も滞納処分の一種と考えられていると言ってよいかもしれません。

国税徴収法

(保全差押)
第百五十九条 納税義務があると認められる者が不正に国税を免かれ、又は国税の還付を受けたことの嫌疑に基き、国税犯則取締法(明治三十三年法律第六十七号)の規定による差押若しくは領置又は刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による押収、領置若しくは逮捕を受けた場合において、その処分に係る国税の納付すべき額の確定(申告、更正又は決定による確定をいい、国税通則法第二条第二号(定義)に規定する源泉徴収による国税についての納税の告知を含む。以下この条において同じ。)後においては当該国税の徴収を確保することができないと認められるときは、税務署長は、当該国税の納付すべき額の確定前に、その確定をすると見込まれる国税の金額のうちその徴収を確保するためあらかじめ滞納処分を執行することを要すると認める金額(以下この条において「保全差押金額」という。)を決定することができる。この場合においては、徴収職員は、その金額を限度として、その者の財産を直ちに差し押えることができる。

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159条の中に、「あらかじめ滞納処分を執行することを要すると認める金額」とあるのは当然暗記しましたからわかっていました。今までの理解は、将来滞納処分を執行するとした場合の仮定の金額を取り込むことを書いてあるのであって、保全差押自体は滞納処分ではない、ということで納得していました。しかし、保全差押が滞納処分の一種であると考えれば、より自然に「滞納処分を執行することを要すると認める金額」を決定、差押、と読むことができます。

同様の表現は繰上保全差押にもあり、類推で考えればこちらも滞納処分と言えることになります。繰上保全差押は通則法38条3項ですが、38条1項の繰上請求は(納期限を繰り上げて滞納状態にして行う差押であることから)当然に滞納処分に含まれますから、同じ条にある繰上保全差押も滞納処分であるとした方が自然に思います。

国税通則法

(繰上請求)
第三十八条 

3 第一項各号のいずれかに該当する場合において、次に掲げる国税(納付すべき税額が確定したものを除く。)でその確定後においては当該国税の徴収を確保することができないと認められるものがあるときは、税務署長は、その国税の法定申告期限(課税標準申告書の提出期限を含む。)前に、その確定すると見込まれる国税の金額のうちその徴収を確保するため、あらかじめ、滞納処分を執行することを要すると認める金額を決定することができる。この場合においては、その税務署の当該職員は、その金額を限度として、直ちにその者の財産を差し押さえることができる。

一 納税義務の成立した国税(課税資産の譲渡等に係る消費税を除く。)
二 課税期間が経過した課税資産の譲渡等に係る消費税
三 納税義務の成立した消費税法第四十二条第一項、第四項又は第六項(課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての中間申告)の規定による申告書に係る消費税


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ただ気になるのは、40条に滞納処分を行う国税について書かれており、ここには原則の滞納国税(37条)と38条1項のみが例示してあることです。

国税通則法

(滞納処分)
第四十条 税務署長は、第三十七条(督促)の規定による督促に係る国税がその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納されない場合、第三十八条第一項(繰上請求)の規定による請求に係る国税がその請求に係る期限までに完納されない場合その他国税徴収法に定める場合には、同法その他の法律の規定により滞納処分を行なう。


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国税庁に聞いてみた

ここまで調べたところで、国税庁に直接聞いてみようと思い、電話で問い合わせてみることにしました。といっても、税理士試験の担当課に問題に関する質問をしても答えてくれそうにありません。そこで国税徴収法の解釈について尋ねるという形をとることにしました。

国税庁組織図
国税庁の機構|国税庁概要・採用|国税庁


国税庁の代表番号に電話して、徴収部徴収課に繋いでもらうおうとしたのですが、「国税に関する一般の質問は、国税局の電話相談センターへ」と言わてしまいました。相談センターに徴収法の解釈を答えられる人はいないのではと予感してかけましたが、案の定、「え?繰上?何ですか?」という感じで話が通じなさそうでした。結局、税務署の徴収部門に聞くことを勧められました。そこでなるべく大きいところに尋ねた方がいいと思い、東京国税局管内の某税務署にかけました。

最初に対応頂いた方も少し調べて折り返しの電話をくれたのですが、「繰上保全差押が滞納処分である根拠は通則法38条3項の記述で間違いないか」と念押しすると、再度調べるとのことで、上司らしき方から折り返しがありました。徴収1部門のNさん(お名前は伏せて欲しいということでしたので、そうさせて頂きます。)という方から、本来業務でもないにも関わらず、大変丁寧なご対応を頂きました。

その方のお話によると、やはり私の出した結論でいいようです。「滞納処分」には広義と狭義があり、法律上一義に定められていないので、その範囲は条文ごとに解釈する必要がある。「保全差押」は徴収法第六章のタイトルから滞納処分であることは間違いない。「繰上保全差押」も同様、というお答えでした。最後は「専門的に教えられる立場でなく申し訳ないのですが」と言われ、こちらが恐縮してしまいました。


大原に聞いてみた

次に、大原の水道橋校に電話してみました。国税徴収法のS先生に繋いでもらい、「出題のポイント」が出た感想などを聞かせて頂きました。失礼を承知で「大原さんの回答は訂正する必要があるのでは」と踏み込んで聞いてみたところ、「そういう考え方もできるかもしれない」「(合否に影響する)差はつかないと思いますよ」というお答えでした。

上述した税務署に問い合わせて頂いた返事のことも伝えて、「繰上保全差押も滞納処分に含まれるとして扱っているようだが」と尋ねると、「現場でそうしているのかもしれないが、その解釈が正しいという根拠はない」とのお返事でした。

逆に、大原で「滞納処分による差押え」をその他の「差押」と区分して特別な意味があるとしている根拠は何なのか尋ねると、「過去問で問われたことがある」というお答えでした。上記の応用理論テキストに載っている昭和61年と平成3年の問題のことを言っているのか尋ねると、その通りでしたが、これは両者を比較して違いを直接的に問うたものではないため、出題者として「滞納処分による差押え」と「差押」に特に意味上の違いがあると意識はしていなかった可能性があります。ここまで調べてきた私の印象としては、大原は「滞納処分」の意義を独自に限定的に解釈してしまっているということです。日本語的にはそのように読めるのかもしれませんが、法律用語は構造的に読まなければ解釈を誤ります。


一応、後で過去67年分の問題を私の方で調べましたが、滞納処分による差押とそれ以外の差押を比較して問う問題は確認できませんでした。ちなみに、滞納処分と交付要求の関係の説明を求める問いは第4回(昭和29年度)、交付要求と参加差押の異同を問う問題は第39回(平成元年度)ほか、に出題されています。また、今回の問題の類似の問題として、平成18年度に、通常の差押の執行が可能となる日までに行うことができる特別な保全措置を問う問題が出題されています。

大原の説を補強する根拠となる文献があれば調べたいので教えて欲しいと尋ねたところ、はっきりとはお答えになりませんでしたが、『国税徴収法精解』にはそのように解釈できるように書いてあるようなことを仰っていました。まだ見ていませんが、後日、本当にそのような記述があるかは確認してきたいと思います。

国税徴収法精解〈平成27年改訂〉
吉国 二郎, 志場 喜徳郎, 荒井 勇
大蔵財務協会 ( 2015-01 )
ISBN: 9784754721589

結論

私としては、以下の結論に達しました。

  • 国税徴収法の条文構成、主流の学説から考えれば、「滞納処分」とは、国税徴収法に規定される租税を徴収するための一連の手続を包括的に定義したものであり、その中には保全差押や繰上保全差押も含まれる。
  • よって本問の場合のように、「滞納処分による差押」と問われたときは、保全差押や繰上保全差押が含まれる。
  • 大原が教えているように「滞納処分による差押」の意義を「滞納状態が発生した後に行う差押」として限定的に解釈する説を裏付ける文献は、今のところ大原のテキスト以外に確認できていない。
  • もし大原の説が間違っているならば、理論テキスト・応用理論テキストを改訂する必要がある。

一応、本問については、大原だけが間違えていたわけではないことをフォローしておきたいと思います。これまでは他の予備校でも大原説が主流だったのではないかと思います。ネットスクールも繰上保全差押は解答に含まれないと判断していましたし、TACは繰上請求による差押の始期となる日付を間違えていました。本問は、現実的には行われないであろう手続きを「理論上」という設定で答えさせるものであり、非常に判断に難しい問題であったと思います。




以上、長くなりましたが、滞納処分の定義に関する考察でした。ここまでお読みいただきありがとうございました。もし大原説を補強するような文献をご存知の方がいらっしゃれば、お知らせください。


ところで、税理士試験の「出題のポイント」の発表に際して、このような検証ができるのも、国税庁から模範解答レベルの「出題のポイント」が示されたからです。例えば、法人税法の「出題のポイント」では、解答が特定できる情報がほとんど記載されていないため、参考になりません。私が国税審議会に送付した申入書にも書きましたが、国税徴収法で行われた程度の内容は最低限として、全ての科目で発表するようにするべきだと考えます。