Markの資格Hack (税理士試験)

資格試験に四苦八苦しないための資格Hack(シカクハック)情報 税理士試験のここでしか見れない情報を発信しています

『週刊 税務通信』が取り上げた平成26年度税理士試験法人税法の不適切問題

どの会計事務所にも必ず置いてある、と言われるほど業界で信頼を置かれている専門紙『税務通信』ですが、平成26年の税理士試験、法人税法の問題について批判する記事が掲載されていたとの情報を得て、調べました。

この記事は、KAZさんの協力で、Markが執筆しました。

 平成26年度(第64回) 税理士試験 法人税法の不適切問題について

 < 第64回税理士試験(法人税法)の試験問題①>

Q 今年の8月に行われた税理士試験の法人税法の試験を受けました。問題の中に「資本積立金」という用語があったのですが、資本積立金とはどのようなものですか。

A 資本積立金は18年度改正前まで規定されていた「資本積立金額」のことであると思われます。

 18年度改正前まで資本金等の額は、資本金と資本積立金額との合計額とされていました(18年改正前法法2十六)。

( 中略 )

ただ、現在、資本積立金額という用語の定義はなくなりました。

( 後略 )

通常、税理士試験は、その年4月1日現在施行法令に従って出題すると注釈があるのですが、8年も前に廃止になった重要な法用語を平気で使うとは、法律試験の問題として考えられません。

 < 第64回税理士試験(法人税法)の試験問題②>

Q さらに、その税理士試験の法人税法では、減価償却制度の問いに関して旧定額法の償却率の適用資産があったのですが、問題文の参考資料には定額法の償却率しか提供されていませんでした。旧定額法の償却率と定額法の償却率は、同じ数値なのでしょうか。

A 旧定額法と定額法について、償却率は全て同じではありません。

旧定額法の償却方法は「(取得価額ー残存価額)×旧定額法の償却率」、定額法の償却方法は「取得価額×定額法の償却率」となています(法令48、48の2)。

耐用年数4年の償却率は、旧定額法、定額法ともに、"0.250"、10年の場合の償却率も"0.100"です。しかし、耐用年数3年の償却率では、旧定額法は"0.333"となっていますが、定額法は"0.334"、11年の場合の償却率では、旧定額法が"0.090"、定額法が"0.091"となっています。

旧定額法と定額法は計算法も違い、厳密に使い分けられています。このようなことは業界の人にとっては常識で、改めて紙上で解説するまでもないことです。また、試験においては償却率表は資料として与えられるのが当然で、あるべき資料がないのがまさか問題の不備とは思いませんから、本番の試験で初めて目にした受験者は、自分が問題の読み違いをしているのではないかと逡巡し貴重な時間を無駄に消費したのではないでしょうか。

 

 

「税務通信」は税務に関する最新の法改正事情など会計実務の手引書として読まれているもので、紙面で税理士試験のことを取り上げることなど異例で、データベース検索でも他に見当たりません。会計業界で働いていて税理士試験を受験した者の声を聞き、よっぽど腹に据えかねて取り上げたと、想像します。また、正面を切って税理士試験の批判を展開することができないため、試験問題の不適切な点をFAQの形式をとって紹介したものと思われます。

この年は、悪名高い法人税法の試験委員が作問を手掛けた初年度であり、このような業界きっての重鎮による指摘もむなしく、この試験委員によるずさんな試験問題の出題は以後3年間続くこととなりました。

 

引用元:税務研究会『週刊税務通信』2014/09/15 (No.3327) 68頁 連載 今週のFAQ

 f:id:mark_temper:20160921082302p:plain

 

参考

この年の試験問題について、さらに詳しく不適切論点の引用と解説を書いて頂ける方を募集しています。現在私たちは、このような不適切な出題を繰り返させないために国税庁に抗議するキャンペーンを行っていますが、具体的な問題不備の指摘が不十分なため今のままでは立証できません。この年の受験をされた方は是非、下記リンクのガイドラインをお読みください。