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税理士試験の悪問出題は、戸田奈津子の字幕誤訳問題と同根である

目次

戸田奈津子字幕誤訳問題とは

映画の字幕翻訳・通訳として有名な戸田奈津子の名前を聞いたことのある方は多いでしょう。有名な作品も多く手がけていますが、誤訳や珍妙な言葉が多いことでも知られています。映画の翻訳は時間的やフォーマット上の制約があり難しいことを差し引いても、ストーリーの理解に関わる根本的な部分でのミスが目につきます。『アポロ13』ではオンとオフを全部逆に訳したとか、後述する『ロード・オブ・ザ・リング』の件は根が深いです。


そんな彼女へのあるインタビュー記事がネットで話題になっています。具体的に問題となった部分を上げて問題の核心に触れてはいないものの、彼女が誤訳との批判に対しどのように考えているか、ということがよくわかるインタビューとなっています。字幕の作成の仕事というのは全てを一人が担っており、彼女が他者からの真っ当な批判に聞き入れる耳を持たないため、全く改善される見込みがないということがわかります。御歳80歳になる彼女が業界で重宝されるのは、仕事が早く、ギャラが安いからだという噂もあります。

この記事に対する反響は、はてなブックマークに寄せられたコメントを見てみるとよくわかります。

『ロード・オブ・ザ・リング』で起きた問題というのは、こちらの記事が詳しいです。

『ロード・オブ・ザ・リング』(1作目)字幕版公開時には、「あまりに誤訳が多すぎる」「文字数の制限を考慮しても、訳のセンスがない」「人物の口調、敬称が統一されていない」「作品の世界観を破壊している」「原作者、監督の翻訳指示を無視している」「文字数の制限を考慮しても、不適切な字幕が多すぎる」などと、原作ファンが中心になって字幕版の翻訳を激しく非難。同時公開された同作日本語吹き替え版の翻訳が優良と評価されたことも、相対的に字幕版の翻訳の評価を落とすことに繫がった。
その結果、ついには「戸田奈津子を『ロード・オブ・ザ・リング』の字幕翻訳から外すべき」「字幕を修正すべき」という抗議・署名活動がおこり、署名は主にネット上で活動する有志によって、日本配給担当の日本ヘラルドへ送られる。

だが戸田は第2部以降でも降板せず、ヘラルドは誤訳があったとは認めないものの、劇場版に比べて、DVDでは字幕の制約が緩和されるためという名目により、1作目のDVD版字幕はかなりの修正が行われた。

( 中略 )

『二つの塔』劇場公開版以降でも田中明子の監修などの元、字幕翻訳体制の全面的な改善が見られ(まず田中明子が全文を訳し、それを戸田奈津子が字幕用に修正するという形になったという)、以後の字幕の質は大幅に改善した。

戸田奈津子 - 中つ国Wiki

税理士試験の問題は実質一人で作っている

一人の仕事に全体が左右される部分が大きく、外からの批判にも聞く耳を持たないため、改善を求める署名活動が起きている。驚くことに、税理士試験で起きているのは、これと同じことだと考えます。


税理士試験の問題は、国税庁・国税審議会から任命された21名の試験委員が作成しています。


これだけ見ると、それなりに多くの試験委員が共同で作っているのだと思いがちです。しかし、税理士試験は11科目が独立してそれぞれ別の試験として実施されます。会計科目である簿記論と財務諸表論は4名の試験委員が共同で作成していますが、税法科目は2名ないし1名の試験委員が作成しています。しかも試験委員が2名いる科目は、1名が国税庁の課長級の職員で理論問題を担当、もう1名は実務家である税理士が計算問題を担当している、と慣例的に言われています。つまり税法科目では、実質的に一人の試験委員がそれぞれの問題作成の全ての職責を担っていることになります。それぞれの試験委員の担当は正式に発表されていません(試験委員の名前のみ官報で公表)が、過去の試験委員経験者から漏れ伝わってくる話を聞いて予備校などが発表していますから、おそらく正しいものでしょう。


極めて重要な国家試験の問題作成を、実質的に一人で行っているというのは、妥当性や公平性の観点から問題があると言わざるを得ないでしょう。
というのは、単純な計算や事実を知っているかどうかで白黒つくマークシートのような問題ならまだしも、法律解釈の論点が分かれる問題や記述の方法が多様に取れる筆記試験では、試験委員一人と考え方が一致するかどうかで左右される部分が大きいからです。会計士試験の試験委員や、司法試験の考査委員についても調べましたが、一つの問題に対して多数の委員が関与するのが常識的です。私がこの問題を弁護士に相談に行った時にも「信じられない」と言われました。

ちなみに日商簿記検定の関係者に話を聞いたことがあるのですが、あちらは試験委員一人で作っているようなことを聞きました。ただ、それなりのキャリアのある大学教授が作っていますから、日頃から論文執筆などで他者からの批判の目にさらされることには慣れているでしょう。国税庁の職員が職務の片手間に作ったり、税理士会で役が回ってきただけのぽっと出の税理士が作るのとはわけが違います。

そんなお粗末な状況ですから、税理士試験では明らかな資料不足や不可思議な問題が出題されてしまうのですが、過去60年に渡って、問題の訂正や採点上の特別の措置が発表されたことも一度もありません。他の国家試験、看護師や、薬剤師、社労士の試験では行われていることです。万全を期して問題を用意してもミスは起こり、それについては事後的に得点調整の対応を発表します。それに対し、税理士試験では問題の作成から採点まで一人で行って出題のミスすら認めません。いかに税理士試験がずさんで閉鎖的な体制で行われているかがわかります。



この点について、当初から書こうと思ってずっと書けていないのですが、追及していかなくてはいけないと思っています。

  • 諸悪の根源は国税審議会・試験委員にあり(編集中)

問題の根源はミスをチェックしていないシステムにある

今回はインパクトを重視してタイトルに戸田奈津子氏の名前を持ってきましたが、この記事の主旨として御大を糾弾するものでないのは言うまでもありません。同様に、「税理士試験適正化要望」活動で訴えている目的は、悪問を作成した特定の試験委員の名前を論うことではありません。その道の大家と言えど、膨大な仕事の中の極一部に限った話ならば、ミスをしてしまうことだって、きっと、あることですよね。試験委員の名前を挙げて責任を取らせようだなんてことは私は考えていませんよ。特定の試験委員の名前で検索すれば、恨んでいる人は相当いることがわかりますけどね。例えそれがプロとしてあり得ないミスだとしても。ミスをしない人間なんていないですものね。


何より問題は、そのミスをそのまま製品としてリリースしてしまうプロダクション(悪問を試験で出題してしまう国税審議会)にあるのだと思います。その原因が、仕事を発注したプロダクションが大先生に対し物申すことをできないからなのか、単に仕事をチェックする手間とコストを惜しんでいるからなのか、それは私にはわかりません。しかし、その一手間をかけてさえいれば、防げた悲劇が現実にそこにあります。趣味で見る映画の字幕がおかしかった。それとは比較にならない、並々ならぬ思いが税理士試験の受験者にはあります。

回答欄がない、償却率がない、資料の矛盾、この様な試験を受けて適正な合格者を選抜することは不可能ですし、第三者が解答すれば事前に発見できることです。

坂大 直也 さんからのコメント · Change.org


受験者が人生をかけて挑む試験です。問題にミスがないよう万全の体制で試験を実施するのは義務ではないでしょうか。そのことを私は繰り返し申し上げています。−−−「税理士試験への要望1.適切な問題の出題」。試験の実施前に複数の試験委員による問題の相互チェックを行い、適正な試験が実施されるよう改善提案を行っていきます。