Markの資格Hack (税理士試験)

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自分の経験だけで税理士試験についてわかった気になっていないか(「試験適正化」へのよくある誤解)

私が、「税理士試験がおかしい」と訴え始めてかれこれ2年ほどになります。ネットで税理士試験のことを調べたことのある極々一部の方には、「試験適正化」とか言っている奴がいる、程度には知って頂けるようになってきたようです。


しかしながら、
「問題がおかしいって言うけど、税理士試験ってそんなものだよ。」
「みんなそういう試験を乗り越えてきたんだし、変える必要なんてない。」
「どうせ試験に受からない言い訳でしょ。」

こういう意見が、税理士試験経験者である税理士の方の一部にも見られるようです。大変残念な気持ちになります。伝わっていないんだな、と。

「いやいやいや、違いますよ。そういうレベルじゃないんですよ。」と。





この記事は、税理士試験の現状と、私の訴えている「適正化要望」の本質について、今北産業(今来たから3行で説明して)の方にもこの記事を読めばわかってもらえるように書きます。まあ、3行で全部伝えるのは無理なのですが、無理矢理やってみます。

  • 「試験適正化」は試験の否定ではなく改善活動
  • H28年度、法人、消費の問題はマジでヤバイ
  • 問題点を理解した上で建設的な議論を


それでは、本編をお読みください。

目次

「試験適正化」は、試験や試験に受かった税理士を全否定するものではない

さて、最初に言っておきたいのが、私は税理士試験を繰り返し批判していますが、税理士試験そのものや、過去に試験に受かって税理士になった人の努力を全否定するものでは、全くない、ということです。おそらく、試験を批判する私に攻撃的に向かってくる方の中で心的現象として起こっているのは、「自分が精力を注いでいる(た)価値観を否定された」とか、試験と一心同体となってしまった方による「攻撃された」という気持ちだと思います。大きな誤解です。



私は税理士にとって税理士試験はとても重要なものだと思っています。だからこそ、適正でない部分(後で説明します)があるのが問題であり、放置すれば試験ひいては税理士の価値が下がってしまう、未来に向かって試験を良くしていきたい、と思って批判しているのです。税理士試験に受かるために大変な努力が必要なことはよくわかっていますし、敬意を表します。過去に試験に受かった方の名誉のためにも正しく評価すべきです。


「税理士試験適正化要望」は、試験を否定するためではなく、試験をより良く改善するためにやっている活動だということを理解して頂きたいと思います。受験生や税理士にとってメリットとなるはずのことです。

税理士試験を批判している私に寄せられる意見

私の元には、日々いろいろな意見が寄せられます。去年のこの時期もありましたが、本試験直前期でイライラした受験生と思われますがツイッターで攻撃的にぶつけてくる人もいます。このblogに襲撃予告的な書き込みが執拗に書き込まれた時期もありました。*12ちゃんねるの税理士試験総合スレッドにも私を誹謗中傷する書き込みが時折見られます。初期の頃は私も書き込みにいったこともありましたが、最近では放置しています。


例えば、下記の記事のコメント欄に現れた方もその一例です。

5科目合格税理士

5科目合格して、独立して成功している税理士は税理士試験を肯定している現実に気づかないといけない。
5科目合格出来ない人間、大学院免除税理士や税理士以外の人間が税理士試験を否定しているのは、ただの嫉妬によるものと気づかないといけない。
5科目合格した税理士でも、独立して成功出来てないのであれば、それはその方の能力に問題があることに気づかないといけない。
この能力とは専門的知識は当然として、人を惹きつける人間的魅力が備わっているかどうかであると気づかないといけない。
税理士以外の人間が税理士試験を否定している記事を持ってきて、大学院免除を肯定するのは、北朝鮮やマスコミの情報操作と同じことであると気づかないといけない。

5科目合格税理士

記事を拝読しましたが、没問や両方正解になっているのではないでしょうか。その分、確実ライン、ボーダーも下がっているのではないでしょうか。
税理士試験に関わらず、他の資格試験でも出題ミスは起きています。
取れる問題を確実に取れば受かるのが、税理士試験です。こういうトラップに焦って、取れる問題を落としていると受かりません。

まあく (id:mark_temper)

「没問や両方正解になっている」「その分、確実ライン、ボーダーも下がっている」

予備校も同じことを言いますけど、何を根拠にそんな楽観的な見解を信じられるのですか?
出題ミスがあったのはお認めになりますね?
他の試験では出題ミスがあれば、訂正や謝罪、採点上の措置の発表が必ずあります。
上記の出題の不備は私が国税庁に書面でただしていますが、完全に無視です。
出題の不備すら認めないのだから、独善的で不公平な採点がされている可能性も有意に推認されます。
試験が適切に実施されていない以上、改善を求めるのは当然のことですよ。
相続税法の問題についても、上記の2科目ほど大きな問題ではありませんが、書いています。


それから、試験が適正でないから改善を求めることと、私が試験に合格していないことは全く別の問題なのに、なぜ結びつけて考えるのですか?
私は、自分の利益のためにやっているわけではありません。
ただ自分が税理士になれればいいのだったら、こんな大変なことやってませんよ。
私はこの問題が大変重要なことだと考えているからやらざるを得ないのです。
上述した私の考えは、過去記事で何度も書いてますから、私に意見されるのなら全部把握してからにしてください。

要点のみを抜粋しましたので、会話の流れを全部見たい方は元の記事をご覧ください。

この方はきっと自分が5科目試験で合格したことを誇りに思っていて、試験を否定されたことに腹が立ったのでしょう。お気持ちはわかりますが、試験を正当化したいあまり出題ミス(不備)まで正当化するのは行き過ぎです。そもそも、不備があったことも私が指摘するまで知らなかったようです。


「税理士試験は適正だ」という意見について

ある匿名の税理士の方が自身のblogで、「税理士試験は適正でない」という私の意見を否定する記事をお書きになっていらっしゃいました。

「この問題は難解だ。誰も解けない。難しすぎる。」

「複数回答が考えられる問題は、何が答えかわからない。」

「試験問題の指示が曖昧すぎる。問題が適正でない。」

これらは別に税理士試験に限ったことではありません。
どんな試験でも当然あります。

ただ、5科目受験しなくてならないため、単にそういった機会が多いだけです。


違います。私は、難しい問題だから適正でないと言っているのではありません。難しい問題でも答えがちゃんと出せる問題であれば問題ありません。解答が複数考えられることが即不適切だとも言っていません(複数の解が正解になっていれば)。何が「不適切問題」かは定義しています。*2

もちろん、知らない問題があるは当然です。
というか、試験や受験では普通のことですよね。
創造性が求められる数学などは特に。

だって、学校のテストではないんですから。
大学受験だって、そりゃ知らない問題や解き方がわからない問題でますよ。

昔の事は忘れましたが、少なくとも相続税や法人税については、
適正でない問題やわけのわからない問題はありませんでした。

知らない問題や解き方がわからない問題が出たとかいうことは、議論の対象になっていません。(通達の微細な部分を問う出題が適切かという議論はありますが、問題の中心的部分ではありません。)

結局のところ、この方も、自分が受けた時は不適切な問題などなかった、あっても無視できる程度のものだった、だから今受験生が騒いでいるのも大げさに言っているだけだ、と決めてかかっているわけです。現状の試験で何が問題となっているかお調べにもなっていないわけです。大変無責任な態度です。お仕事でも事実や法令を確認せず、過去の経験だけで回答されるようなことをなさるのでしょうか?


大変厳しく批判させて頂きましたが、このようなお考えの方は他にも少なからずいらっしゃると思われ、誤った認識に基づく言説が広まってしまうと困るので、代表して反論させて頂きました。個人攻撃をする意図ではなく、事実を知って頂きたいという思いで書きました。どうかご理解頂き、お許しください。


自分の経験だけで税理士試験について語っていないか

要はみなさん、自分の経験を元に、自分の知っている税理士試験の知識の範囲で問題を語っているから、話が噛み合わないのです。税理士試験は科目が多く分かれており、回(試験委員)によって傾向も変わります。税理士試験を受けた経験のある人は多くいても、自分の受けた回、科目以外のことは正確に理解して語ることができるとは言い難いです。これが税理士試験の問題を議論する時の前提の共有のされにくさとして、障害ともなっています。*3最新の状況を一番知っているのは現役の受験生で、昔合格した人の経験はどんどん役に立たなくなっていきます。(専門的知識があり、最新の状況も理解している予備校講師の方にはもっと積極的に発言をしていって欲しいと思います。)



それから、税理士試験も毎年少しずつ変わっています。例えば、以前は試験問題の表紙から第一問の問題が透けて見えるということがあったようですが、少なくとも平成24年度には裏側が透けないような加工が施されるようになりました。平成27年度から試験中の途中退室ができなくなったので、帰り道で配られていた予備校の解答速報はなくなりました。昔は、試験終了の合図があってもすぐにはペンを置かずに解答を続けるようにと指導されているようなこともあったそうですが、今は絶対にやめておくべきです。何が言いたいかというと、如何に過去の自分の経験だけでわかった気になって物事を語るのが危険か、ということです。これは自分に対する戒めでもありますが、調査してわかった事実や統計を一つ一つ積み上げて、思い込みや偏った意見にならないよう常に気を付けています。(余談ですが、大学院で論文を書くという作業をした人は、自分の意見を疑うという態度を持っているのではないかと思います。)

まずこれを見てから議論に参加してください

ですから、私はきちんと議論の前提を提示しています。私が税理士試験の不備を訴えるようになったきっかけは、平成28年度の法人税法と消費税法のデタラメな試験問題でした。税理士試験は軽微な不備は回を問わず昔から多々あるようですが、この回の試験問題の不備は度を越していました。試験として成立しているかも怪しいほどでした。以下にまとめていますから、まずこれをご覧になってください。

この記事で示したものが不十分であれば、私が開示請求で入手した実際の試験問題と答案用紙をPDF化したものを、メールで送りますから仰ってください。これを実際に2時間で解いてみてください。それでもなお適切な問題だったと言えますか?


この平成28年の試験問題不備を受けて、私が立ち上げた署名活動で3つの要望として掲げたのが、以下の記事に示したものでした。これが「試験適正化」の中身です。このうち要望の3つ目である、点数の開示は、今年(平成30年度)から部分的に実現しました。

試験問題の不備が起きる背景には、試験運営の杜撰な体制、言わば、国税庁の不作為があると、私は考えています。3つの要望は、喫緊に対策が必要で、かつ、すぐにでも実現可能なこととして掲げたものでした。この3つが実現して困る人は、手間が増える国税庁関係者の他にはいないはずです。試験適正化に反発する前にそこを考えてみてください。


また、これ以外にも税理士試験の問題点は多岐に渡り、一言では説明が難しいですが、以下の記事にまとめていますから、こちらもご覧になってください。

試験の改善のために建設的な議論をお願いします

ここまで読んで頂けた方には、「試験適正化」が必要な理由に納得して頂けるのではないかと考えていますが、いかがでしょうか?それでも別の意見がある方は、どうぞお聞かせください。


上記3つの要望を中身とする「試験適正化」を実現した先には、税理士試験には抜本的な改革が必要であると私は考えています。その理由の1つめは、現状の試験が暗記偏重・スピード勝負で法律家としての素養を試す試験にはなっていないことです。*4*5理由の2つ目は、試験で5科目合格するまでに平均10年以上と時間がかかり過ぎ、優秀な若者が受けたいとは思えない仕組みになっていることです。*6


抜本的な改革には、経験豊富な税理士や大学教授が数年単位で議論を重ね、どのような試験にしていくべきか決めるべきだと思います。本来は、まだ税理士でもない私が意見していくのは僭越だと思っています。国税庁への開示請求やこのblogに文章を綴っていくのも、他にやる人がいないので私が相当の時間と労力を投下してやっていますが、本当はこの時間をもっと勉強に充てなければいけません。この先は、見識のある税理士の方々が税理士会等の場で議論を重ね、実現していって欲しいと思います。どうか、よろしくお願いします。