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平成29年度免除者の内訳 国税OBや修士号取得者の人数が開示請求により判明

近年、税理士試験受験者が減少し、代わって試験の免除者が増加していることはこれまでにお伝えしてきました。しかし、免除者と一口に言っても、国税OBがなるルートや大学院で修士号を取得するルートなど、様々なルートがありその正確な内訳がどうなっているのかは公開されていません。日本税理士会連合会が公表している税理士登録の統計でも、やはり免除者は一くくりにされています。
このように、税理士の出身は様々なルートで構成されていますが、その内訳は税理士業界の実情を表す基礎的な資料として重要だと思うのですが、なぜ税理士会がこれを調査していないのか、私は兼ねがね疑問に思っていました。

そこで国税庁に開示請求して、平成29年度の税理士試験免除者の内訳を調査しました。判明した事実をここで初公開します。

目次

開示請求No.17 「平成29年度税理士試験免除申請の数」

開示請求は、2018年6月3日に行いました。請求した文書は「平成29年度における税理士法7条2項及び3項による研究認定申請の数、認定結果、不認定となった理由がわかる文書並びに同8条による免除申請の数がわかる文書」です。


2018年7月3日に部分開示の決定が出ました。
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開示文書

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分析

開示文書により判明した事実を分析します。

平成29年度の一部科目免除決定者の内訳

修士号取得者の免除制度は平成13年税理士法改正で変わりました。平成13年以前に大学院に進学した者は、論文の内容が審査されることもなく、試験に1科目も合格していなくても会計学又は税法の免除を受けることができました。この10名が学位取得後すぐ免除申請しないで十年以上寝かせた今、免除申請をした理由はよくわかりません。
平成14年以降に大学院に進学した者は、最低1科目合格してから会計学又は税法分野の学位論文について研究認定を受けることとなりました。平成29年度に認定を受けたのは71名ということです。

平成29年度の全部科目免除決定者の内訳

こちらは、免除により累計5科目に達し税理士資格を得た者で、全部で1,601名いました。うち、研究認定申請者が553名でした。試験合格者の795名よりは少ないということになります。元公務員は国税と地方税合計で1,000名もいるのには驚きました。5科目合格者(最後の年に2科目以上受験して不合格科目があったため試験合格にならなかった者)は39名と、試験合格者の5%程度いるということがわかります。

集計

上記の分類を組み替えて再集計したものがこちらの表になります。

修士号取得による免除者は562名、公務員OBは1,000名!

私の予想では、いわゆる院免除、修士号取得者が増え、試験合格者と同程度か既に逆転していると思っていましたが、そこまではいっていなかったようです。全国に試験免除に対応している大学院がいくつあるのかわかりませんが、しかし、一年にこれだけの数の者が税法・会計学に関する修士論文を書いて卒業していると考えるとなかなか凄いものだと思います。補足しておくと、これは卒業者の数とイコールではなく、大学院を出ても1科目が受からないので免除申請できていない者もいると思われます。逆に過年度の卒業生が今年申請したというパターンもあります。


それよりも、元公務員が国税と地方税合計で1,000名もいるのには驚きました。昔と違って顧問先の斡旋制度がなくなったので国税OBは減ったと聞いていましたが、なんのことはない、一番大きなウェイトを占めていました。過去5年の全部科目免除決定者の推移を見ると2,000名を超えていた時期もあるので、団塊世代の大量退職があった頃にはもっと多かったかもしれません。



ということで、今まで明かされていなかった税理士試験免除制度の実態の一部が判明しました。前述したように「試験合格」には試験免除者が含まれ、「試験免除」にも5科目合格者が含まれているので、実態が見えにくく、統計としての意味をなさなくしています。これは国税庁と税理士会が分類の仕方を見直して、適切に反映させるべきだと思います。

そして今後も修士号取得者は、増えていくと考えます。その推移を継続的に観察したいと思います。