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科目選びの参考に 国税徴収法はこんな科目です

税理士試験の一科目でありながら、どんな科目なのかあまり多くは知られていない、国税徴収法。私のおすすめ科目であり、国徴のプレゼンスを上げていきたいと前々から思っておりました。私は平成29年に国税徴収法に合格しましたが、この経験をまとめておこうと思っているうちに時間が過ぎてしまいました。最近、以下の記事に頂いたコメントや、私の周りでもこの科目について聞かれましたので、この機会にお答えしたいと思います。


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目次

国税徴収法とは

法人税法や消費税法などと異なり、全くイメージがつかないと思われる方が大半でしょうが、ざっくり言えば、税金を滞納した場合に、国はどのような措置を行うかについて定めています。歴史を見ると、明治30年制定(改正前の前法)と法人税法よりも古く、全ての税法の一般法である国税通則法もこの法律から分離して誕生しました。その適用範囲は、国税と言いつつ、地方税や社会保険料等もこの法律を準用することになっているため、公租公課全般に及びます。

第一条には、この法律の目的が定められており、詰まるところ、「国税収入を確保する」ためです。税金は国家の運営の根幹に関わるものであり、その徴収に強権力を与える重要な法律です。

(目的)
第一条 この法律は、国税の滞納処分その他の徴収に関する手続の執行について必要な事項を定め、私法秩序との調整を図りつつ、国民の納税義務の適正な実現を通じて国税収入を確保することを目的とする。

e-Gov法令検索

その内容を大きく分けると、国税と他の債権の調整、滞納処分、緩和措置、第二次納税義務について定められています。

「国税と他の債権の調整」は、滞納者に対して租税官庁以外の民間人が債権者でいた場合、担保を取っていた場合等に、その徴収の優先順位がどのように成立するか定めたものです。上記条文の「私法秩序との調整を図りつつ」という部分に表れています。後述する計算部分に大きく関わります。
「滞納処分」は、督促に始まり、差押、換価、配当と進む、その一連の流れを定めた手続法的側面です。
「緩和措置」とは、納税の猶予、換価の猶予、滞納処分の停止といった、滞納者に事情があって税金を払えない場合に行われる措置です。
「第二次納税義務」とは、納税義務者が滞納している税金を払えない場合、その納税義務者と一定の関係がある者に対して代わりに納税義務を負わせる制度です。


国税徴収法の特徴

税理士試験の一科目としての国税徴収法の特徴を挙げます。

・近年唯一受験者が増加している科目。
・絶対的な学習量が、全科目の中でおそらく酒税法に次ぎ少ない。
・受験生のレベルが相対的に低いので短期合格も可能。
・租税実体法でなく手続法であるため、他の税法と大きく性格が異なる。
・国税徴収法の他に国税通則法、民法を学習する。
・ベタ書き・スピード勝負の相続税法とは対極。
・酒税法・固定資産税のようにワンミスアウト、運の要素が高くなく、実力が順当に反映されやすい。
・論理的・法的思考力、事例に合わせた文章能力が問われる。
・そのため人によって向き・不向きがある。
・合格を確実にするための受験テクニックは必要。


以前の記事でも少し触れていますので、引用します。

税を徴収する側の論理で税理士実務と関係ないなどと言われがちですが、意外と実務でも使えるのではないかと思います。なぜなら、税法の基本となる国税通則法を最も丁寧に学習する科目であり、徴収側の根拠法を知ることは、納税者側の権利を守る上でも役立つ知識を学べるからです。理論の比重が大きいながら、他科目のように丸暗記、ベタ書きでなく、事例への要件当てはめを問われるなど、ちゃんと法律の試験をやっている感じがします。民法の物権関係や登記の知識も実務に役立つと思いますし、やっていて面白いです。ということで、国税徴収法は私からもオススメの科目です。

また受験者減少!科目の傾向からも税理士試験制度改革は急務 - Markの資格Hack (税理士試験)

近年唯一受験者が増加している科目。

税理士試験の受験者は過去10年以上減少を続けていますが、そんな近年にあって、ほぼ唯一の受験者が増加傾向にある科目です。その原因については、上記のリンク先の記事でも分析しています。

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絶対的な学習量が、全科目の中でおそらく酒税法に次ぎ少ない。

合格に必要な学習量が他の科目に比べて明らかに少ないです。大原、TACでは、年明け1月からの週1講義で十分に合格圏に達します。年内からのコースもあるようですが、同じ内容を2周するようなので個人的には不要と思います。理論テキストの厚みも、酒税法には負けますが、それに次ぐ薄さです。予備校の案内では、計算がなく理論100%の科目と言われていますが、これは正確ではないと思います。他の税法の様に理論パートと計算パートが独立しているわけではないので表現するのが難しいですが、理論の中に配当計算の考えが組み込まれており、計算問題の中に根拠規定として理論を書くところがあります。他の科目で一番性質が近いのは財務諸表論ではないかと思います。

受験生のレベルが相対的に低いので短期合格も可能。

これが受験生にとって一番魅力的に映るところだと思います。相対試験である税理士試験では、周りの受験生の出来が合格のし易さと直結します。他の受験生の練度が低ければそれだけ合格しやすくなります。私が受けていた時の教室の雰囲気を思い出しても、正直、舐めてかかっている受験生が多かったと思われます。その分、予備校のカリキュラムをしっかりこなすだけで合格に近づきます。

租税実体法でなく手続法であるため、他の税法と大きく性格が異なる。

所得税法や法人税法のような、実際の法律関係(租税債権)がどのような場合に成立するかを規定する法律を実体法と呼ぶのに対し、国税徴収法は手続法と呼ばれる部類になります。法の理念をどのように実現するかを具体的に定めたものです。一つ一つの規定を組み合わせて結論に結びつける論理的・法的思考力、事例に合わせた文章能力が問われます。理論暗記については、理解を重視すべきと思います。一言一句の精密な暗記は必要ありませんが、全てのページに書いてある内容を作文でもいいので書けるようになっている必要はあります。合格を確実にするためには、そこは避けて通れません。

国税徴収法の他に国税通則法、民法を学習する。

税理士試験では一応、国税通則法は全ての税法科目の試験範囲に入っているのですが、他の税法では、申告、更正、決定に関することを理論で1題触れる程度でしょう。国税徴収法では、国税通則法も広く扱います。全ての税法に共通する内容を定めた法律であり、例えば、所得税や贈与税の納税義務がいつ成立するかといったことも前提として触れるため、税法入門として、税法学習経験のない人の最初の科目としてもお勧めします。また、留置権や抵当権といった民法の物権関係、不動産登記法の知識を前提にした部分が出てきます。興味があれば多少自分でも調べた方ががいいかもしれませんが、基本的に予備校のテキストでカバーされています。税理士として資格を得た後の実務ではこれらの知識を活かす場面が出てくると思いますし、知っておくべきだと思います。

ベタ書き・スピード勝負の相続税法とは対極。

私が受験していたここ5年程の相続税法の試験の傾向は、理論はベタ書き、計算は単純な小問が大量にあるスピード勝負の速記試験でした。答案を如何に速く埋めるかという受験テクニックの要素が大きかったです。それに対し、国徴は考えて答える試験です。試験時間も余ります。私が受験した平成29年について言えば、今までにないパターンの出題で例年になく時間が足りないものとなりましたが(過去記事参照)、それでも速記試験とは対局にあると思います。

酒税法・固定資産税のようにワンミスアウト、運の要素が高くなく、実力が順当に反映されやすい。

酒税法・固定資産税は、一連の問題がリンクしており、一問あたりの配点も大きいため、ワンミスが合格を危くする科目です。未対策の論点が出たときなど、一か八かで書いた答えで合否が別れるという博打の要素があります。私の友人は酒税法の模試で100点を取る実力があったのに、なかなか本番では受かりませんでした。国税徴収法は、日頃の模試等での成果が順当に反映されやすい科目だと思います。

そのため人によって向き・不向きがある。

上記の項目から考えると、他の税法とは性格が異なる異色の科目であることがわかると思います。これがその人に向いているかどうかは、人によって別れると思います。私は完全に向いている方でした。ベタ暗記より理解が得意な人にお勧めします。自分の性格と比較して受験科目とするかご検討ください。

合格を確実にするための受験テクニックは必要。

というわけで国税徴収法は「受かりやすい科目」ということを説明してきました。とは言っても、やはり相対試験で合格するためには、他の受験者から頭一つ抜きに出る必要があります。私も独自のまとめ資料を作ったり、最速でミスのない答案を作る問題への書込みテクニックも研究してきました。税理士試験に決して楽な道はありません。皆様の一日も早い合格をお祈りします。



具体的な勉強法等についても、近日となるかお約束できませんが、記事にしていきたいと思います。引き続きこのblogをご覧頂ければと思います。