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「特定の受験者の情報のみを出力することは技術的に不可能である」平成29年(行個)諮問第120号 国税庁理由説明書

現在、私が行っている審査請求は3件が進行中ですが、諮問第119号と120号について、国税庁の理由説明書が到着していますので、公開しておきます。今回は、諮問第120号の理由説明書全文掲載と、その分析、反論を行います。


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目次

平成29年(行個)諮問第120号 国税庁理由説明書

120号は、「平成28年度第66回税理士試験(相続税法)における受験者の成績(点数及び順位)の記録されたファイル(本人部分)」の開示請求です。私の提出した審査請求書は以下の通りです。

理由説明書

国税庁理由説明書

国税庁理由説明書

国税庁理由説明書

国税庁理由説明書

本件対象文書について

理由説明書の前書き(理由説明書 2 税理士試験制度等について)は、先に行っている審査請求(諮問71号)の記載と同じで、特に目新しい情報はありません。

3 原処分の妥当性について
(1)本件対象文書について
処分庁は、審査請求人の得点が記録されたファイルは、受験者の受験番号、氏名、科目別の得点などの保有個人情報が記録された平成28年度(第66回)税理士試験における相続税法の成績の記録されたファイルしかないことから、当該ファイルを本件対象文書として特定した。

なお、本件請求保有個人情報のうち順位を記録したフィルについては、(中略)順位を付ける必要がないことから、そもそも作成していない。

国税庁の主張するところによれば、税理士試験では順位をつけていないということですが、科目別の得点はデータとして保有していることに間違いないようです。一方、このデータの入力元となる答案用紙には科目別の得点の他、大問ごとの評点欄が設けられていることから、これらについても内部的にデータとして保有しているのではないかと考え、審査請求書に記載しておきましたが、理由説明書ではこの部分の記述について無視されています。


法第14条第7号柱書きの不開示情報該当性について

「受験者の得点を開示することで税理士試験の遂行に支障を及ぼす」「法第14条第7号柱書きの不開示情報に該当する」と主張していますが、このような論理は到底理解ができないものです。その理由は、諮問71号の審査請求において私が提出した意見書3-1,3-2で述べた通りです。

法第15条第1項該当性について

いよいよ、今回の理由説明書で肝となる部分です。

税理士試験では、受験者の得点などの情報は、事務局において、税理士試験業務のために使用しているシステム(以下「本件システム」という。)に電磁的記録として登録され、その電磁的記録に基づき、合否区分の整理や税理士試験結果通知書の作成等が行われる。
受験者の情報のうち得点については上記(2)のとおり不開示情報に該当すると認められるが、本件システムのプログラムでは、入力した受験者の得点をその他の情報と分離することが技術的に不可能である。

しかしながら、本件システムは、一定期間において受験者の情報を紙媒体により出力することが可能であるが、当該情報は、開示請求者以外の特定の個人を本人とする保有個人情報部分(対象外部分)と一体不可分となっており、特定の受験者の情報のみを抽出し出力する機能が備わっていないことから、全受験者の情報を全て出力せざるを得ない。そうすると、同様の開示請求があった都度、平成28年度(第66回)税理士試験受験者数35,589人に関する膨大な保有個人情報を一旦全て出力した上、不開示部分である得点や開示請求者以外の特定の個人を本人とする保有個人情報部分(対象外部分)を別途手作業で加工する必要が生じる。そして、税理士試験の得点を公表していない現状において、同様の開示請求が行われた場合には、限られた人員の事務局で運営している税理士試験について、例えば例年12月中旬に実施している合格発表時が遅れることや、例年4月上旬に実施している受験案内の公表時期が遅れて翌年度の受験予定者へ影響を及ぼすなど、その適正な運営に多大な支障を及ぼすおそれがある。


「入力した受験者の得点をその他の情報と分離することが技術的に不可能」「特定の受験者の情報のみを抽出し出力する機能が備わっていない」との説明には、驚きました。そんな使いにくいシステムがあり得るのでしょうか。本件システムは、「税理士試験結果通知書」(下記参照)を出力するためのシステムです。本当に、一人分のデータのみを出力することができず、都度全受験者分を出力しないといけないとしたらなぜそんな不便な設計にしているのでしょうか。コンピュータのシステム設計等に詳しい方がいたら教えて頂きたいですが、そのようなシステムは常識的なものでしょうか?

「税理士試験等結果通知書」と「税理士試験結果通知書」の見本

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税理士試験|関内会計公式ブログ~闘う税理士岩崎智彦@横浜関内から引用


また、理由説明書では、紙媒体に出力する方法しか記述してありませんが、データをそのままデータとして取り出すことはできないのでしょうか?私の提出した審査請求書には、「当該電磁的記録の記録されたデータベースシステムから本件保有個人情報を抽出し、汎用的なCSV形式のファイル等に保存して審査請求人に開示することを求める。」と書きましたが、やはりこの部分も無視されています。


さらには、開示請求が殺到すれば事務局の人員が逼迫される、合格発表や翌年の受験案内が遅れる、等と脅しをかけてきています。開示請求が殺到するかどうかは不確定であり、時間に制限はないのだから何か月かけてでもやればいいのです。法で認められた適正な権利の行使に対し、行政庁の人員不足は理由にならず、足らないのなら今後増やせばいいでしょう。このような仮定に仮定を重ねた否定ありきの主張は受け容れられるものではありません。

疑問・反論まとめ

  • 受験者の得点は、法第14条第7号柱書きの不開示情報に該当せず、国税庁の主張は失当である。
  • 情報を紙媒体に出力することが可能な一定期間とは何か?期間を過ぎるとどうなるのか?
  • 特定の受験者の情報のみを抽出し出力することは本当に不可能なのか?
  • 当該個人情報をデータで取り出すことはできないのか?
  • 事務局の人員が不足していることや時間がかかることは、適正な権利の行使を妨げる理由にならず、当該開示を行うべきである。
  • 開示請求が多数行われるという仮定に基づく主張は妥当でなく、恒常的にそのような需要が認められるのであれば人員を増強して対応すべきである。



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