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開示請求No.3 意見書「試験委員の人材は枯渇しているのか」

開示請求No.3は、受験者の成績開示について争っている件ですが、先日届いた国税庁の理由説明書に対し私から意見書を提出しました。おそらく、この審査請求、私が勝つことになりそうですが、手を抜かずに全力で書いてきました。この連休も、これを含めた開示請求の事務仕事やら、大学院の課題やらで、どこにも出かけられずじまいでしたよ、やれやれ。

目次

税理士試験開示請求No.3「受験者の成績」これまでの経緯

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これまでの経緯は、前の記事をご覧ください。

意見書

平成30年5月6日
審査請求人:

情報公開・個人情報保護審査会
平成30年(行個)諮問第64号
「本人に係る平成28年度税理士試験(相続税法)の成績の記録された文書の一部開示決定に関する件」

1 処分庁の理由説明書について審査請求人の意見

1-1 機械的、断片的知識しか有しない者が高得点を獲得する可能性について

1-1-1 具体性のない主張
 審査請求人は、先に提出した審査請求書において、具体的に現状の試験問題を分析した上で処分庁が危惧するようなことは起こり得ない旨主張したのであるが、それに対する処分庁の理由説明書4(1)における説明は、全くこれに答えていない。事実に向き合おうとせず自らの主張のみを端的に繰り返す姿勢は不誠実極まりなく、採用すべきでない。
 処分庁のいう「機械的、断片的知識しか有しない者が高得点を獲得する可能性」というのは、仮定に仮定を重ねた架空の産物であり、この前提を基にした「税理士試験の目的が達せられなくなるおそれ」には具体性がなく、妥当と言えない。
 福岡地判平成22年1月18日(保有個人情報不開示決定取消等請求事件)では、「法14条7号柱書に定める「支障」の程度は、名目的なものでは足りず、実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も、単なる抽象的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が必要とされるものと解すべきである。」とされている。本件不開示部分は、同号の不開示情報には該当しないと考えられる。

1-2 試験委員の負担が増すとの所論について

1-2-1 試験委員の受忍義務
 処分庁は、理由説明書4(2)において、試験委員の負担について種々主張するのであるが、要は、事務局に対し試験に関する質問、照会、苦情が多い、と言っているのである。
 平成19年5月28日答申(平成19年度(行情)答申第64号)「平成17年公認会計士第2次試験の合否決定に関する文書の一部開示決定に関する件」では、「そもそも試験委員の職責にかんがみると、試験問題の適否に関する批判や受験生等からの問い合わせが公認会計士・監査審査会事務局を通して多少あったとしても、その程度の負担は、受忍限度の範囲内であると言うべきであり、試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとまでは言えない。」としている。本件についても同様の理由で処分庁の主張は否定される。


1-2-2 試験委員の人材は枯渇しているのか
 処分庁は、本件不開示部分が開示されることによって質問等が増加すると予想され、それにより「良問の作成が困難になり」、「優秀な学者や実務家が試験委員の就任に応じてくれなくなる」としているが、税理士試験の試験委員とはそれほど人材に枯渇しているのであろうか。試験委員は、受験者が試験時間の2時間で全身全霊をかけて作成した答案に確定的な評価を下し、受験者が税理士としての資格を得られるかどうかの運命をも握る地位にあり、その重責は想像に難くない。しかしながら、試験問題や採点への批判を恐れるあまり、良問の作成が困難になったり、試験委員の就任に応じる者がいなくなったりするというのだとしたら、なんとも悲しい状況である。斯界には、未来の税理士を選抜する試験委員としての職責を果たそうという、気概のある優秀な学者、実務家はいるはずである。もし、現状の試験委員の選定に困難を抱えているのだとしたら、その選定方法、業務の実施体制、報酬等が責務に見合っていないかもしれないので、見直す必要をも感じさせるものである。
 試験委員の負担軽減を重視するあまり、適切な情報開示を行わない、その結果、試験が適正に行われていないのではないかという批判を呼ぶようでは、本末転倒であり、厳正に行われるべき国家試験の責任を果たしていないことになるのではないか。
 種々述べてきたが、ここまでの小括として、仮に本件開示により試験委員の負担が増すとしても、それは試験委員に当然期待される責務の範囲内であるから、税理士試験の適正な遂行に支障するとは言えず、法第14条第7号柱書きの不開示事由には該当しない旨、主張する。

1-3 事務局の人員で開示請求に対応できないとしている点について

 処分庁は、本件の開示を行うことにより、相当数の受験者からの開示請求が行われ、2名の担当職員で実施している事務局において対応できないとしているが、これは得点開示の需要があることを示しているに過ぎず、法第14条第7号柱書きの想定する不開示事由ではない。このような理由を以って開示できないという決定を下すのは法の趣旨に反するものであり、仮に相当数の開示請求が行われたときには、事務局の人員を増強してでも対応することが処分庁に課せられた義務である。

1-4 同種の国家試験での開示事例について

 審査請求書で述べた、司法試験、公認会計士試験では本件開示請求で開示を求める得点を含む成績開示が行われている点について、処分庁からは特段言及がないため、その妥当性を認めたものと考える。

2 結論

 以上のことから、処分庁の主張はいずれも失当であり、本件不開示部分に法第14条第7号柱書きの不開示情報に該当すると認められる点はない。よって、原処分を取り消し、全部開示を行うべきである。

所感

意見書1-1, 1-2-1までは、今までに指摘してきた内容です。1-2-2では、かなり感情をこめて受験者の気持ちを代弁するつもりで書きました。国税庁は「良問の作成が困難になり」「優秀な学者や実務家が試験委員の就任に応じてくれなくなる」などと、誠とも方便ともつかないような言い訳を並べるので、そんなことでいいのか、そもそも試験委員の選び方が間違っているのではないか、と強く言ってやりました。試験委員の業務体制の改革の必要性まで言及しておきましたが、ぶっちゃけ審査請求の審議においては蛇足であることは承知の上、しかし私が国税庁に本当に言ってやりたかったことでもあり、一応結論としては、開示の可否の判断に結び付けてあります。これもテクニックのうちとしてみるか、ただの脱線とみるかの判断は委ねます。

本文約2000字と、若干長くはなりました。今までの経験から、あんまり長く書くとまともに読んでもらえないような感触がありますので、きちんと評価してもらえることを願って筆をおきます。