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年金から特別徴収の社会保険料を年末調整で控除できない、ってどこに書いてある?

今回は年末調整について、世の中に出回っている誤った税法知識を訂正しておきます。

質問は、公的年金から社会保険料(介護保険料、後期高齢者医療保険料)が特別徴収(天引き)されている場合に、給与に係る年末調整で、社会保険料控除の適用を受けることができるか?です。
この事例は、65歳(60歳)以上で公的年金の受け取りをしながら、かつ、給与所得もある人の場合に関係します。

目次

結論

控除することができます。適用を受けるには、支払った社会保険料(介護保険料、後期高齢者医療保険料)の金額を「給与所得者の保険料控除申告書」(マル保)に記載します。この場合に「公的年金等の源泉徴収票」(この時期には、まだ発行されていないと思われます。)等の証明書の添付は不要です。しかし、経理担当者は、市町村から送られてくる保険料の決定通知書や領収書で金額を確認しておくべきでしょう。

実務で当該事例に遭遇

私が担当した今年の年末調整で、当該の事例がありましたので、調べました。

国税庁『平成29年分 年末調整のしかた』社会保険料控除の説明のページより、控除できる社会保険料は、①給与から差し引かれているもの、②本人が直接支払っているもの、です。年金から天引きされているものは受給者本人が支払ったものとみなされますので、控除の対象になります。

twitterでたまたま、同じ質問が出回っているのを見ました。この事例で判断に迷われている方は少なくないようです。

他にも情報を頂きました。

確かに、年末調整で控除を適用して、確定申告で改めて源泉徴収票だけを見て計算をすると、誤って二重控除してしまうリスクはあります。しかし、そのような場合に、「年末調整で控除を適用できない」とする規定がない限り、原則通り、控除できなければいけません。調べましたが、そのような通達はありませんでした。


私も確認しました。TKC税研データベース【文献番号】46102785ですね。情報ありがとうございました。


根拠規定

念のため、条文も掲載しておきます。給与所得の年末調整については所法190条に、社会保険料控除については74条に定められています。

下記引用はいずれも、所得税法

(年末調整)
第百九十条 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、第一号に規定するその年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が二千万円以下であるものに対し、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合(その居住者がその後その年十二月三十一日までの間に当該支払者以外の者に当該申告書を提出すると見込まれる場合を除く。)において、同号に掲げる所得税の額の合計額がその年最後に給与等の支払をする時の現況により計算した第二号に掲げる税額に比し過不足があるときは、その超過額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当し、その不足額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収してその徴収の日の属する月の翌月十日までに国に納付しなければならない。

 その年中にその居住者に対し支払うべきことが確定した給与等(その居住者がその年において他の給与等の支払者を経由して他の給与所得者の扶養控除等申告書を提出したことがある場合には、当該他の給与等の支払者がその年中にその居住者に対し支払うべきことが確定した給与等で政令で定めるものを含む。次号において同じ。)につき第百八十三条第一項(源泉徴収義務)の規定により徴収された又は徴収されるべき所得税の額の合計額

 別表第五により、その年中にその居住者に対し支払うべきことが確定した給与等の金額に応じて求めた同表の給与所得控除後の給与等の金額から次に掲げる金額の合計額を控除した金額(当該金額に千円未満の端数があるとき、又は当該金額の全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てた金額)を課税総所得金額とみなして第八十九条第一項(税率)の規定を適用して計算した場合の税額

 イ その給与等から控除される第七十四条第二項(社会保険料控除)に規定する社会保険料(ロにおいて「社会保険料」という。)の金額及び第七十五条第二項(小規模企業共済等掛金控除)に規定する小規模企業共済等掛金(ロにおいて「小規模企業共済等掛金」という。)の額

 ロ その年中に支払つた社会保険料の金額及び小規模企業共済等掛金の額(それぞれイに掲げるものを除くものとし、その居住者がその年において提出した給与所得者の保険料控除申告書に記載されたもの(第百九十六条第二項(保険料等の支払を証する書類の提出等)に規定する社会保険料の金額及び小規模企業共済等掛金の額にあつては、同項に規定する書類の提出又は提示のあつたものに限る。)に限る。)並びに第七十六条第一項(生命保険料控除)に規定する新生命保険料の金額及び旧生命保険料の金額、同条第二項に規定する介護医療保険料の金額、同条第三項に規定する新個人年金保険料の金額及び旧個人年金保険料の金額並びに第七十七条第一項(地震保険料控除)に規定する地震保険料の金額(これらの金額のうち当該申告書に記載され、かつ、第百九十六条第二項に規定する書類の提出又は提示のあつたものに限る。)につき第七十四条から第七十七条までの規定の適用があるものとした場合に控除されるべき金額

(社会保険料控除)
第七十四条 居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払つた場合又は給与から控除される場合には、その支払つた金額又はその控除される金額を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。

2 前項に規定する社会保険料とは、次に掲げるものその他これらに準ずるもので政令で定めるもの(第九条第一項第七号(在勤手当の非課税)に掲げる給与に係るものを除く。)をいう。
一 健康保険法(大正十一年法律第七十号)の規定により被保険者として負担する健康保険の保険料
二 国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)の規定による国民健康保険の保険料又は地方税法の規定による国民健康保険税
二の二 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)の規定による保険料
三 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定による介護保険の保険料
四 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)の規定により雇用保険の被保険者として負担する労働保険料
五 国民年金法の規定により被保険者として負担する国民年金の保険料及び国民年金基金の加入員として負担する掛金
六 独立行政法人農業者年金基金法の規定により被保険者として負担する農業者年金の保険料
七 厚生年金保険法の規定により被保険者として負担する厚生年金保険の保険料
八 船員保険法の規定により被保険者として負担する船員保険の保険料
九 国家公務員共済組合法の規定による掛金
十 地方公務員等共済組合法の規定による掛金(特別掛金を含む。)
十一 私立学校教職員共済法の規定により加入者として負担する掛金
十二 恩給法第五十九条(恩給納金)(他の法律において準用する場合を含む。)の規定による納金

ということで、この記事のタイトルに戻りますが、「年金から特別徴収の社会保険料を年末調整で控除できない」なんてどこにも書いてないですよね。所法190条2号ロの規定により、「その年中に支払つた社会保険料の金額」は、年末調整で控除することができます。

間違った情報

世の中にはなんといい加減な情報の多いことでしょう。ここにリンクを貼るのは控えておきますが、検索で出てくるページには、所法203条の4を控除できない根拠としている情報がありました。同条は、年金からの源泉徴収税額の計算法を定めたものですから、年末調整をするときには関係ありません。条文をそのまま読めばわかると思います。これを税理士が名前を出して書いていたりするのですから呆れます。

(公的年金等から控除される社会保険料がある場合等の徴収税額の計算)
第二百三条の四 次の各号に掲げる場合に該当するときは、前条の規定の適用については、当該各号に定めるところによる。
一 公的年金等の支払の際控除される第七十四条第二項(社会保険料控除)に規定する社会保険料がある場合 その公的年金等の金額に相当する金額から当該社会保険料の金額を控除した残額に相当する金額の公的年金等の支払があつたものとみなし、その残額がないときは、その公的年金等の支払がなかつたものとみなす。


年金から天引きの社会保険料は年末調整でできず、確定申告をしなければならない、と書いているページもありました。「「年末調整でやってくれ」と言ってくる人には、百ページ超ある『年末調整のしかた』を渡して「全部読め」と言いましょう」等と指南していましたが、該当箇所だけ分かればいいので全部読む必要もないですし、全部読んでもそんなことどこにも書いていないですね。

税法をちゃんと読もう

また批判になりますが、難易度の高い税理士試験に受かった人の一部に、まともに条文を読んで解釈もできない人がいるのは残念なことです。予備校で教わったことをそのまま覚えているだけで、教えられていないことを自分で応用するということができないのでしょう。私が税理士試験を残念な試験だと思うのは、こういった法律の根本的な読解能力がなくても、覚えたことを書ければ受かる試験だからです。


 
私は法学部出身でもないですし、上記の条文の読み方を誰かに教わったこともありません。年末調整の経験もこの業界に入ってから恐らく今までに百人分もやったことがありません。税務署の配っている手引きや関係法令を、その都度調べているだけです。それでも確かな情報源から一つずつ組み立てていけば、結論を導き出すことができます。なぜ一部の人には前述したような間違った解釈が出てくるのか、不思議なことです。私も税法を勉強中の身でまだまだ知らないことだらけですが、分かることと分からないことの区別はつくと思います。コツコツとやっていきましょう。


※この記事は法解釈の一事例を示したものであり、閲覧時点での有効性を保証するものではありません。
※ご自身の申告にあたっては、資格と十分な能力を有した税理士にご相談ください。