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採点済み解答用紙の開示請求は可能か

目次

開示請求とは

前回の記事で、税理士試験の開示請求をすると書きました。

開示請求とは何のことでしょうか。

それは、国民に対し政府の説明責任を全うする観点から、法律によって設けられている国の情報公開制度です。「情報公開」と「個人情報保護」の大きく2つの側面から法律が作られています。各行政機関ごとに担当窓口が設けられており、制度としての全体の所轄官庁は総務省です。

  • 情報公開
    • 行政機関の保有する情報の公開に関する法律
    • 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律
  • 個人情報保護
    • 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
    • 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律

開示請求があったときは行政機関の長は、不開示情報が記録されている場合を除き、行政文書を開示しなければならないこととされています。

また、誰でも、国の行政機関に対して、当該機関が保有する自分の個人情報の開示を請求することができ、 開示請求された個人情報は原則として開示されます。

 

採点済み解答用紙の開示請求は可能か

前回の記事でも書いた通り、情報公開法に基づいて税理士試験の模範解答や採点基準となる文書を開示請求をした人は過去にいらっしゃり、当該文書が存在しないことを理由として不開示の決定処分が出ました。

一方で、行政機関個人情報保護法に基づいて「保有個人情報開示請求」の手続を利用して行う「採点済み解答用紙」「合格判定の基礎となる点数(素点)の記録された文書」の開示請求の方ですが、これは普通に考えれば開示されるはずです。

まず、模範解答と異なり、文書そのものが存在するのは間違いありません。

もし、仮にもですが、まさかありえないとは思いますが、国税庁が平成15年審査会で主張したのと同様に、試験問題の作成及び採点は試験委員に委任しており、国税庁として当該情報を保有していない、等と言うのであれば、国税庁・国税審議会は試験実施者としての責任・統治を放棄したものとして、追及の俎上に上げなけれなばならないのは言うまでもありません。自らの存在意義を否定するものとして後々まで禍根を残すことでしょう。

 

いわゆる合格発表の時に送られてくる成績通知書には、科目ごとの合格又はA,B,C,Dといった大まかな成績しか記載されていませんが、内部的には問ごとに点数が振られ、合否判定に用いられているはずです。そうでなければ何千枚、何万枚という解答用紙の中から受験者の公正な順位付け、合格者選出を行うことは不可能です。

そしてこれらの文書が保護法の規定する個人情報に該当することにも疑いはありません。税理士試験の解答用紙には氏名が記載されていません(代わりに受験番号を記入する)が、受験票等の情報と照合することにより特定の個人の識別が可能となるからです。このことは保護法の定義及び、総務省のQ&Aに明記されています。

Q3-1
保護法で規定している「個人情報」とはどのようなものですか。例えば、次のような情報は、「個人情報」に当たりますか。
 6) 採用試験の結果

 

A 保護法上、「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名等により特定の個人を識別することができるものをいいます(第2条第2項)。

 6)については、採用希望者の個人情報に当たります。

「他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別できることとなるもの」(第2条第2項)

以上から、国税庁における当該個人情報の存在性、該当性は明らかですから、必ずや開示が実施されるはずです。

これで大分外堀は埋めたはずですが、なおも不開示の決定を行う余地があるとすれば保護法14条第7号に該当する場合くらいでしょうが、その場合にどのような理由をこじつけてくるのか見ものです。

行政機関の長は、開示請求が行われた場合には、開示請求の対象となっている保有個人情報に不開示情報が含まれている場合を除いて、開示請求者に対し、保有個人情報のすべてを開示しなければなりません(保護法第14条本文)。
 保護法は、このような原則開示の枠組みの下で開示範囲をできるだけ広げる観点から、不開示情報について、「○○に関する情報」などの不開示により保護しようとする情報の類型的な基準に、「○○を害するおそれ」などの定性的な基準を組み合わせることにより、明確かつ詳細に規定しています(第14条各号)。不開示情報の類型は、次のとおり、7類型あります。

 

7)事務事業に関する情報(同条第7号)
 国の機関等が行う事務事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを不開示情報としています。

他の試験では開示されるのが普通です

そして税理士試験では調べる限り前例がありませんが、他の多くの試験で開示が実施されています。

公務員試験

国家公務員試験の成績は、人事院サイトでその開示請求の手順が公開されています。マークシート試験や集団討論、面接試験の得点、順位等が開示されるようです。また、この制度(法律)を利用して書面での開示請求が相当数あったからだと思いますが、ネット上で試験成績を開示する専用のサイトが作られるようになりました。

行政機関個人情報保護法(平成17年4月1日施行)により、誰でも、国の行政機関に対して、当該機関が保有する自分の個人情報の開示を請求することができます。 開示請求された個人情報は原則として開示されます。

  記 載 例(試験の成績を開示請求する場合)


※ 国家公務員採用試験の個人の試験結果(成績)について
受験をインターネットで申し込んだ方(経験者採用試験を除く)は、最終合格発表後一定期間、保有個人情報の開示請求によらずとも、パーソナルレコード(インターネット申込手続に入る画面の下方)にID及びパスワードを入力することで試験結果(成績)を確認・ダウンロードできます。第1次試験の際に配布された「受験心得」の「個人の試験結果(成績)について」をご覧ください。

 人事院が実施する試験の過去の問題を開示請求する場合の記載例
※ 人事院が実施する試験の過去の問題については、現在、平成10年度以降開示しています。開示する「試験問題集」には、すべての試験科目(筆記試験)が含まれています。

 マークシートの順位及び得点と最終合格の順位及び得点が記載された紙1枚が渡され、写しの料金として10円を支払いました。

 

試験結果のほうは、マークシートの順位は最終合格者数から少しだけ漏れていましたが、集団討論及び面接で40人以上をごぼう抜きして、上位3分の1の順位で合格していました。

センター試験

センター試験のマークシート原本と読み取りデータを開示請求し、実際に開示された事例です。センター試験を実施する「大学入試センター」は独立行政法人であるため、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)が適用されます。

センター試験のマークシートの原本を、個人情報開示制度を活用して開示させた上、答案部分について、「個人情報が間違っている」として、答案の書き換えを請求した事例を発見した。 

 

独立行政法人 大学入試センター試験のマークシート答案用紙は、行政機関が取得した個人情報を含む行政文書にあたるので、原本の開示請求が可能である。実際に上記の答申例を見ると、マークシート答案本体と、そのマークシート読み取り結果の成績データとの計 2 点を、「行政文書」として開示請求したところ、きちんと、全部開示されたということである。

 

独立行政法人 大学入試センターが「成績通知」として成績 (点数) を通知するサービスを行っているが、これは、4 月中旬まで発送されない。さらに、成績通知手数料 (800 円) がかかる。一方、個人情報開示請求を、たとえばセンター試験の答案用紙が機械読み取りされるマージンを見越して 1 月末ごろに開示請求書を提出すれば、その時点での機械読み取りされた答案データのファイルと、マークシート原本のコピーが 1 ヶ月後 (2 月末ごろ) に開示される。成績通知書には成績しか記載されないが、この方法で個人情報開示請求を行えばマークシート読み取り結果まで得ることができ、かつ、迅速である (通常の成績通知よりも 2 ヶ月近く早い)。

 

登 大遊 - センター試験のマークシートの原本を、個人情報開示制度を活用して開示させた上、答案部分について、「個人情報... | Facebook

 公認会計士試験

 会計士試験では、試験成績・答案用紙の請求をすることが普通に行われており、その請求方法、体験談等の情報がすぐに見つかります。受験予備校では開示された答案用紙の提供の呼びかけも行っているようです。

 【論文試験成績開示制度】
論文式試験の大問ごとの素点・得点比率、採点前答案用紙のコピーを監査審査会に請求し、取り寄せる事ができる制度です。
取り寄せ方は、監査審議会に直接出向き請求する方法と、郵送で請求を行う方法があります。

 

  開示を請求する保有個人情報
   素点・得点率が知りたい→「平成22年度公認会計士試験受験者ファイルの全て」と記入
   加えて採点前答案もほしい→「及び論文式試験採点前答案」と記入

※30日以内に開示受諾決定を通知が届き、それを返信して初めて開示書類が送られてくる。
※不明な点があれば審査会に電話して「開示請求について問い合わせたい」と言えば担当者が丁寧に説明してくれる。 

金融庁に行って来た
と言っても、去年落ちた公認会計士試験の詳細成績開示と答案開示のため
現在、情報開示の内容が進化していて、採点前の自分の答案を開示できるらしい

 

1Fの個人情報開示用の部屋に通されて、書類を渡して終了
 
意外と簡単だった

 

税理士試験の閉鎖性は時代遅れ

会計士試験では極当たり前に開示が行われているという事実は、税理士試験で開示請求をするにあたっても後押しとなります。司法試験、司法書士試験でも開示を実際に行った方の情報を見聞きしました。

そもそも、会計士試験では開示請求をせずとも、得点比率(大問ごとの得点比率)、順位の記載された成績通知書が全員に送られてきます。

 論文式試験成績通知書について

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税理士試験では、科目ごとに独立して実施される試験であるにも関わらず、科目全体のA,B,Cの大雑把な成績通知だけ。大問ごとの出来すら発表されない税理士試験の閉鎖的・不透明な体質が異常なのです。

他の多くの国家試験で情報開示が実施されているのに、税理士試験が何らかの理由をつけてそれを行わないのであれば、今度はその非開示決定の通知書に書かれた「理由の妥当性」を以って争う余地があります。いずれにせよ前進するはずです。

 

万が一にも、今回は不開示になったとしても、同時に多くの開示請求が届くことにより国税庁側も詳細な成績発表の需要を理解し、来年の合格発表からは、開示請求をしなくても今よりもう少し詳しい成績発表が行われるようになるかもしれません。

 

税理士試験開示請求のやり方

では、具体的な税理士試験の開示請求の書類の記入方法、郵送での送り先、等々詳しい情報は、さらに次の記事へ続きます。

閉鎖的・不透明な税理士試験の現状を打開するため、多くの方が続いてくれることを願っております。よろしくお願いいたします。