「出題のポイント」から分かる法人税法歴代試験委員のやる気・力量
税理士試験「出題のポイント」について記事を2つ書いてきました。既に書いてきたように、国税徴収法は、ほぼ模範解答レベルの詳しい内容でしたが、科目・年によっては、問題文に書いてあることを繰り返しただけで何の参考にもならない代物であることもあります。文量や形式は試験委員の裁量に任されていると考えられ、力の入れようも当該の委員次第です。つまり、品質に非常にバラツキが見られます。今回はこれを問題にします。
法人税法の「出題のポイント」を遡って見ていたら大変興味深いものを見つけたのです。
- 平成29年度(第67回)税理士試験出題のポイント - Markの資格Hack (税理士試験)
- 大原は国税徴収法の「滞納処分」の定義を見直しテキストを訂正すべきだ - Markの資格Hack (税理士試験)
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- 「出題のポイント」はいつから公開している?
- 法人税法「出題のポイント」を分析する
- 1999-2001 (H11-13) 宮口定雄
- 試験委員
- 2002-2004 (H14-16) 杉田宗久
- 試験委員
- 平成15年度(第53回)
- 平成16年度(第54回)
- 2005-2007 (H17-19) 植田卓
- 試験委員
- 平成17年度(第55回)
- 全ての試験委員にとってお手本となる「出題のポイント」
- 平成18年度(第56回)
- 平成19年度(第57回)
- 2008-2010 (H20-22) 山田俊一
- 試験委員
- 平成20年度(第58回)
- 平成21年度(第59回)
- 平成22年度(第60回)
- 2011-2013 (H23-25) 上西左大信
- 試験委員
- 平成23年度(第61回)
- 平成24年度(第62回)
- 平成25年度(第63回)
- 2014-2016 (H26-28) 永橋利志
- 試験委員
- 平成26年度(第64回)
- 平成27年度(第65回)
- 平成28年度(第66回)
- 2017- (H29-) 近藤雅人
- 試験委員
- 平成29年度(第67回)
- 試験がどうあるべきかを真剣に考えて欲しい
大原は国税徴収法の「滞納処分」の定義を見直しテキストを訂正すべきだ
前回の更新では、税理士試験「出題のポイント」の公開について予告しましたが、今回は、実際に公開された「出題のポイント」を見て、わかることを論評していきたいと思います。「出題のポイントって何?」という人は前の記事からご覧ください。
当初この記事は、各科目の「出題のポイント」を比較するつもりで書いていたのですが、国税徴収法について疑問点を調べているうちに、思わぬ方向に話が膨らんでしまいました。
それから、大原さん、ごめんなさい。私は、ずっと大原のテキストが使いやすいと思い大原派でやってきましたし、基本的に信用しているのですが、今回、止むを得ず名指しで批判します。一時は、「試験委員は「滞納処分」の意義を間違えているのではないか?」というタイトルにしようと思ったのですが、資料を調べていくうち、私の中でどうも間違っているのは大原の方だという結論に達しました。私の指摘が正しければ、大原は解答速報だけでなく、理論テキストの内容から訂正が必要なこととなるはずです。
大原水道橋校のS先生にも電話でお話しさせて頂きましたが、訂正の必要性を全くお認めになりませんでしたので、残念ながらこのような形で発表することになりました。
続きを読む目次
- 国税徴収法
- 「出題のポイント」
- 〔第一問〕
- 〔第二問〕
- 第一問問2について
- 大原の解答
- 滞納処分の意義
- 保全処分の種類
- 条文に戻る
- 国税庁に聞いてみた
- 大原に聞いてみた
- 結論
平成29年度(第67回)税理士試験出題のポイント
国税庁ウェブサイトの「税理士試験出題のポイント」が、例年通りであれば、今年は明日、2日の月曜日に発表されます。当blogでは、受験生諸氏にお知らせする意味も込めて、国税庁サイトの更新に先行してリンクを貼っておきます。
「税理士試験出題のポイント」とは
税理士試験出題のポイントとは、国税庁ウェブサイト上で毎年10月第1週目の月曜日に発表されるその年の税理士試験の科目ごとの問題の解説です。各問の正解や配点、採点基準など、一切が公表されていない税理士試験において、主催者側から公式に発表される試験問題についての見解としては、唯一のものとなります。
webarhiveで確認できるものとして、平成14年度(第52回)のものが最も古いものとなります。
出題者(採点者)が問題において重要と考えている箇所であり、言及のあった箇所に重点的に点が振られている等と噂されていますが、定かではありません。問題に解釈の余地があり、解答が割れるような問題であった場合には、出題のポイントで出題者の意図が分かり正解の推測の参考になるとも言われていますが、問題文に書いてあることを繰り返しただけで何の参考にもならない代物であることもあります。出題のポイントの文量や、どのような形式かも、試験委員の裁量に任されていると考えられ、力の入れようも当該の委員次第です。
例えば、酒税法では、第二問の解説が毎年同じ内容のコピペで、何の情報も出していないのに等しいです。
〔第二問〕
酒税法の総合的な理解を問うため、製造場から移出した酒類について、酒類の品目及びその判定理由並びにその酒類の課税標準数量に対する酒税額、控除を受けようとする酒税額、納付すべき酒税額までの算出を求める問題である。
主なポイントは次のとおりである。1 原料、製法等による酒類の分類を理解しているか。
2 各品目の税率の計算方法を理解しているか。
3 租税特別措置法に定める酒税の税率の特例の規定を理解しているか。
4 戻入控除等の適用要件及び控除額の計算方法を理解しているか。
公益的性質を帯びる国家試験のあり方として疑問を感じます。
今年の注目
今年の国税徴収法の問題で、出題者が解答に何を想定しているのか不明である問題があるとして、出題者の考える正答とその根拠が明らかになるように公表を求める申入書を私が国税審議会に充てて送りましたので、どのように対応されるか見ものです。ただ、私が書面を送付してから現在までに国税審議会は開かれていないようですし、それほど迅速に対応されるという期待はあまりしていません。
他の試験では
ちなみに、他の類似試験ではどのような問題解説が公表されているか、参考に紹介しておきます。税理士試験出題のポイントは、これらに比べても見劣りするものと感じられます。
公認会計士試験論文式試験「出題の趣旨」
日弁連「税理士試験は実定法の解釈技術の能力を試す試験となっていない」
日本税理士会連合会は、平成24年9月26日付で、国税庁長官及び財務省主税局長に「税理士法に関する改正要望書」を提出しました。要望書の中で、税理士資格について、税理士法では弁護士及び公認会計士(平成26年改正前)に無条件で税理士資格を付与していることに関し、「弁護士は会計学に属する科目に,公認会計士は税法に属する科目に合格することを原則とするなど,税務に関する専門性を問う能力担保措置を講じるべきである。」としました。
日税連の要望書に対し、両士業団体は反論の意見書を発表し、会計士協会とは激しいバトルが勃発したことは以前の記事でも紹介しました。
今回の記事では、日弁連の意見書から税理士試験の本質について考えることとします。
続きを読む目次
- 日弁連の意見書
- 現在の税理士試験の本質
- 税理士会は税理士試験に真剣に向き合うべきである
審査会答申「税理士試験の成績の記録されたファイルを不開示とした決定は、違法なものであり取り消すべきである。」 平成29年度(行個)答申第98号
既にtwitterの方で要点だけ説明させて頂きましたが、平成29年(行個)諮問第120号について、突然、予期していなかった答申書が届きました。こちらからの意見書の提出期限が9月19日とされていて、それを出したばかりでしたので、突然答申が出る意味がわからなかったのですが、答申書を落ち着いて読んでようやく理解できました。
結論を先に書いてしまうと、私が勝った、というわけではありません。これは、審査会で内容を審議して判断する以前の問題で、当初、国税庁が私に出した不開示の決定書が法律に則った形式になっていなかったため、無効(違法)ということです。
続きを読む目次
- これまでの経緯
- 平成29年9月19日(平成29年度(行個)答申第98号) 答申書
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