Markの資格Hack (税理士試験)

資格試験に四苦八苦しないための資格Hack(シカクハック)情報 税理士試験のここでしか見れない情報を発信しています

税理士試験不適切問題集 平成30年度(第68回) 相続税法

税理士試験不適切問題集、相続税法編を公表します。今年私が受験した相続税法と所得税法でたまたま不適切問題が出題されました。

この程度の不備は税理士試験では騒ぎにもならないのですが、本来、誤りであれば訂正や採点上の措置が発表されなければいけないものです。予備校がいう「どちらも正解になる」「合否は分かれない」等のコメントは、根拠がないその場しのぎです。試験委員の想定する答えは一つで、不当に採点され、そこで合否が変わっている可能性だって大いにあるのです。国税庁が模範解答を発表できないのは、まさにそこの批判を恐れているからで、ここが改善されない限り税理士試験の公平性は失われたままだと思います。

目次

平成30年度(第68回) 相続税法 試験問題

全体の特徴・総評

理論問題は、相変わらず「〜について説明せよ」というベタ書き問題。問1の特定一般社団法人、問2の小規模宅地等(特定居住用宅地等)と、本年度の改正点が早速問われた。
計算問題は、昨年からの傾向通り、基本的な問ばかりで特別複雑で難易度の高いものはなかった。
近年の相続税法の問題の傾向として、時間内に解答欄を全て埋めることは困難な問題量で、配点のない箇所を予想して如何に省略して記載するかという技術が問われるため、税法の問題として望ましい姿ではないと考える。

試験開始前に正誤表が配布され、試験時間内に問題文を計5箇所訂正するよう指示があった。解答にはほとんど影響のない部分であったが、試験時間は問題を解く作業に集中できるべきであるので、このような誤りはないようにしてもらいたい。

f:id:mark_temper:20180906181655j:plain

第二問(計算)

宅地I 小規模宅地の判定

不適切カテゴリ:(資料不足)

<問題指示>
E4ページ 【資料1】3(2)

宅地Iは、養子Eが取得する。
宅地I(150㎡)は、平成6年3月9日から被相続人甲が月極駐車場として貸し付けていたものである。
なお、この宅地は、容積率400%の路線価地域(繁華街地区)に所在し、そのうち56㎡は、都市計画道路予定地(都市計画法第4条第6項に規定する都市計画施設のうち道路の予定地をいう。)である。
また、養子Eは相続開示時から申告期限までの間に被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限までに引き続きこの宅地を有し、かつ、貸付事業の用に供している。


<不適切な点>
小規模宅地等の特例(措法69の4)を適用するためには、建物又は構築物の敷地の用に供されていることが要件であるが、問題文に記載がないため判断ができない。本来は、記載がない以上、適用要件を満たしていないと判断すべきである。しかしながら、以下の通り問題を総合的に検討すると、作問者は特例を適用するものとしてこの問を設定した可能性が高い。
(1)問題の指示により宅地Jにつき配偶者乙に特例を適用しないものとすると、特例の適用枠(限度面積)が余り、不自然である。
(2)被相続人甲、養子Eの宅地の利用状況の資料は、貸付事業用宅地等としての適用を前提としたものと思われる。
(3)宅地Iは繁華街地区に所在し、更地のまま月極駐車場として貸し付けているとは考えにくく、アスファルト(構築物)が敷設されているのが自然である。
(4)構築物の資料がない理由は、問題の設定上、構築物は存在するが既に全額償却済であったか被相続人以外が所有していた、あるいは、作問者が適用要件を忘れていたか、のいずれかが考えられる。

ちなみに筆者は答案用紙の「小規模宅地等の特例の計算」欄に、「宅地Iには、構築物があるものとして適用する。」と記載した上で、特例を適用して計算を行った。

本試験に特有の、問題に書いていない部分を補って解く必要のある問題である。あるべき資料を探し、決断するのに余分な時間を使わせ、受験者を不安にさせる、試験として明らかに不適切な問題である。繰り返すが、構築物の資料がない以上、適用できないと解答した受験者が本来は正解にならなくてはいけないが、作問者の想定外であるため、不正解とされる可能性も否定できない。問題の訂正や模範解答が発表されないため真相は闇の中である。


<予備校の解答>
TAC:特例の適用あり。
大原:特例の適用あり。
ネットスクール:特例の適用あり。
東京CPA:特例の適用なし。

平成6年から継続して貸付事業の用に供されているため、特例対象となるとも考えられる。
しかし、建物又は構築物の敷地の用に供されているかが明らかでないため、敷地の用に供されていないと考えられ、特例対象とはならないものと考えられる。(繁華街地区のため、何も敷設せずに貸付けを行うことは考えにくく、かつ、配偶者乙について適用しないで残余面積を生じさせていることから、意図を汲んで適用することも考えられるが、問題文で明確ではないため、適用はないものとしている。適用していても別解として正解となる可能性はある。)

http://cpa-net.ac.jp/tokyo/wp-content/uploads/2018/08/z68souzoku_kaisetsu.pdf

孫Fの年齢

一応、解答は可能であるので不適切問題から外すが、資料不足とも言える点を指摘しておく。

<問題指示>
E3ページ 【資料1】 2

注2 相続人等は、特に記載がある者を除き、相続開始時において全員20歳以上である。
注4 孫Eは、平成14年3月24日生まれで、(以下略)

<不適切な点>
(1)孫EとFは兄弟である。孫Eが16歳であり、孫Fは通常で考えればEより年下で未成年と思われるが、年齢の記載がないので問題の指示により20歳以上と考えるほかないが、不自然である。
(2)贈与の資料(E11ページ 【資料1】 7)において、贈与時の年齢の記載がないため、一般税率か特例税率かの判定ができない。

孫Fは、年齢が20歳未満である旨の資料がないため、特例税率により贈与税額控除を計算する。(養子Eの出生日が明らかであり、20歳未満の者に該当することから、孫Fも同様に20歳位未満とも考えられるが、「特に記載のある者を除き、全員20歳以上」とされているため、20歳以上として解答するほかない。)

http://cpa-net.ac.jp/tokyo/wp-content/uploads/2018/08/z68souzoku_kaisetsu.pdf