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ある税理士の見解「試験の閉鎖的・権威的体質は、国税庁と税理士の関係そのもの」

以前に、税理士の師岡徹先生が、税理士試験適正化活動に賛同し論文を発表されたことを紹介しました。


私は是非これを多くの税理士に見て頂きたいと思いネットに公開されるようお願いしていたのですが、サイト上に掲載された、と連絡を頂きましたので紹介します。

目次

師岡徹「情報公開請求から税理士試験制度を考える(下)」抜粋

論文の(下)から特に私が共感した部分を引用いたします。興味を持たれた方は是非、リンク先で全文公開されていますのでお読みになってください。

他試験との比較:試験委員

(以下、引用文中の強調表示は全て私によるものです。)

(イ)試験委員の任命

(中略)

試験委員の構成については、試験ごとにばらつきがありますが、公認会計士試験は、全試験委員が、大学教授又は公認会計士で構成されています。平成29年司法試験の考査委員は、149名中、法務省等の官僚が33名、判事・司法研究所教官などの裁判所関連が43名、弁護士、大学教授などが、73名となっており、判事と民間の試験委員の合計は77.8%であり、第三者性に関して保障がされています。これらに比べると、税理士試験の第三者性は遅れているといえるでしょう。

試験委員に占める監督官庁職員と民間の構成比率の問題点を指摘されています。それ以外にも、税理士試験の試験委員は総勢21名、税法科目は実質1名であるのと比べると、司法試験の考査委員は総勢149名とその差は歴然です。

他試験との比較:試験結果の発表方法

(ロ)監督省庁の裁量の対応の差

(中略)

これらについては、いずれの資格も法令上は「合格者は官報に公告する」との規定があるのみです。それ以外どのような公表方法を採用するかは、試験を管轄する担当省庁の裁量であると考えるのが妥当です。そうであるとするなら、他の試験が受験生の要望に応える形で、ホームページに掲載するなど、合格発表の方法を変更してきたにもかかわらず、国税庁は未だに郵送による通知です。また、採点基準等についても、他の試験はホームページ上で公表しています。

税理士試験は科目合格制度という特殊な形式をとっていることを考慮しても、合格通知や採点基準の公表については、税理士試験がもっとも遅れていると言わざるを得ません。

開示請求に対する隠蔽体質

4、税理士試験における情報公開の現状


(イ)模範解答の不存在と公平性・妥当性の確保

(中略)

最低でも、模範解答及び採点基準が存在し、第三者がその「公平性及び妥当性」を検証できることが重要です。百歩譲って、いずれかの文書が存在し合理的な理由で開示できないということであれば理解できますが、文書が存在しないということになれば、すべては試験委員の胸の内、採点は完全なブラックボックスとなってしまい、誰も検証することができません。「公平性及び妥当性の確保」を検証する基準は存在しないが、確保されているというのは、見過ごせない矛盾点です。試験制度として大きな制度的欠陥を有していることとなります。


(ロ)該当文書の確認作業
他士業の情報開示請求の諮問庁の対応を見ると、私が確認した範囲内のものですが、「当該文書の探索」(司法書士)、「諮問庁に確認させたところ」(社労士)、「当審査会において、本件対象文書を見分したところ」(公認会計士)など、該当文書の有無の確認や内容の確認を行っていました。しかし、当該裁決の諮問庁である国税庁は、当該文書の有無さえ確認せず不存在を確定させています。
他士業の情報開示請求の対応と比べても、非常に不誠実な対応です。文書の存在を確認する必要さえないほど、理由が明確ということでしょうか。
国税庁は、最新の情報開示請求においても同様の内容を解答しています。
いずれにしろ、模範解答及び採点基準が存在するとすれば、これを隠蔽していたことになりますし、存在しないとすれば、税理士試験の公平性及び妥当性の確保が検証できない制度的欠陥を有していることとなり、私は問題だと考えます。


(中略)


模範解答も採点基準もすべてブラックボックスの中では、試験の「公平性及び妥当性」が確保されているとは言えません。受験生にとってストレスが多く、税理士業界の現状とも相まって、受験生が減少するのは当然ではないでしょうか。

国税庁・税務署の権力的体質

さいごに


これらの事実から見えてくる税理士試験の姿は、模範解答も採点基準も存在せず、採点済み解答用紙も開示されず、合否の通知は郵送で内容は5段階のみ、順位も得点分布図もわからないばかりか、最終合格率は調整されている可能性がある試験である、ということです。改めて考えてみると、試験に関する大切な情報は、試験執行側である国税庁からはほとんど開示されず、受験学校の模範解答等の情報を参考にするしかありません。

誤解をおそれずに言えば、国税庁は「公平性及び妥当性の確保」の根拠は示せないが、国税庁が執行しているんだから問題ない、君たちは黙って受験すればよい、と言っているようなものです。極めて閉鎖主義的で、権威主義的な発想です。自分でもよく我慢して受験したものだなと思いますが、これが法律に定められた国家試験のあり方なのでしょうか。
税理士試験の後進性は、他の国家試験と比べ情報開示請求の件数が少ないことが理由の一つとしてあげられています。

しかし、本質的には、国税庁の権力的体質がその根本にあると考えます。
受験生は、試験合格後に、税理士として国税庁・税務署と日常的に対峙することになります。資格取得後も試験執行機関と対峙関係となるのは士業のなかでも税理士だけであり、隣接士業と大きく異なる特徴です。

国税庁・税務署の権力的体質は、私たちが日々実感していることです。一般の納税者が、いまだに「税務署が怖い」「税務署に何か言えば税務調査で報復される」という感覚を持っていること、21世紀の今日、倉敷民商事件などのように、権力濫用により納税者の権利を主張する市民団体に対し組織的弾圧を行っていること、また、税理士でも、国税庁の「権力」を恐れ、税務調査でも納税者の立場に立たない税理士が存在していることもその表れです。税理士試験に関しては、試験を管轄しているのは国税庁であり、受験生が税理士になれるかどうかの「生命与奪権」を有しています。「開示請求などを行えば試験の合否に影響があるのでは」と正当な権利を躊躇する構図は、国税庁と納税者、国税庁と税理士の関係そのものではないでしょうか。


このまとめに書かれている意見は、私が大いに共感したところです。税理士試験の体制を調べ、他の試験と比較すればするほど、非常識的であることがわかってきます。しかし、その点について当の税理士受験生が受容的であったり、あろうことか国税庁の立場を忖度する発言が出てくることまであるのには閉口します。そのような一部の発想の根底には、国税庁に逆らってはいけない、という意識が税理士業界に支配的であることの表れではないかと考えています。
自浄作用のない業界は腐敗します。私は明らかにおかしなことに対しては抗議を続けたいと思います。