【トリビア】給与支給日に死ぬと所得税が課税されるが、一日前に死ねば課税されない
国税庁サイト・質疑応答事例からの小ネタです。
従業員に支給する給与は、給与所得として源泉徴収の対象になります。これは当然の取り扱いです。では、従業員が不慮の事故で死亡してしまい、給与の支給が死亡後になってしまったらどうなるのでしょうか?給与は、従業員の生前の労働に対する対価として支払われるものであり、たまたま支給の時期が死亡後になったとしても、同じように課税されるのが公平なように思われます。しかし、質疑応答事例によれば、そうではないようです。
被相続人の、死亡の前までに支給期が到来したものは給与所得となり源泉、年末調整の対象になるが、死亡の後に支給するものは給与所得とはならず所得税の課税対象にならない。同じ労働の対価として受けるものなのに取り扱いが違うのは、違和感のある通達だな。 pic.twitter.com/Ze1tYOhx6W
— Mark / まあく (@mark_temper) 2018年4月17日
なるほど。所得税の考え方では、給与所得の「収入すべき日」は、「支給日」とされていますね。(所法基通36-9)
— Mark / まあく (@mark_temper) 2018年4月17日
労働の提供が生前にあったとしても、収入の確定が死亡後になると、もはや本人の収入とするわけにいかないというわけで、理論上、宙に浮いた収入になるのですね。
勉強になります。
3月25日が支給日だとして、3月25日に死ねば給与所得課税されるけど、3月24日に死ねば(所得税は)課税されない。
— Mark / まあく (@mark_temper) 2018年4月17日
これってトリビアの種になりませんか?
このトリビア、つまり、こういうことになります。
給与支給日に死ぬと所得税が課税されるが、一日前に死ねば課税されない。
通達で、給与所得の「収入すべき日」は、「支給日」とされています。所得税の課税理論上、死亡後に収入したものは、その者の所得ではないということになっているのでしょう。となると、上記の結論が導かれるのは当然となります。
労働の提供完了時を「収入すべき日」とすれば、死後に支給があったとしても所得に含まれるという、上記とは異なる結論が得られます。しかしそうなっていないのは、給与計算の締め日から支給日までは数日~1か月程度の期間が空くことが通常ですから、年末調整等で金額を早期に確定させる必要性を考慮したものかもしれません。
(相続財産とされる死亡者の給与等、公的年金等及び退職手当等)
9-17 死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等(法第30条第1項《退職所得》に規定する退職手当等をいう。)で、その死亡後に支給期の到来するもののうち相続税法の規定により相続税の課税価格計算の基礎に算入されるものについては、課税しないものとする。(昭63直所3-3、直法6-2、直資3-2、平元直所3-14、直法6-9、直資3-8改正)(注) 上記の給与等、公的年金等及び退職手当等の支給期については、36-9、36-10及び36-14の(1)に定めるところによる。
(収入金額)
第三十六条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340AC0000000033#323
(給与所得の収入金額の収入すべき時期)
36-9 給与所得の収入金額の収入すべき時期は、それぞれ次に掲げる日によるものとする。(昭63直法6-1、直所3-1、平19課法9-1、課審4-11改正)(1) 契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等(次の(2)に掲げるものを除く。)についてはその支給日、その日が定められていないものについてはその支給を受けた日
しかし、この質疑応答事例の説明、課税されない理由が、「本来の相続財産として、相続税の課税対象となるため」とされているのが納得いきません。生前に支給された給与で所得税が課税されたものであったとしても、死亡時に使われずに残っている限り、相続財産に含まれて相続税が課税される点では同じです。支給が死亡の前か後かで、所得税を課税するか否かの取り扱いを変える理由としては本質的ではないように思われます。
「死亡後に支給期が到来するものについては、その者の所得に含まれないため」という説明に変えるのが妥当と思われますが、いかがでしょうか。識者の見解を伺いたく思います。
給与所得として課税された場合でも残額は相続財産に含まれて課税されるので差は源泉税社保くらいですね。一概に言えませんが、相続税が増えたとしても誤差のうちで、給与所得で課税される方が負担が大きいと思います。
— Mark / まあく (@mark_temper) 2018年4月17日
こんなことを悶々と考えてしまっている私でした。
このblog「Markの資格Hack」と私について
こんにちは。Markです。このblogを始めたのが、2016年9月。1年半更新をしてきて、blogの自己紹介を書くには今さら過ぎるのですが、私自身の生活環境の変化もあり、今後の方向性の検討も含めて、この機会に書いておこうと思います。
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- blog名「Markの資格Hack」の意味
- 私が取得してきた資格
- 税理士試験がこんなに長引くとは想定外でした
- 税理士試験の制度改革を訴えるblogとして
「税理士試験適正化要望」署名活動を終結します
税理士試験適正化要望キャンペーン「私たちは、税理士試験の適正化を要望します」と題して、change.orgで行ってきたネット署名活動をこの度、一旦終結する決断をしました。これまでの経緯、その理由等についてご説明します。
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- 回想(署名を始めた経緯)
- 活動が残した一定の成果
- 署名募集を終結します 賛同いただいた皆様ありがとうございました
- 署名が多く集まらなかった誤算
- 誤算1 受験生が活動に消極的だった
- 誤算2 ネットで活動が広まると思っていた
- 誤算3 予備校が協力的でなかった
- もし署名がもっと集まっていたら
- 私の至らなさをお詫びします
- 開示請求や問題提起は続けます
今年の税理士試験は得点を開示すると発表
先日リニュアールされた国税庁のホームページで、今年の税理士試験について公告発表がありました。速報でお送りします。
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- 2つの変更点
- 不合格者に対し得点の開示を行うと発表
- この判断の背景にあったもの
税理士試験過去問題 平成28年度(第66回) 法人税法
開示請求により入手した税理士試験の過去問題を公開します。
続きを読む目次
- 過去問題を公開する目的
- 国民共有の財産として公開されるべきものであること
- 試験問題は批評の対象となるべきものであること
- 情報の非開示は隠蔽を生む原因となること
- 予備校の頒布する問題は編集がされたものであること
- 注意事項
- 税理士試験過去問題 平成28年度(第66回) 法人税法
- 不備の指摘等
- 試験問題