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【トリビア】給与支給日に死ぬと所得税が課税されるが、一日前に死ねば課税されない

国税庁サイト・質疑応答事例からの小ネタです。

従業員に支給する給与は、給与所得として源泉徴収の対象になります。これは当然の取り扱いです。では、従業員が不慮の事故で死亡してしまい、給与の支給が死亡後になってしまったらどうなるのでしょうか?給与は、従業員の生前の労働に対する対価として支払われるものであり、たまたま支給の時期が死亡後になったとしても、同じように課税されるのが公平なように思われます。しかし、質疑応答事例によれば、そうではないようです。





このトリビア、つまり、こういうことになります。

給与支給日に死ぬと所得税が課税されるが、一日前に死ねば課税されない。


通達で、給与所得の「収入すべき日」は、「支給日」とされています。所得税の課税理論上、死亡後に収入したものは、その者の所得ではないということになっているのでしょう。となると、上記の結論が導かれるのは当然となります。

労働の提供完了時を「収入すべき日」とすれば、死後に支給があったとしても所得に含まれるという、上記とは異なる結論が得られます。しかしそうなっていないのは、給与計算の締め日から支給日までは数日~1か月程度の期間が空くことが通常ですから、年末調整等で金額を早期に確定させる必要性を考慮したものかもしれません。

(相続財産とされる死亡者の給与等、公的年金等及び退職手当等)
9-17 死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等(法第30条第1項《退職所得》に規定する退職手当等をいう。)で、その死亡後に支給期の到来するもののうち相続税法の規定により相続税の課税価格計算の基礎に算入されるものについては、課税しないものとする。(昭63直所3-3、直法6-2、直資3-2、平元直所3-14、直法6-9、直資3-8改正)

(注) 上記の給与等、公的年金等及び退職手当等の支給期については、36-9、36-10及び36-14の(1)に定めるところによる。


〔証券投資信託の収益の分配(第11号関係)〕|国税庁

(収入金額)
第三十六条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340AC0000000033#323

(給与所得の収入金額の収入すべき時期)
36-9 給与所得の収入金額の収入すべき時期は、それぞれ次に掲げる日によるものとする。(昭63直法6-1、直所3-1、平19課法9-1、課審4-11改正)

(1) 契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等(次の(2)に掲げるものを除く。)についてはその支給日、その日が定められていないものについてはその支給を受けた日

〔収入金額〕|通達目次 / 所得税基本通達|国税庁


しかし、この質疑応答事例の説明、課税されない理由が、「本来の相続財産として、相続税の課税対象となるため」とされているのが納得いきません。生前に支給された給与で所得税が課税されたものであったとしても、死亡時に使われずに残っている限り、相続財産に含まれて相続税が課税される点では同じです。支給が死亡の前か後かで、所得税を課税するか否かの取り扱いを変える理由としては本質的ではないように思われます。


「死亡後に支給期が到来するものについては、その者の所得に含まれないため」という説明に変えるのが妥当と思われますが、いかがでしょうか。識者の見解を伺いたく思います。




こんなことを悶々と考えてしまっている私でした。