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意見書part5 国税庁には適正な試験を実施する能力がない

審査会に提出した意見書を何回かに分けて公開してきました。今回が完結編となります。

shikaku-hack.hatenablog.com


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目次

以下、本文となリます。

4 国税庁が本件開示に対し否定的である真の理由

4-6 本来の成績順位と逆転が生じている疑惑

 本来適切な措置が講じられていれば防げたはずであるが、上記4-3から4-5で述べた瑕疵が何重にも重なった結果、税理士試験では悲劇的な状況を招いている。問題の不備により、正解が求められないにもかかわらず、たまたまある数値を記入した者は正解とされ、そうでない者は不正解とされている可能性がある。このような偶然の要素により得点できる箇所が1問2問でなく8問もあれば、正確な成績判定など行うことはできない。もちろん、全く実力のない受験者が運だけで合格できるようになるとは考えられないが、受験者の多い科目では、合格ライン付近の1点差に何百人という受験者が並んでいると考えられる。そこで仮に5点でも評点が変わってしまえば、本来の成績から合格すべき受験者とそうでない受験者に大幅な逆転が生じてしまう。税理士試験の合格率は概ね10%前後であるが、上位5~30%前後の受験者は不適切問題のせいで入れ替わりが起きている可能性がある、と審査請求人は考える。
 そのような不適切問題は避けて、適切な問題だけを得点することで合格できるという指摘があろうか。それは、机上の空論である。税理士試験のような試験時間内に全ての問題に解答することが不可能な試験では、受験者が初めて見る問題の中から瞬時にそれが不適切問題であると判断して解答作成の対象から除外するなどということは不可能である。ということは、不適切問題に手をつけた者はその時点で不利となる。試験における機会の均等が失われているのである。
 不適切問題は、試験合格に必要な要素のうち運の要素を大きくし過ぎるという効果をもたらし、受験者の成績順位に番狂わせを生じさせる。「税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定する」という試験の選別機能が低下しているのである。このような事態を国税庁は、一体いつまで放置しておくつもりであろうか。

4-7 国税庁には適正な試験を実施する意欲がない疑惑

 種々論じてきた問題がなぜ長年放置されてきたかという、構造的な要因を考えてみると、国税庁には適正な試験を実施しようという積極的な意欲がないからではないか。
 税理士試験の受験料は、他の試験と比較すると群を抜いて安価である。1科目の場合で3,500円と司法試験の8分の1であり、民間の検定試験である英検1級の8,400円よりも安い。財務省の平成25年度予算執行調査において、試験の運営が赤字になっているので「受験手数料について、税理士法第9条の「受験手数料は、実費を勘案して定める」に基づき改正の検討を行うべきである。」と勧告されたにもかかわらず、結局、受験料を値上げするのではなく、運営コストを削るという選択をしたようだ。問題作成にコストがかけられないから、チェックする体制がとれるだけの十分な数の試験委員を任命できていないのではないか。試験の運営にコストがかけられないから、トラブル等への対処が十分に想定された運営マニュアルが作成されていない、教育が不十分な人材派遣会社のアルバイトが試験会場に配置されてしまう、解答作成に不適当なほど狭い机の会場を充てがってしまう、といった問題が起きるのではないか。試験で不正があったがアルバイトの試験監督や報告を受けた管理者と思しき者が何も対処しなかったという目撃例が報告されている。*1 無駄な費用をかけないように努める行政の姿勢は評価すべきだが、受験者の願いとしては、値上げしてもいいから適正な試験を行って欲しい、ということに尽きる。
 国税庁の試験担当事務局の職員は2名しかいないし、国税審議会の試験に関する審議は年2回程度、1回数時間程度しか行っていないことが公開されている議事録からわかる。これでは、どういった試験を行うべきかという真剣な議論など行われていないと考えるのが妥当である。国税庁にとって、税理士とは、職員OBが無試験で資格を与えられてなるものという認識があるのではないか。前職が税務職員(国税)である者が税理士の30.0%を占めている。*2 国税OBが無試験で税理士になれることは職員が一生プロとしてやれるということ、言わば生活保障として必要なことだと、国税庁長官が国税審議会の場で答弁している。*3
 国税庁では適正な試験を実施できないとなってくると、試験の根本的なあり方、試験の実施主体の改革まで含めて議論が必要なのではないか。

5 他の国家試験等との比較(成績開示の状況)

 提出期限の関係でこの章は省略する。追加で意見書を提出する機会があれば検討したい。
5-1 司法試験
5-2 公認会計士試験
5-3 国家公務員試験(人事院)

6 結論

 上記理由により、国税庁の主張はいずれも否定される。第一問(理論問題)は、評点欄に加え、問1(1)(2)、問2(1)(2)(3)それぞれの部分点、第二問(計算問題)は計算過程を含めて解答欄の全部について、開示を行うべきである。


7 参考資料の提出について

7-1 審査請求人が提出する資料

 審査請求人から、審議の参考資料として、以下の資料を提出する。

7-1-1 予備校発表の模範解答
  • 第66回 税理士試験 解答速報 相続税法 学校法人大原学園(1号資料)
  • 第66回 税理士試験 解答速報 相続税法 TAC株式会社(2号資料)
  • 第66回 税理士試験 模範解答 相続税法 資格スクール大栄(3号資料)
7-1-2 予備校発表の合格点に関する資料
  • 第66回税理士試験 酒税法 データに基づく最新合格ラインの読み・正答率・難易度・得点分布表 学校法人大原学園(4号資料)
7-1-3 問題の不備に関する指摘
7-1-4 予備校発表の試験委員の担当科目
  • 税理士講座 税理士試験 試験委員発表<資格の大原>(7号資料)
  • 税理士 平成28年度 試験委員発表 資格の学校TAC(8号資料)

7-2 国税庁に提出を求める資料

 国税庁に対し、審議の参考資料として、以下の資料を提出するよう要請する。

7-2-1 試験問題及び答案用紙
  • 相続税法、法人税法、消費税法の各科目
7-2-2 税理士試験結果通知書の見本
7-2-3 試験委員の選定方法・選定理由・担当科目に関する資料
7-2-4 試験委員の問題作成・採点手順に関する資料

*1:税理士試験の不適切な運営2 過去の試験会場・不正・トラブル - Markの資格Hack (税理士試験) http://shikaku-hack.hatenablog.com/entry/unbelievable_examination_site2

*2:日本税理士会連合会, 平成26年,「第6回税理士実態調査報告書」資格取得前の職業

*3:試験問題の審議はこんなもの 第5回国税審議会(平成16年)議事録から興味深い議事を - Markの資格Hack (税理士試験) http://shikaku-hack.hatenablog.com/entry/20170206national_tax_council_notes