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司法試験の成績開示の現状は、度重なる要望の末に実現しました

前の記事で書いた通り、司法試験では税理士試験に比べて遥かに情報開示が行われているのですが、それも最初からそうだったわけではなく、度重なる受験者からの開示請求や訴訟があった結果として、徐々に行われるようになったのです。今私が行っている開示請求も、今後の税理士試験を変えるものになると信じております。

目次

司法試験の成績通知が行われるようになった経緯

3(1) 平成16年度司法試験から「丙案」制度が廃止された関係で,それまで不合格者に対してのみ行っていた論文式試験の成績通知が合格者に対しても行われるようになりました。
また,論文式試験合格者に対しては,科目別順位ランク及び総合得点が通知されるようになりました。

(2)ア 東京地裁平成16年9月29日判決は,平成9年度から平成11年度までの司法試験の成績に関する個人情報開示請求訴訟において,①論文式試験の科目別得点及び総合順位,並びに②口述試験の科目別得点は不開示情報であるものの,③口述試験の総合順位は開示すべきであると判断しました。
控訴審である東京高裁平成17年7月14日判決は,論文式試験の総合順位も追加で開示すべきであると判断しました。

イ 平成18年度からは,論文式試験の総合順位も通知されるようになりました。



旧司法試験,司法修習及び二回試験の成績分布及び成績開示

合格水準の検証、適切な試験には適切な情報開示が必要である

司法試験に対しては、日弁連も情報開示の必要性を考え、要望を行っていました。私もこの考え方に全面的に賛成です。採点にブラックボックスが多すぎて外部から検証できない試験では、公正に実施されていることを担保することができません。要望書から重要部を抜粋します。

新司法試験の合否判定に関する要望書


2009年10月20日
日本弁護士連合会


第1 要望の趣旨
当連合会は司法試験委員会に対し,新司法試験の合格水準に関する検証が可能になるよう,必要な情報開示を行うことを求める。



第2 要望の理由


1 合否判定の現状と問題点


したがって,現在の成績評価方法では,合否判定の適切さ,すなわち,設定された合格水準の適切さ(過年度との対比における公平性,法曹養成制度に対する信頼を支える公正性・合理性,合格者の質の保証における安定性・確実性)は制度的に担保されていないのではないかとの疑念を生じさせる余地を残している。また,現在司法試験委員会から公表されている情報のみによっては,合格水準についての外部的な検証は不可能な状態にある。



2 合格水準の外部的検証の必要性


したがって,司法試験委員会内部において,合格水準が適切に設定されるよう,必要な対応が行われるべきことは当然であるが,それだけでなく,合格水準の適切さについて,外部からの検証を可能にすることが不可欠である。具体的には,司法試験委員会による合否判定の結果について,法曹関係者,法科大学院関係者による検証,ひいては広く国民的な検証を可能とする情報が開示される必要がある。合格水準の設定は,市民が法曹に対して求める質に直結するものであることを考えるならば,このような幅広い検証作業によってこそ,合格水準の適切さもまた担保されるものといえるからである。



3 合格水準に関する検証を可能にするための情報開示

当連合会は司法試験委員会に対し,新司法試験の合格水準に関する検証が可能になるよう,必要な情報開示を行うことを求めるものである。

(1)現在行われている論文式試験の出題の趣旨の公表のあり方を一歩進め,出題の趣旨との関係で,合格水準に達する答案について,どのような内容と程度の理解が求められているかに関する情報を公開すること。

(2)合否のボーダーラインにあるいくつかの答案を公表すること

(3)司法試験委員会において考査委員の採点経過等をふまえて合格水準の定め方に関する意見交換を最終合格者発表前に行い,同意見交換の逐語議事録を作成し,原則として,これを公開すること。



http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/091020.pdf

司法試験の成績開示の現状

試験結果の公表

司法試験では、マークシート方式である短答式と、長文の具体的事例問題である論文式の試験が行われます。その結果は法務省のホームページで試験後に詳細に公表されています。税理士試験の配点や正答すら発表しないまま「出題のポイントおよび配点等の試験問題に関する問い合わせには応じられません」とシャットアウトする姿勢とは大違いです。


短答式では、正解及び配点、得点分布(全受験者の得点)が公表されています。


論文式では、模範解答こそ公表されていないものの、数十ページに渡る「出題の趣旨」や科目毎の「採点実感等に関する意見」が公表されており、情報量は十分。税理士試験の、わずか数行、科目によっては毎年使い回しの「出題のポイント」等とは比べ物にならない情報開示が行われています。


成績評価の基準(論文式は偏差値により得点調整する手法等)も公表されています。

司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について


出題の在り方や成績評価について検証する委員がおり、司法試験委員会に報告されています。大勢の考査委員の不断の努力により、試験が適切に実施されるよう常に顧みています。税理士試験では、不備のある問題が事前のチェックもなく出題され、事後にも検証や訂正の発表すらありません。その姿勢には、比べるまでもない、雲泥の差があります。

出題の在り方
比較的長文の具体的な事例を出題し,法的な分析,構成及び論述の能力を試すという基本的な方向性を維持することを前提としつつ,過度に事務処理能力を求めるのではなく,受験者の事例解析能力,論理的思考力,法解釈・法適用能力等を適切に判定することができるよう,司法試験考査委員により一層の工夫を求めることとする。


検証体制の位置付け
司法試験考査委員は,これまでも毎年の出題等に関する検証を行ってきたものであるが,今後,出題等に関するより一層の工夫が求められることを踏まえ,その工夫の趣旨や効果等を検証するとともに,各科目・分野を横断して認識を共有し,その後の出題等にいかすため,年ごとに,各科目・分野の考査委員の中から検証担当考査委員を選任し,その年の司法試験実施後において,共同してその年の試験についての検証を行うこととする。


検証体制の構成
検証担当考査委員については,研究者と実務家の考査委員の双方を含めるとともに,実務家については,法曹三者を全て含めることとする。

法務省:司法試験の実施に関する司法試験委員会決定等


受験者への成績の通知

司法試験における試験成績の本人通知について


短答式試験及び論文式試験の全科目を受験した者に対し,次のとおり,成績を通知する。ただし,2の(1)アについては、短答式による筆記試験の合格に必要な成績を得た者に限り,2の(1)イについては,論文式による筆記試験において,全科目につき最低ラインに達している者に限る。


1 短答式試験の結果
(1) 通 知 事 項
ア 短答式試験の科目別得点及び合計得点
イ 短答式試験の合計得点による順位


2 論文式試験の結果並びに短答式試験及び論文式試験の総合評価
(1) 通 知 事 項
ア 論文式試験
(ア) 論文式試験の科目別得点及び合計得点
(イ) 論文式試験の公法系,民事系及び刑事系科目における各問別順位ランク
(ウ) 論文式試験の合計得点による順位
イ 短答式試験及び論文式試験の総合評価
(ア) 総合得点
(イ) 総合順位


http://www.moj.go.jp/content/001209137.pdf

個人情報開示請求により明らかになる情報

そして、個人情報開示請求を行えば、科目毎の得点、順位も全て開示されます。法務省のサイトには開示請求をするための書式があらかじめ案内されています。ここでも税理士試験とは方針が根本的に異なっています。

開示請求を行うことによって、以下の30項目が本人に開示されます。

開示を請求するファイル記録項目
○ 年 度  : 平成(         )年
○ ファイル記録項目 : 以下のとおり

 受験者ID
 受験年度
 システム区分
 試験地
 受験番号
 氏名
  性別
  生年月日
 本籍
 職業
  大学院名
 選択科目
 住民票コード
 学籍番号
 既修・未修
 大学院卒年
 受験資格
 受験資格取得年月
  資格回数
 短答式合否
 短答式合計点
 短答式成績
 論文式合計点
 論文式成績
 総合評価合否
  総合評価合計点
 総合評価成績
  短答式科目別得点
  論文式科目別得点
  論文式問別成績区分

税理士試験は果たして

いかがでしたでしょうか?知れば知るほど、司法試験は不断の努力によって試験の公正性を確保していることがわかってきます。それに比べて、税理士試験のいい加減なあり方は一体なんなのか、と悲しくなってきます。もはや国税庁・国税審議会には適正に試験を実施する能力も姿勢も感じられず、解体も止む無しでは、と思ってしまうのです。