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開示請求No.4「第67回税理士試験・採点前答案用紙」理由説明書と意見書 空虚な返答に怒り心頭

「第67回税理士試験・採点前答案用紙」の黒塗り開示に対し、国税庁の理由説明書を受け取りました。その全文と、私が情報公開・個人情報保護審査会に提出した反論の意見書を公開します。

目次

国税庁の理由説明書

国税庁の理由説明書

国税庁の理由説明書

国税庁の理由説明書

要約

2の税理士試験に関する説明はこれまで同様。メインとなる4の不開示情報該当性について、要約してみます。

本件不開示部分を開示すれば、

  • 答案の収集を行った受験予備校の受験技術等により、機械的、断片的知識しか有しない者が高得点を獲得する可能性が高くなる。
  • 試験結果に不満を持つ受験者等が、試験委員及び事務局に対し、質問、照会、苦情等を行う件数が増加すると予想され、業務に支障を生じるおそれがある。
  • 試験委員の負担が増すことで、優秀な学者や実務家が試験委員の就任に応じてくれなくなること等から、税理士試験の目的が達せられなくなるおそれがある。


要は、これまでに採点済み答案の審査請求でも国税庁が行ってきたのと何ら変わることない主張です。私の提出した審査請求書で上記のような理由は既に否定しているのに、完全に無視するかの如く、同じ主張を繰り返しています。

意見書

これに対して、私の提出した意見書は以下の通りです。

意見書
平成30年3月19日

1 処分庁の理由説明書について審査請求人の意見

1-1 機械的、断片的知識しか有しない者が高得点を獲得する可能性について

1-1-1 具体性のない主張
 審査請求人は、先に提出した審査請求書において、具体的に現状の試験問題を分析した上で処分庁が危惧するようなことは起こり得ない旨主張したのであるが、それに対する処分庁の理由説明書4(1)における説明は、全くこれに答えていない。事実に向き合おうとせず自らの主張のみを端的に繰り返す姿勢は不誠実極まりなく、採用すべきでない。
 処分庁のいう「機械的、断片的知識しか有しない者が高得点を獲得する可能性」というのは、仮定に仮定を重ねた架空の産物であり、この前提を基にした「税理士試験の目的が達せられなくなるおそれ」には具体性がなく、妥当と言えない。
 福岡地判平成22年1月18日(保有個人情報不開示決定取消等請求事件)では、「法14条7号柱書に定める「支障」の程度は、名目的なものでは足りず、実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も、単なる抽象的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が必要とされるものと解すべきである。」とされている。本件不開示部分は、同号の不開示情報には該当しないと考えられる。

1-1-2 類似の試験での事例
 また、これも審査請求書に書いたことであるが、司法書士試験や公認会計士試験では、採点前答案用紙の全部開示が受験者の点数や偏差値といった成績の開示と共に行われており、それによって試験の実施に何の支障が起きることもなく継続されている。これらの試験と税理士試験の間にどのような性質的違いがあるのか問うたが、処分庁は説明をしていない。合理的な説明ができないのであれば、不開示としなければならない理由はないと考えるべきであろう。

1-2 質問や照会が増加することについて

1-2-1 試験委員の受忍義務
 処分庁は、理由説明書4(2)において、試験委員の負担について種々主張するのであるが、要は、事務局に対し試験に関する質問、照会、苦情が多い、と言っているのである。
 平成19年5月28日答申(平成19年度(行情)答申第64号)「平成17年公認会計士第2次試験の合否決定に関する文書の一部開示決定に関する件」では、「そもそも試験委員の職責にかんがみると、試験問題の適否に関する批判や受験生等からの問い合わせが公認会計士・監査審査会事務局を通して多少あったとしても、その程度の負担は、受忍限度の範囲内であると言うべきであり、試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとまでは言えない。」としている。本件についても同様の理由で処分庁の主張は否定される。

1-2-2 増加する負担はない
 処分庁は、本件不開示部分が開示されることによって質問等が増加すると予想される、としているが、これにも根拠はない。そもそも、処分庁は受験要項やウェブサイト上で、「試験問題、解答及び得点に関する照会には応じられません。」としており、試験委員や事務局が問合せに真摯に対応したことなどないのではないか。少なくとも、審査請求人は、試験問題の疑義や、試験会場での運営の不適切な行為について、問合せを文書で送付し(平成29年8月25日「第67回税理士試験 国税徴収法 試験問題の疑義についての申入書」「大阪会場 法人税法における試験監督の不手際についての申入書」)、また、国税庁に直接出向き、試験の改善を要望する185筆の署名とともに税理士試験に関する質問を託し(平成30年2月2日 国税庁調整室連絡調整係担当者と面談)てきたが、唯の一度も国税庁から返答が来たことすらない。現状でも受験者等からの問い合わせに一切対応しない方針を貫いていることが問題であるのに、負担が増加する等という主張は、笑止千万である。

2 結論

 以上のことから、処分庁の主張はいずれも不当又は過当であり、本件不開示部分に法第14条第7号柱書きの不開示情報に該当すると認められる点はない。よって、原処分を取り消し、全部開示を行うべきである。

雑感

国税庁の主張は、私から見れば、抽象的な可能性を言うばかりで、不開示の妥当性が認められる内容ではないと思います。そのことを判例も用いて、一つずつ指摘していきました。他にも、理由説明書について反論を盛り込みたいところはあったのですが、あまり長くなると審査会でろくに検討されないばかりか印象を悪くする可能性もあると考え、今回はなるべく簡潔になるように心がけました。


はっきり言って国税庁とは対話の通じなさに、怒りや呆れの感情を抑えることができませんでした。意見書に書く際には、なるべく冷静に事実の指摘に留めようと努力しましたが、受験者からの問い合わせで負担が増加するというところは、「笑止千万」という表現になりました。これでも「馬鹿げている」とか「支離滅裂」とかいろいろ推敲した挙句、比較的マイルドかと思い決めたのですが(苦笑)。


果たして審査会はどう判断するでしょうか。