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国税徴収法 試験問題の疑義についての申入書

今年の試験に関して、国税庁に送付する予定の書面の一つを公開します。


平成29年8月25日
国税審議会 税理士分科会 御中

第67回税理士試験 国税徴収法 試験問題の疑義についての申入書

 第67回税理士試験国税徴収法の試験問題について、問題が不明瞭で、出題者が解答に何を想定しているのか不明である、疑義のある問が複数ありました。問題から一意の解答を導くことができず、採点・合否判定に影響があると考えられます。受験対策予備校が行う解答解説においても、出題の主旨、正答がはっきりしないと評されており、複数の予備校で模範解答が分かれることとなっています。
 本件は、本年の国税徴収法の試験問題について取り上げるものですが、税理士試験については、他の科目、過去の試験においても同様に疑義のある出題が多数確認されています。国税庁は、試験案内において、「試験委員の担当科目、試験問題、解答及び得点に関する照会には応じられません。」としており、これら疑義のある問題について明快な説明がされたことも、問題の訂正が発表されたことも、未だかつてありません。税理士試験は、実施機関である国税審議会から正答の発表がなく、受験者の問ごとの評点も明かされないことから、どのように採点され評価されたのか、不透明なものとなっています。加えて、疑義問題が含まれていることから、その評価が適正にされたものなのかについても、疑いが拭えないものとなっています。受験者の間では、税理士試験とは曖昧で不透明な試験であることが半ば常識化していますが、国家試験としてこのような姿が正常であるとは考え難いことです。
 つきましては、本年度の試験の採点、合格発表にあたり、適切な対応がなされますよう、次の通り、申し入れます。




1. 疑義論点

1. 第一問 問2について

 この問は、事例の場合に、更正処分にかかる法人税を徴収するため取れる手続きを、それぞれ差押の始期、要件と理由により答えさせる問題で、解答欄が(1)から(5)まで用意されました。「理論上、滞納処分による差押をすることができることとなり得た時期」という言い回しが、解釈に余地があるものとなっています。(1)から(5)までに全て想定される解答があるとして、(4)と(5)の要件部分がそれ以外に比べ2行ほど狭くなっていたことも考慮すると、順に、繰上保全差押、保全差押、繰上請求による差押、繰上差押、原則の差押を、出題者は答えさせようとしたのではないかと考えられます。しかし、問題文の「滞納処分による差押」を正確に解釈すれば、繰上保全差押は滞納処分ではないため、解答から除かれることとなります。与えられた解答欄に対し、上記の5つから繰上保全差押を除いた4つを解答とするのは、不自然にも感じられます。出題者が法令用語の定義を間違っている可能性も考慮して5つを解答したほうが高得点となりますが、その場合法律的に間違った解答が正解とされることになります。

2. 第二問 問2について

 この問は、設例の場合に、滞納国税を徴収するために取り得る措置、要件、徴収することができる金額(以下、「徴収可能額」という。)と理由を答えさせるものです。問題文に、「設例の自動車に関するものを除き」とあるのがどういう意味か、「自動車に関する記述は不要」なのか、「自動車をないものとする」なのか、問題文からは不明瞭です。それぞれどう解釈したかによって、R国の土地について解答範囲に含めるべきか否かが変わってきます。即ち、「自動車に関する記述は不要」と考えれば、自動車からの徴収金額700万円とQ社株からの徴収金額300万円を合わせて、滞納国税の1,000万円に達し、超過差押の禁止に該当するため、R国の土地は徴収不要となります。要件に「同族会社の第二次納税義務」を、徴収可能額は300万円と答えることとなります。しかし、「自動車をないものとする」と考えれば、徴収不足となるため、R国の土地からも徴収する必要が生じます。要件には「同族会社の第二次納税義務」に加え「徴収の共助」を、徴収可能額はR国の土地400万円を加えた700万円と答えることとなります。どちらが正解か断定ができません。

2. 申し入れの内容

  • 上記疑義論点について、例年10月に国税庁ウェブサイト上で公表される「出題のポイント」において、出題者の考える正答とその根拠が明らかになるように公表してください。
  • どのような解答に対して、どのような評点が与えられるのか、大まかな採点の方針を明らかにしてください。
  • 今後は、全ての科目、問題について、試験実施後速やかに模範解答(解答が複数考えられる場合は別解も含む。)を公表するようにしてください。
  • 今後は、事後に解答が公表されることを前提に、現在の国税審議会における形骸化した試験問題の審議ではなく、試験の分野について学識経験を有する委員による審議を行い、適切な試験問題が出題されるようにしてください。


以上