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【相続税法】課税価格の集計〜算出税額の集計表を埋めるべきか問題

去年までは私も相続受験生でしたが、試験後に脱力してしまい、実務以外で触れることもなくなり、まもなく一年が経とうとしております。twitterで情報取集をしておりましたら、相続の試験のことを思い出させるtweetがありました。私に一年前の感情をありありと思い出させた、それは、「相続税の課税価格の集計〜各人の算出相続税額の集計表を埋めるべきかどうか」問題です。

目次

相続税の課税価格集計表

相続税の課税価格集計表とは、相続税法の試験で計算の答案用紙の中盤から後半にかけて必ずある、以下の表です。相続税の申告書の様式に倣ったもので、答案の前半で計算した相続財産等の課税価格を集計して転記し、相続税の総額、各人の相続税額の集計表へとリンクしていきます。相続税の基礎控除額、法定相続人、法定相続分の計算欄は、最も重要な箇所で、ここを間違うと合格は難しいと言われるような点ですので、計算問題の中で真っ先にここを解答する受験者は多いでしょう。

相続税の課税価格集計表

相続税額集計表


資格の大原 第66回税理士試験 解答速報 相続税法から引用

近年の試験問題は表を全部埋める時間がない

しかし、この集計表の、上記した基礎控除額等以外の残りの部分を埋めるには結構な時間がかかり、ここをきちんと電卓を叩いて埋めるべきなのかは、受験者の間で諸説があります。というのも、近年の相続税法の試験は非常にタイトであり、試験時間内に計算問題を全て解答するのは不可能です。予備校のプロの講師をしても無理だと言われています。特に昨年までの3年間を担当した試験委員の計算問題は、過去に未出題のどこの予備校も対策していないような難しい論点はほとんどなく、比較的単純な基礎的な問題だが量が多い、という傾向でした。


この集計表を全部埋めようとすると、3〜5分くらい余分にかかるでしょうか。そして、正確に計算して埋めたとしても、おそらくそこに配点はないでしょう。課税価格計算までの途中1箇所でも間違うと集計がずれますから、数値はまず合わないでしょう。本試験での3分は大きいです。3分あれば他の問で点を伸ばすことができます。点がないなら集計表は思い切って省略するか、という考えも当然浮かびます。しかし、この表が空欄というのも印象が悪い気がします。そこで受験者の間では点を伸ばすための様々な心理戦、戦略が飛び交うわけです。


私の受講していた予備校の講師が繰り返して言っていたのは、「問題の冒頭に、「各人の納付すべき相続税額を計算の根拠を明らかにして求めよ」とある。課税価格の集計や算出相続税額が埋まっていない答案は採点されなかったとしても文句は言えない。」ということでした。「過去に、とてもできる受験生がいて、予備校の答練ではいつも高得点を取るが、本試験では何年も落ち続けている人がいた。その人は課税価格計算の計算過程をほとんど省略していて結論だけ合っていた。計算過程の式も全部書くように指導したら、やっと受かった。」とも、言っていました。私は、その講師の言うことを全部信用したわけではありませんが、一理あると思いましたので、自分の判断で本試験でも、課税価格〜算出相続税額の集計表まで埋めるようにしていました。その代わり計算過程に⚪︎囲みの数字を用いるなどして、同じ数値を繰り返し書かないで済むよう時間短縮に工夫していました。


ところがどうも、去年の試験後に私がネット上で見聞きした情報によると、この集計表を省略してしまう人も結構いたようで、省略しても合格した人は多数いるようです。点はないと思いながらも、この表を律儀に埋めていて不合格だった私はなんだったのか、というやるせない思いがします。もちろん、何が正解なのかはわかりません。今年は試験委員が変わったと思いますので、問題の傾向や採点の基準が変わっている可能性もあります。今年受験される方は、このあたりの情報も参考にして、ご自分の解答作成のスタイルを作ってください。



このような問題は試験として適切でしょうか?

さて、私の怒りの矛先は、やはり試験制度に向かいます。誰も解けきれない量の計算問題を出しておいて、集計表を思い切って全部飛ばした人が合格。そんな判断に迷う問題、作る方がおかしいのではありませんか?重要ではない・点がないような部分は、初めから記入しなくてもいいような問題・答案用紙の形式にしておけばいいではないですか。簿記のように難しすぎる問題を捨てるとかいうことではないのです。問題の指示に従って丁寧に解答を作成すると点が取れない。どこも重要といえば重要だし、必須といえば必須事項ですので、採点基準次第で引っくり返る可能性があります。その判断に合理的な根拠を見つけることは困難です。決め手は試験委員とのシンクロ、運です。相続税の知識や、税理士への適性、能力とは関係ない、如何に効率よく省略するか、点のあるところを一か八かで選ぶか、というような採点者の恣意的な判断で合否が変わるような試験でいいのでしょうか?



誤解のないように言っておくと、私は、去年までの相続の計算の試験委員をされた先生は、比較的いい問題を作る方だと、思っているのです。法人や消費のように、正解が絶対出せないような不適切問題と呼べる問題はありませんでした。相続でも過去問を見ると、不適切な問題がありました。相続時精算課税適用財産の記入欄がないので、みなし相続財産の欄に無理矢理書くしかない問題。取引相場のない株式の計算過程欄が狭すぎてまともに書けない問題。小規模宅地等の判定に必要な要素が足りないので、無理矢理推測して判断せざるを得ない問題。


それらに比べると、去年の先生の問題は品質の高い問題でした。答案用紙の形式が、あらかじめ財産ごとに区切られており、横の罫線がない等、従来の慣行を破ったものでしたが、これも見やすく、解答作成も採点もしやすいように工夫されたのではないかと思わせるものでした。問題の傾向は前2年を踏襲するもので、試験委員の先生がやりたかった思い切った改革を、慎重に3年目にやってきたという印象です。



だからこそ、去年合格できなかった自分が残念ですし、落ちたのが問題のせいとは言いませんが、採点基準には釈然としない思いがあります。今の相続税の受験者のレベルの高さからすると、あの問題だと時間に余裕があれば、感覚的には3割程度の人は満点近く取ると思います。それを10%の合格率にするため、無理矢理2時間の時間制限でふるい落としているような印象です。どこまでスピードを上げれば合格できるのか、相続税は速記試験とも言われています。


税理士試験がおかしい理由

税理士試験の問題点は、問題の作成も採点の基準も試験委員一人の判断に委ねられているところにあります。一人の恣意的な判断に左右されている可能性があり、そして採点基準も模範解答も公開されていないのでそれが検証すらできない。試験委員次第で基準ががらっと変わってしまう可能性があり、受験者はそれに振り回されることとなるのです。


twitterで目にしたある人の発言に強く首肯し、これを書きます。試験制度が何か変な理由は、別に陰謀でも既得権益保持のためでも実務を想定した試験だからでもありません。単に誰も税理士試験に問題意識がなく、運営側も目の前のやるべき仕事を前例踏襲で粛々とこなしてきただけだったからです。税理士試験がどうあるべきか、どのような問題がふさわしいか、どこでも議論された形跡がありません。国税庁の試験担当の職員は2名のみ。国税審議会での試験についての議事は一年に数時間の形式的なもの。税法の試験委員は科目ごとに実質1名。このような体制ではこうなって当然です。公開されている情報が少ないので断定的なことは言えませんが、わかっているだけの情報を集めるとこうなります。



果たしてこれが試験として適切なのでしょうか?私は、大いに疑問を感じています。今年の試験が終わったら開示請求を再開しますが、訴訟までやるかもしれません。