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「税理士試験適正化要望」を支持する税理士の論文が発表されました

昨年の試験後に私が「税理士試験適正化要望」キャンペーンを始めてから、連絡を下さった方の中には税理士の方も数名いらっしゃいます。その内のお一人である税理士の先生が、この活動に呼応して一つの論文を発表されました。

目次

師岡徹「情報公開請求から税理士試験制度を考える」

その論文は、『税経新報』5月号に掲載されている、師岡徹税理士の「情報公開請求から税理士試験制度を考える(上)」です。

以下、序文を引用します。

 税理士制度を考える上で避けて通ることができないのは、税理士試験の制度です。昨年から税理士試験の結果公表の方法等について、受験生自らネット上で署名を集め「せめて他士業に劣らないものにしてほしい」と運動を始めました。
 私たち税理士の学問や理論は、納税者が現実に困難にぶつかっているとき、それを解決するために研究、発展させる必要があると考えます。未来の税理士が現行の税理士試験の根本的問題につながる批判を提起し、行動しているいま、税理士として応える責務があると考え、本稿を執筆いたしました。


論文では、50年前に税理士試験の制度改正について反対運動があったことが紹介されています。日税連の発表した改正要望書に対して「全国の受験生に知らせるとともに、国会請願や署名活動で運動を盛り上げた。このような税理士業界や受験生などの反対運動の中で、1965年6月1日に廃案となった」とあります。
また、合格率に不自然な点があることを指摘し、「半ば都市伝説として、受験生のなかで「官報合格は人数が調整されている」と語り継がれていましたが、このデータを分析すると、あながち的外れではない、逆にそれが裏付けられたといっても過言ではありません。」としています。

6月初頭に発行となる6月号に掲載される続編では、現在私が行っている開示請求も取り上げ、そこから判明したことについて問題提起される予定です。

論文の見出し

上(5月号に掲載)

1、試験制度改悪と新人会・受験生の運動
2、税理士試験制度はどのような視点から考えるべきか
(1)税理士のあるべき姿
(2)最終合格率の問題点

下(6月号に掲載)

(3)税理士試験の法的規定
4、税理士試験における情報公開請求の現状 
(1)平成15年裁決
(2)解答用紙開示請求と隣接士業の情報公開請求
おわりに

掲載誌の入手はこちら

こちらから『税経新報』の発行元にお問い合わせください。

論文の問題提起から考える;税理士業界がやるべきこと

論文で師岡先生が「「税務行政の補助機関的存在」としての税理士の位置づけが、国税庁の試験制度、受験生に対する姿勢と重なり合う気がしてなりません。」としている点には、私も共感するところです。つまり、国家から独立した代理人・法律家としての立場であるはずの税理士を、上意下達で従わせようとする姿勢。また、税理士の側にも、波風立てないように、国税庁の意向を忖度するような風潮がある、ということです。


税理士試験については、論文で触れられた点以外にも、私がこのblogで指摘しているように、不備のある問題が多数出題されていることや、問題作成のプロセスにチェック機能が働いていないことが、改善すべき問題点です。司法試験や会計士試験と比較しても、税理士試験の情報開示の体制は、明らかに見劣りするものです。


税理士試験がこのような旧態然とした体制で長年放置されてきたのは、上述した国と税理士業界の不健全な関係を下地に、誰も表立って試験の問題点を批判してこなかったことが原因にあると言えます。50年前は、受験生の抗議の声が税理士業外全体に広がって、大勢を動かしました。今やっている「適正化要望」はどうでしょうか。受験生の間に「どうせ無理だろう」と静観している構えが大勢を占め、私一人が騒いでいるだけでは、何も変わらないでしょうね。


当時受験生が反対した改正案(受験科目に民事訴訟法を加え、科目合格制度を廃止する)それ自体、個人的には反対する必要性を感じないのですが、この点への是非は別にして、重要なのは議論が活発に行われ大きな運動に発展したということです。当時と比べると、インターネットが普及して、意見を表明するのは飛躍的に簡単にできるようになりました。「適正化要望」への賛否を示すくらいなら、膨大なコストをかけなくても簡単にできるのです。現状への不満や疑問を感じている受験生一人一人が動くべきだと思います。