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第67回 国税徴収法の再現答案 自己採点

再現答案を作成し、自己採点をしてみました。

第67回 国税徴収法

目次

感想

なかなか難しい問題で、特に第一問問2ですが、時間を食われてしまいました。近年の過去問は90分で解けるような問題が続いていましたので焦りました。大原の講評には、解答時間に余裕があり、難易度が低いとありますが、第一問問2がすらすら解けた受験者生はいないと思いますので、疑問です。
今年も複雑な計算の出題がなく、そこで差をつけられなかったのが残念です。
全体としては、理論テキストのベタ書きだけでは対応できない、理解力を問う良い問題だったと思いますし、面白かったです。私見では、税理士試験全体が、このように考えさせる問題であるべきだと思っています。


再現答案

試験日の翌々日に、記憶の限り、当日作成した答案を思い出して再現しました。表現の間違いや、記述の不足している部分もなるべくそのまま再現しています。

解答作成の順序は、残したメモによると、素読みに20分、第一問(問1と問2の日付の検討)35分、第二問45分、第一問(残り)20分で行いました。


第一問

問1

[1]概要
  納期限未到来の納税の猶予の適用により1年間の猶予を受けることができる。また、その期間終了後に災害等による一般の納税猶予により最長2年間受けることができるため、合計で最長3年間の猶予を受けることができる。

[2]納期限未到来の納税の猶予
(1)要件
  次のいずれかに該当するときは、税務署長等は、災害等のやんだ日から2月以内にされた納税者の申請に基づき、納税を猶予することができる。
①震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害により、納税者の財産に相当の損失を受けたこと
②その損失を受けた日から1年以内に納付することとなる国税で、その災害のやんだ日以前に納税義務が成立し、納期限がその損失を受けた日以後に到来するもののうち、災害のやんだ日以前 申請の日までに納付すべき額が確定すること

(2)期間
 原則として納期限から1年以内の期間を限り、猶予する。


[3]災害等による一般の納税猶予
(1)



(2)期間
 原則として1年以内の期間を限り、猶予する。ただし、その猶予期間内に猶予税額を納付することができないやむを得ない理由があるときは、税務署長はその期間を延長することができる。既に猶予を受けた期間とあわせて2年間まで受けることができる。

問題文の指定には要件の記述は求められていなかったのですが、紙幅が半分以上余るので書いた方がいいと判断しました。後で時間が足りなくなるので後回しにするべきでした。
要旨として間違いはないと思います。猶予期間の延長に、納税者の申請が必要な点の記載が漏れているので減点があると思われます。


問2

(1)
イ 差押えの始期: 27.6.1
ロ 差押えの要件:


ハ 上記イの日付となる理由:
 平成27年3月31日に納税義務の成立した国税で、繰り上げ請求の事由が生じているため、繰上保全差押金額を決定し、直ちに差押をすることができる。


(2)
イ 差押えの始期: 27.6.12
ロ 差押えの要件:
 国税の滞納があった場合には、原則として国税の納期限後50日以内に督促状による督促をする。その督促状を発した日から起算した10日を経過した日までに完納がないときは、徴収職員は、その者の財産を差し押さえなければならない。

ハ 上記イの日付となる理由:
 平成27年5月31日に法定納期限を経過した国税が、翌日に滞納状態となり、最短でこの日に督促状を発し、その督促状を発した日から起算して10日を経過した日となる6月12日に差押をすることができる。



(3)
イ 差押えの始期: 28.2.1
ロ 差押えの要件:
 次のすべてに該当するときは、税務署長は、保全差押金額を決定し、その金額の限度において、その者の財産を直ちに差し押さえることができる。
① 納税義務があると認められる者が、不正に国税を免れ又は還付を受けたことの嫌疑に基づき、国税犯則取締法による差押、領置、刑事訴訟法による領置、差押、逮捕を受けたこと
② その国税の金額の確定後においては徴収を確保することができないと認められること

ハ 上記イの日付となる理由:
 平成28年2月1日に脱税等の嫌疑による調査を受けていることから、その日に保全差押金額を決定し、差し押さえることができる。ただし、国税局長の承認を必要とする。



(4)
イ 差押えの始期: 28.11.1
ロ 差押えの要件:


ハ 上記イの日付となる理由:
 平成28年10月31日の更正処分により税額が確定し、繰上請求の事由が生じているため、その翌日に納付を請求し、差押をすることができる。



(5)
イ 差押えの始期: 28.12.1
ロ 差押えの要件:
 国税の滞納後、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに繰上請求の事由が生じたときは、徴収職員は、その者の財産を、直ちに差し押さえることができる。

ハ 上記イの日付となる理由:
  更正処分による納期限である平成28年11月30日の翌日に滞納状態となり、繰上請求の事由が生じているため、繰上差押をすることができる。

解答作成に最も頭を使いました。おそらく、正答率の低い問になると判断したので、メモとして日付を整理して並べた後、解答記入は最後に回しました。「滞納処分に係る差押」とあるので、保全差押、繰上保全差押は除かれると思ったのですが、そうすると埋める内容がなくなってしまいますので、出題者が定義を深く意識していない可能性も考慮して、(1)から(5)まで全部埋める想定があると考えました。(4)と(5)がそれ以外に比べ要件部分が2行ほど狭くなっていたので、想定している記述があるのではないかと考えました。ただのダミー解答欄で空欄でいいのなら全て同じ行数にしているだろうとも思いました。

しかし、更正処分に係る法人税について問われているので、確定申告分について書いてしまった私の解答の(1)と(2)は完全に間違いです。試験終了間際に(3)の要件を走り書きして終わったと思います。(1)と(4)の要件は、確か時間切れで書けなかったと思います。答案の復元自体がちょっと精度が低いです。


第二問

問1

占有するための措置:第三者が占有する動産の差押 引き渡し
(1)
  滞納者の親族その他の特殊関係者以外の者が占有している財産で、その第三者が引き渡しを拒むときは、税務署長は、滞納者が他に換価の容易な財産で、滞納国税の全額を徴収できるものを有していないときは、その第三者に対して、期限を指定して、引き渡すよう書面により命ずることができる。

(2)
  (1)の期限は、書面を発した日から起算して7日を経過した日以後の日としなければならない。

(3)
  税務署長は、(1)の引渡命令をしたときは、滞納者にその旨を通知する。

「X税務署長が設例の自動車を換価するに当たり、これを占有するための措置を答えなさい。」ということで、大原理論テキスト3-5の「第三者が占有する動産等の差押手続き」の準用だな、というところまではわかったのですが、ちょっと焦っていたので、「自動車」とせずに「財産」と書いてしまったような記憶があります。また、自動車に準用する場合は、滞納者の財産要件がないのですが、勢い余って書いてしまいました。応用理論テキストで学習した際に、建設機械に準用する際は要件不要とメモしてあるのですが、自動車の場合はどうなのかよく確認していませんでした。
問題の指定でどこまでの記述が解答要求事項とされているのか、不明瞭な点がありますが、記述の足りない部分で10点くらいの減点があると考えています。
またこの問は、事例の当てはめが必要ないベタ書きだと判断してそのように書きました。その理由は、他の問には逐一「設例に即して答えなさい」と当てはめを求めているのに、この部分には書かれていなかったからです。

徴収することができる金額: 700万円
理由:
(1)
  自動車の修理代金100万円が留置権の被担保債権に該当し、所得税に優先して配当を受ける。
 自動車の評価額800万円から留置権の被担保債権が配当を受ける100万円を控除した700万円となる。

(2) 根拠規定
  留置権のある財産を差し押えたときは、その財産の換価代金につき配当を受けるべき金額は、国税は、留置権の被担保債権に次いで、徴収する。

根拠規定(徴22)の表現が微妙ですが、意味的な間違いはないと思います。

問2

徴収のための措置とその要件:
[1]概要
  X税務署長は、Aの滞納国税(所得税)を徴収するため、Q株式会社に対し、同族会社の第二次納税義務を追及することができる。
 また、R国の土地は、法施行地外に所在する財産であるので差押えをすることができないが、租税条約によりR国の政府機関(課税庁)に徴収の共助の要請をし、徴収できる可能性がある。



[2]同族会社の第二次納税義務 要件
(1)次のすべてに該当するときに成立する。
①滞納者が、その者を判定の基礎となる株主又は社員として選定したときに同族会社に該当する会社の株式又は出資を有すること。
②①の株式につき次のいずれかの理由があるため、換価できないこと
(イ) 再度公売に付しても入札等がなく、随意契約による売却もできないと認められること
(ロ) 法律又は定款により、その株式を譲渡することに制限があること
③①の株式を除き、滞納者に滞納処分を執行してもなお、徴収すべき額に不足すると認められること。



[3]設例の場合
①Q株式会社は滞納者Aとその親族Bのみでその株式の全てを所有する同族会社である。
②①の株式は市場性が乏しく、入札等がないため換価できない。
③滞納者Aには、自動車とR国の土地を除き、滞納国税の全額を徴収できる財産がない。

要件、当てはめとも問題ないと思います。株式の条件が、他の規定と混ざりましたが、意味的に間違いではないのでほぼ満点解答であると考えています。

徴収することができる金額: 450 300万円
理由:
① 同族会社(Q社)から徴収することができる金額は、同族会社の純資産の価額で、株式の総数のうち、滞納者(A)の有する株式(ただし、滞納国税の法定納期限の1年以上前にされた出資を除く)に対応する分を責任限度とする。
② Q社の純資産は、総資産額8,000万− 総負債6,500万=1,500万円である。
③ 所得税の法定納期限の1年前の日(平成27年3月15日)後にされた、滞納者Aの有する株式は平成27年11月1日の増資分100株である。
④ 1,500万円×100/500株=300万円を限度とする。
⑤ ただし、所得税の滞納額1,000万円を限度とし、自動車、R国の土地が配当を受けた金額を差し引いた残額を徴収することができる。

問2は、R国の土地の徴収見込額をどのように考えるのかで、問題の指定が不明瞭です。予備校でも解答が割れています。また問題文に、「設例の自動車に関するものを除き」とあるのがどういう意味なのか、自動車に関する記述は不要、なのか、自動車をないものとして考える、なのか、自動車を徴収見込額に含めない、なのか、やはりよくわかりません。
解答スペースと、問題設定を総合的に判断して、同族会社の第二次納税義務について書かせたいのだろうと判断して、上記のように記載しました。⑤は、自動車とR国の土地について考慮した場合の想定を保険で加えました。


ボーダーと自己採点結果

解答速報、ボーダー


大原:ボーダー70、合格確実80
TAC:ボーダー52、合格確実65


自己採点

自己採点では、大原基準で32:40:72、TAC基準で31:39:70です。

甘いでしょうかね?国徴のわかる方に、ご意見賜れば幸いです。


模範解答も割れていますし、ボーダーも全然違いますし、自己採点が難しいですが、全体の雰囲気で大丈夫だろうと思っています。予定通り、合格したものとみなして、次へ行こうと思っています。


国税庁に申し入れをします

上記の通り、悪くない問題だったと思っていますが、問題の指定が不明瞭なところがあり、出題者が何を想定しているのかわからないところが複数あります。そこの判断次第で、採点に与える影響も大きいと思われますので、方針をはっきりと示すよう、近日、国税庁に申し入れか公開質問の形で送ろうと考えています。本当は、こういったことは内容を一番理解している予備校にやってもらいたいのですが、去年からの私の呼びかけに対する反応を見ていると、全く期待できないので、個人でやります。もし賛同して頂ける関係者の方がいらっしゃったらご連絡ください。


P.S.

ブログにコメントを多数頂いていますが承認が遅れています。
返信とともに順次公開していきますのでよろしくお願いします。